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 過激な運動で「パリは燃えているか」とネットで嘲笑されたフランスの黄色いベスト運動を受けて、フランス政府は予定していた燃料税の撤回に続き、月収最低賃金の100ユーロ分の増加、ボーナスと年金課税の廃止の予定を発表している。

 我々は黄色いベストの民度を嘲笑していたが、嘲笑する方の民度が高い方々がせっかく身体を壊してまでして貯めた雀の涙のような残業代を社会保障費に食いつぶされている間に、黄色いベストは見事に減税を勝ち取ったわけだ。

    ところで、フランスの来年の財政赤字は先週決まった燃料税の引き上げ廃止の前に既にGDP比2.8%を予定している。これらのばら撒きが加わるとGDP比3.5%まで上振れするとも言われている。マーストリヒト条約では3%が上限なのでアウトになってしまう。これを受けてフランス国債の対ドイツスプレッドでマリーヌ・ルペンが善戦した2017年の選挙以来の高さまでワイドニングした。

    ここで、財政赤字GDP比2.4%の予算案を提出してEU委員会からありとあらゆる非難批判、罵詈雑言を受けてきたイタリアを思い出してみたい。イタリアには厳しかったEU委員会のモスコビシ経済、財務、税制担当委員は母国フランスについては「欧州のルールは、3%ルールの一時的で限定的な逸脱を禁じていない」と容認の姿勢を示している。累積公的債務残高の違いはあるかもしれないが、少なくとも表面的にはひどいダブルスタンダードに見える。

 イタリアはEU委員会との対立の挙句に、やや譲歩する形で財政赤字2.04%の新予算案を提出した。フランスと比べて優等生から大変な優等生になったわけだ。イタリアのポピュリスト政権は財政拡張を主張してEUと長々と対立していた間にメルケル退陣予定、フランスの黄色いベスト運動と次々と追い風が吹いている。ドイツは誰が首相になっても他国に財政緊縮を要求するスタンスを変えることはなさそうだが、本質的に南欧側なのにエア北欧としてドイツと共に南欧諸国に財政緊縮を要求してきたフランスの脱落はEU委員会の強硬姿勢の説得力を更に削ぐものである。

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