SPX weekly
 今年の最後にS&P 500のテクニカルについて再び考えてみたい。日足のヘッドアンドショルダーを作ってから右肩再ブレイクに2度チャレンジしたものの、結局その後続落して週足でも2018年全体が大きなヘッドアンドショルダーとなってしまった。テクニカル通り、2700台後半の売りは鉄板だった。
SPX longer
 一過的な減税バブルの終焉と言えばそれまでだが、この1年間を横断するヘッドアンドショルダーが今後数年にわたる高値を規定したかどうかは気になるところである。過去の例で言うと2014〜2016年年初のヘッドアンドショルダーは更に大きく、更に綺麗であった。もっとも速攻で下抜けが騙しと分かってしまった2016年年初と異なり、今回はちゃんとフォロースルーがあったというところがより本物らしい。
 

セリングクライマックス

SOY
QQQ
 短期的には、クリスマス周りの米株の謎のメルトダウンはひどいものであったが、後半の大幅反発により週足は下ヒゲ陽線となった。また下値のヒゲ先はちょうど200週移動平均に差し掛かっている。アジア時間にどんなにグッドニュースが出ても米株はとにかくNY時間を通して売られた。参加者が少ない中、モメンタムに従って目を瞑って売買するだけの参加者が無理やり指数を押し下げた感がある。普通、セリングクライマックスと言えば出来高の急増を伴う反転だが、安値となった24日は明らかに参加者が少なすぎ、S&P 500連動ETF「SPY」やNASDAQ連動ETF「QQQ」の出来高は24日の前と後に集中している。多くの参加者にとって24日の底値はなかったようなものだ。
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 その後、株ポジションの時価総額が減った年金の古典的なリバランス買いが入ったとも言われ、S&P 500は1日で底値から4%の上昇を経験した。この日は出来高も盛り上がっており、買い手が誰があったにしろ、戻り売りがかなり吸収された形に見える。また、24日の行きと異なり、帰りは出来高が示すように多数の戻り売りをこなしながらの4%上昇なので、薄い中を売りの居ぬ間に持ち上げたわけではないこともわかる。実際、買いの額は600億ドルあったとも言われている。

 とだけ書くととてもブリッシュだが、一方で24日前の出来高の盛り上がりで落ちるナイフをキャッチした多くの人は一瞬でマイナス域に持っていかれ、(24日は見なかったことにできたものの)マイナスからフラットに戻ったところであり、押し目買いの失敗作をラッキーとしてここで畳むか、それとも長期投資の初心を思い出して持ち越すか、決断を迫られるところだろう。或いは週後半の出来高の山は彼らのやれやれ売りも混ざっていたのか。

懲りずに

 ファンダメンタルズ的には、景気は良いし主要各国の金融政策に目立ったミスも見られない中で下をどんどん売っていく場面らしくもないのは事実である。中銀と市場のミスコミュニケーションは一時的に株価を下げることはあっても、その先数年間のパフォーマンスを規定できるわけではない。もし一部で言われているようにクオンツ系の投げだったとしたら、今後について我々が知らない真実を知っている先覚者の売りであった可能性は低い。

 とすると、テクニカル的には下の新値を覚悟する必要はあっても、また例えば再び2700台があったらとりあえず売って右肩ブレイクを待ってみるというのが定石となるにしても、現水準から積極的に投げるのは抵抗が強い。今捕まっていない場合は、(先週安値の2346などの)下割れの時の逃げ足を用意しつつも押し目買いを試して回転させるのも一興かもしれない。

リスクシナリオ

SPX 4
 短期的に謎の投げが一巡してそうだとは言っても、上では大きなヘッドアンドショルダーはまだ効いているので、2008年、2009年や2016年のように年明け早々新しい悪材料があってどんどん下に持っていかれるシナリオにも一応警戒してみたい。上海株に続いてS&P 500でも、4%以上の単日上げがあった日をプロットする動きがネットであったが、これは前途多難を示しているようにも見える。一部で話題になっているように米国の長短金利のインバートが見られるなら、その後は2007年のように短期金利の緩みによって一度は米株がフィーバーすることになりそうだが、結局まだインバートしていないからこその神経質さでもある。

 2017年は長期投資の握り力が試される年だったが、2018年はマーケットタイミングを見て「売買」しないと全てがパーになる年だった。2019年はスタートは「売買」で始まりそうなのが万人の目に明らかだが、その後は果たして。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。