Bbg hike
 最近の米株のクラッシュとパウエルFed議長の弱気化発言を受けて、米国債が買われたことにより金利市場が自信満々に織り込んでいたFedの2019年利上げ回数は急激に減少に転じた。上図は2018/12時点の政策金利、2019/12時点の政策金利と2020/12時点の政策金利にそれぞれベットするユーロドル金利先物のスプレッドを表している。一回の利上げは0.25%なので、2018/12と2019/12のレートが0.25%違うなら1回、1%違うなら4回の利上げが織り込まれている。
Dot chart
 Fedのドットチャート中間値は2019年3回(0.75%の金利上昇・上図の赤い水平線、下図の緑線)であり、2018年の春から秋にかけては完全にではないものの徐々に3回を織り込みつつあった。9月FOMC後には2.4回まで織り込み度が高まったが、足元では1回まで戻ってしまっている。2020年に至っては完全に利上げ停止となった。

ハシゴを外される銀行

 GS, JPM, BoAMLは既に2019年4回の予想を打ち出していた。恐らく各国の現場は自社のハウスビューを顧客に伝えるのに苦笑い混じりだったと思われるが、とにかく本社の象牙の塔の中にいるエコノミストチームはインフレの回復=利上げ継続の等式を信じて疑っていなかったようだ。そして2019年の新年すら待たずにハシゴを外されている。ゴールドマンは早速4回から3回に変更したが、依然2019年3月利上げ織り込み度が50%以下の市場は「間違っている」と言い張っている。

投資家は常に間違ってきた 

    実際、市場は常にFedより弱気であり、確実と思われそうな利上げについても常に織込みが弱かった。それを「他の市場参加者が景気に自信を持てないチキンだから」と考え織り込みの不十分さがフリーランチに見えた市場参加者もいたことだろうが、今回はその投資家達が苦しくなったところで「利上げ停止」がとどめを刺す形で大々的に宣伝されている。
projection
 ツイッターに落ちていたドイツ銀のレポートの切り抜きによると、これまでも市場参加者は常にFedの金利パス予想で外してきた。2011年以来、利上げが来る、利上げが来る、と騒ぎ続けたが2015年までゼロ金利が続いた。逆にそこから利上げが始まると利上げはもう止まる、続けられないと言われてきたが、結局間断ない利上げが続いた。もっともこの図もやや盛っている形もあり、メディアはともかく金利市場がバーナンキショック以前、2011年や2012年の頃から利上げを織り込んできた形跡はない。

物価の見通し

ISM Supplier Derivary
 右往左往する銀行を無視するとして、実際金融政策はどうなるのだろうか。ISM遅延指数(上図)によると激しいコアCPIの上昇が待っている。GDPやISMの6ヶ月遅行と見比べてみてもコアCPIが下がる要素がない。つまり少なくともバックミラーから分析すると金融市場が特定なテーマでよほど引き締まらない限り、Fedの利上げは止めようがない。貿易戦争が変数になるにしても、それは先行指標に先に出るはずである。

リスクオフで利上げが止まるには

FCI
 物価以外にFedが重視していると言われているのはFCI(Chicago Fed National Financial Conditions Index)である。こちらは金利が低くても株が急落したりクレジットがワイドニングしたりすると「金融市場は引締め的」とサインを出す。それを見ると2018年はまだ非常に緩和的な水準にいる。2016年は利上げサイクル入りが遅れたが、その時NFCIは-0.5%程度と今よりも引き締め的であった。シンプルに考えると、FCIが2016年の水準まで上がって初めて2016年のように利上げが遅れるのではないか。

 本当に利上げが2019年半ばに止まるなら米株にとっても新興国にとってもドル相場にとっても一大ニュースであるはずだ。ところが金利市場以外がそれを織り込みに行っている形跡はない。なのでこれは金利市場の先走りであり、来年には忘れ去られている可能性が高い。それとも結局、機械的な利上げがベストであり、指標も変わっていないのに中央銀行の方が変にブレる方が市場のセンチメントに悪影響を与えるということだろうか。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。