日経新聞の記事、「中国の変調、アジアの影」で引用したOECD景気先行指数(Composite leading indicator , CLI)は、引用目的に反して中国景気の強さを浮き彫りにしている。ユーロ圏の景気が2018年に入ってからいまいちだったのはわかるとして、2017年の金融引締めのせいで最悪だった中国が2018年夏から反転上昇、一方で絶好調であるはずの米国は2018年春から反転低下している。春に始まった米中貿易戦争もこの傾向にかすり傷すら付けていない。この景気先行指数は「鉱工業在庫率、輸入輸出比率、住宅着工戸数、株価指数などの(国によって異なる)先行指標に基づき」「GDPに6ヶ月先行するように」作られている。株価と景気が連動するとすれば、2018年のこれまでの米株のアウトパフォームと中国株のアンダーパフォームはそれぞれミスプライスであった。実際、トランプが自画自賛に使った米中株のデカップリングは米国のFANGバブルと中国当局のデレバレッジという個別要因がたまたま重なっただけであるように見える。貿易戦争の影響があったとしても、こと中国に関しては夏以降の金融緩和への転換、秋の減税により打ち消されつつあるようだ。
製造業PMIは弱々しく持ち直す
貿易戦争によって断崖のような下落を見せていた財新・製造業PMIは、足元では意外な強さを見せている。もっともそれまでOECD景気先行指数となぜ乖離して下落傾向を続けたかはよくわかっていない。
中国株の安定化
図は上海総合指数とS&P 500の相対比である。ギャグと思われていた上海株だが、10月の株式担保融資の爆発で底を付けて以来、財新PMIの底打ちと共に、またFANGバブルが崩壊するのに連れて相対的に持ち直しが続いている。
いや上海株は中国政府が地方政府を使って買い支えているだけのインチキ指数だろう、という見方もできるだろう。しかし、香港上場で海外投資家も自由に投資できるH株指数は米株対比で更に早くから反転アウトパフォームが始まっている。なおこの比率は貿易戦争のヘッドラインにはほとんど振らされておらず(米株もH株も貿易戦争で売られ、停戦で買われるため)安定している。10月の記事で示したように、「中国株は既に米株を人質に取っている」形となっている。この上で米国が利上げという武器まで捨てさせられたのであれば、中国株(上海、香港)のアウトパフォームは続くだろう。
米帝のお膝元で上場しているAlibaba・Amazon比率も同じ傾向となっている。FANGバブル崩壊に先立ってダラダラと売り込まれてきた中国テックが先に反転上昇を始めたというのは米国テックにとっても縁起の良い話だと思われる。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。