中国政府のデレバレッジ運動は結局クラッシュ(チャイナショック)→後始末のための金融緩和→人民を巻き込んだ不動産バブル、という展開を辿り、国営企業のレバレッジは人民の家計負債に転換された。その結果、家計の購買力が低下し、消費の低迷という形で小売売上高に跳ね返って来ている。2019年は財政拡大からインフラ投資が戻ってくるのはほぼ確実だが、一方で不動産在庫が問題になった2013、2014年以降で初めて、不動産投資が再び最大の懸念材料に戻って来ている。
住宅価格の死か、消費の死か
今更ではあるが、住宅価格を家計年収で割った住宅購買力比率(Housing Affordability Ratio)で見ると中国が他の国と比べて頭一つ出ている。日米欧が4〜5倍で団子になっているのに対し中国は8.9倍であるので、平均の倍ほど高いというわけだ。都市で見ても上位には中国の大都市が並ぶ。もちろん、住宅の割高度は成長期待と資金の借りやすさから決まるものなので、一概に中国不動産がミスプライスされているとは言えないし、過去も割高なまま上昇して来ており崩壊論者を嘲笑してきた。しかし住宅価格の予想に使えないにしても、この比率が高ければ家計の可処分所得がその分減るのは確実である。そして消費の減速が問題になっている。
本ブログでは7月からこの問題を取り上げ続けて来たが、いよいよ住宅支出にクラウディングアウトされた消費の失速は明らかになっている。このまま2、3年も耐えれば家計の購買力はGDP成長に比例して追い付いてくるだろうが、足元では大問題になっている。過去と異なり今回は景気浮揚に住宅は使えない。住宅価格が上がれば上がるほど消費が冷え込んでいくからだ。
もとよりPSLはチャイナショック前から(地方都市を中心に)慢性的に問題になっていた不動産業者の在庫を消化し、同時に貧困層へのばら撒くという目的で始められた。チャイナショック後の2年間で不動産在庫は見事に人民に移転された。また、貧困層や農村住民を成金にさせる代わりに中産階級の購買力が蝕まれるに至り、PSLは既に歴史的役割を終えたはずだ。在庫の減少をもって需給の面から強気の見方を続ける考え方もありだと思うが、ここはPSLの縮小の方を重視したい。本邦不動産にも言える話だが、どんなに供給が減っても結局は人民が買えるお金を持っているかどうかが大事なのである。
また不動産企業の方も空気を読んでか、ないしはファンディングがきついためか、夏以降に新規土地取得を減速させている。緩やかではあるものの、この新規土地取得の減速は固定資産投資に占める不動産投資の先行指標になるはずだ。
では結局いまの不動産市況が結局どうなっているのか。代表的な指標である70都市新築住宅価格指数(上図)は上昇を続けている。一方、全国の中古不動産の売り指値を集計したChina City Housing Indexは2018年夏をピークに、2014年以降で最も息の長い下落局面に入っている。売り指値の量も減っているのは、在庫が減り購入も禁止されているからだろう。二つのデータは矛盾しているが、「購入禁止令が効いており流動性が制限されているため、正確なところは分からない」というのが実情だろう。筆者はかつて「購入制限はボラティリティを作るだけで引締めとして意味がない」と考えていたが、売れない期間が長引き、その間に家計が首が回らなくなれば案外売り手が音を上げる方が早いかもしれない。
中国ど根性ビルへの同情は思い上がりだった
中国の小売売上高も断崖のような下落を始める
中国の小売売上高に反映されない消費節約ブーム
中国の住宅バブルが崩壊しそうでしない
不動産支出に圧迫される中国の消費
中国不動産のソフトランディングがすぐそこに(2)
中国不動産のソフトランディングがすぐそこに(1)
本ブログでは7月からこの問題を取り上げ続けて来たが、いよいよ住宅支出にクラウディングアウトされた消費の失速は明らかになっている。このまま2、3年も耐えれば家計の購買力はGDP成長に比例して追い付いてくるだろうが、足元では大問題になっている。過去と異なり今回は景気浮揚に住宅は使えない。住宅価格が上がれば上がるほど消費が冷え込んでいくからだ。
PSLの縮小
チャイナショック後の中国不動産の暴騰は、金融緩和に伴う低金利とPSLのばら撒き(棚改貨幣化)がメインエンジンとなっている。そのうち前者は既に住宅ローンの総量規制で止まり、PSLも2019年から大幅な縮小、引き締めが見込まれている。棚改のファンディングは政策という大義名分の元で何でもありのPSLから、一応は発行に際して将来は資金を回収できると市場に説明しながら発行する地方専項債にシフトしつつある。人民の成長期待を政府が抑えられなかった以前と異なり、直近の住宅バブルは中国政府がPSLで起こしたものなので、中国政府の引締め能力も以前と比べると断然高い。財政拡大を決定した12月の「中央経済工作会議」でも、住宅投機の抑制が盛り込まれている。不動産在庫の消化
もとよりPSLはチャイナショック前から(地方都市を中心に)慢性的に問題になっていた不動産業者の在庫を消化し、同時に貧困層へのばら撒くという目的で始められた。チャイナショック後の2年間で不動産在庫は見事に人民に移転された。また、貧困層や農村住民を成金にさせる代わりに中産階級の購買力が蝕まれるに至り、PSLは既に歴史的役割を終えたはずだ。在庫の減少をもって需給の面から強気の見方を続ける考え方もありだと思うが、ここはPSLの縮小の方を重視したい。本邦不動産にも言える話だが、どんなに供給が減っても結局は人民が買えるお金を持っているかどうかが大事なのである。
また不動産企業の方も空気を読んでか、ないしはファンディングがきついためか、夏以降に新規土地取得を減速させている。緩やかではあるものの、この新規土地取得の減速は固定資産投資に占める不動産投資の先行指標になるはずだ。
市況
では結局いまの不動産市況が結局どうなっているのか。代表的な指標である70都市新築住宅価格指数(上図)は上昇を続けている。一方、全国の中古不動産の売り指値を集計したChina City Housing Indexは2018年夏をピークに、2014年以降で最も息の長い下落局面に入っている。売り指値の量も減っているのは、在庫が減り購入も禁止されているからだろう。二つのデータは矛盾しているが、「購入禁止令が効いており流動性が制限されているため、正確なところは分からない」というのが実情だろう。筆者はかつて「購入制限はボラティリティを作るだけで引締めとして意味がない」と考えていたが、売れない期間が長引き、その間に家計が首が回らなくなれば案外売り手が音を上げる方が早いかもしれない。
金融緩和
不動産のブル要因として挙げられるのはまず金融緩和だが、中国政府が不動産バブルを避けたい&人民元相場防衛の必要性を考えると、よほどのことがない限り「いわゆる大規模な金融緩和」は来ないと思われる。今はあくまでも財政拡張のターンであり、「財政が効かなかったから金融緩和」までは相当距離がある。またそもそも財政に比べて金融緩和は通貨切り下げ以外のルートによる効き目は弱い。金融緩和があるとしても、あくまでも不動産バブルがプチ崩壊した後だろう。関連記事
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。