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 10月以降、世界最強だった米株指数が一転して世界最弱となっている。MSCI 米国除く株式指数ETF(下図)は10月以降安値圏とはいえレンジを形成していた間に、ナスダック指数はどんどん下値を掘っている。今や米株が毎晩下がるのが当たり前となり、あれだけ格下で成長性がないと言われていた日本株やアジア株がそれを見てやれやれと思いながら淡々と押し目買いする形となっている。元凶はもちろんFA(A)NGである。

FAANG hangover
 2018年初頭から飛ぶ鳥も落とす勢いだったFA(A)NGは年後半になって急速に息切れしている。VIXショック後もいち早く立ち直り、中国の減速が話題になっても一種の避難先として夏から秋にかけても高値更新を繰り返していたのだが、秋以降には穴が空いた風船のようになった。Facebookが夏に決算で滑って脱落したのがきっかけと言えばきっかけだが、「FANG内で選別」として一旦無視されてからアップルの新機種不調がとどめを刺した。
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 Facebook, Apple, Amazon, Netflix, Alphabet(Google)の5銘柄を合わせて高値から時価総額を1.1兆ドル(120兆円)も吹き飛ばしている。NetflixをNVIDIAに換えてもピクチャーは変わらない(!)。特に元々時価総額が大きかったAppleとAmazonはそれぞれピークから2500億ドルを失っており、これは1億6千万人の人口を擁するバングラデシュのGDPに匹敵する。

 iphone XSの不調以外に特段悪材料があったわけではないが、高すぎる株価はあまりにも高い期待を織り込んでいたということだろう。元々テック企業の巨大な時価総額はパッシブ投資の隆盛によって作られた面がある。インデクサーにとっては株に割高も割安もなく、全ての時価総額が正当化されるので、バブルになってもこれを追認する。逆回転し出した時も同様である。期待が高すぎたとはいえ、例えば業績が順調に伸びているAmazonも巻き込まれたのは、また4銘柄が綺麗に同じように売られているのは、バスケットでの投げが多かったことを意味する。行きの時は今より遥かに高い水準であれほど買いたかったのに、どうして今は売るのかという問いに答えられる人は少ないようだ。
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  FA(A)NGのロングは今年中ずっと最も混雑した(Crowded)ポジションだったと言われているが、これは一旦逆回転が始まると大きなショックになり得ることを意味したものの、それまでは付いて来なかったノリの悪い投資家の受難が続いた。割高や混雑などと思ったら一瞬にして置いて行かれる(しかも大きな加重ウェイトで)ので、逆に多くの投資家はインデックスにしがみ付くことになった。年前半のFANGの進撃は米国一強を世界中に印象付け、株式指数はトランプ大統領にもドヤ材料を提供したが、蓋を開けてみると高々数銘柄のバブルだったというわけだ。大相場には行きもあれば帰りもある。
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 とは言え、別にこのバブルが崩壊してFANG株がこのまま奈落の底まで落ちるとは思わない。外野がここぞとばかりに「人気化した銘柄は危険」と説教し出したり、収益の裏付けがなかったニフティ・フィフティバブルやITバブルと並べ始めたりしているので、ぼちぼちガス抜きは進んでいるのではないかと思える。ITバブルの時とは違って、少なくとも一部の銘柄は実際に収益が伸びているわけなので、大惨事になる気はあまりしていない。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。