ISM Supplier Derivary
 本ブログは一貫して先行指標のISM製造業を重視し、遅行指標の雇用や物価指標を軽視しているが、ISMの中でも遅延指数が米国コアCPIをよく予言できることが知られている。上図がISM遅延指数(Supplier Deliveries)、下図がその2年弱後のコアCPIである。
 
 需給ギャップ(潜在選出量と現実の総産出量の差)は将来のインフレを予想するものとして知られている。企業がフル稼働している場合、需給ギャップが縮み、値上げが進むと共に新たな労働者を雇い賃金を上げる。ISM遅延指数は企業の稼働具合のスナップショットを提供する。もしサプライヤーが商品を前の月よりも早く、遅延なく出荷できているなら、生産能力を目一杯まで使っていない可能性が高い。一方、もし遅延が増えていたらサプライヤーの余力がなくなっている可能性が高く、潜在的な値上げ可能性を示唆している。指数が50を上回っていれば前月よりも出荷が遅く、逆は前月よりも速い。

  コアCPIが途切れた後も、2年弱前のISM遅延指数は上昇を続けている。特に2018年に入って中国製品への関税がかかり始めてから上昇が加速した。もしこの連動がキープされるなら、来年にはコアCPIが2%後半まで上昇するだろう。経済学っぽく言えばトランプ政権は中国製品をブロックすることにより米国内の需給ギャップを圧縮して雇用・賃金を引き上げようとしているが、米国の雇用が完全雇用に近付き、なおかつ移民の供給を拒否する中では生産力が追い付かず、インフレが思ったより進行する可能性があるだろう。これは企業にとって輸入物価、人件費、そして金利の上昇が進行する可能性を示唆する。景気が良いのだから顧客に転嫁すればいいだろうという考え方もあるだろうが、その度に少なくとも後ろの二つは追い掛けて来るだろう。

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