SPX WeeklySPX Daily
 年明けと共にアップルショックと米国のISMショックが2連発でやって来た。二つとも、(一時期米国は無傷とすら思われていた)貿易戦争の悪影響が一拍子遅れてやって来た形となった。もっとも、ヘッドラインが出た後のパニックは1日しか続かず、中国の準備率引下げと米国の良い雇用統計及びパウエル議長の火消し発言で収まっている。

アップルとISMのダブルショック

ISM PMI
 アップルの年間販売台数2億台のうち、1/4は中国大陸である。それがファーウェイへの攻撃を受けた不買運動ゆえとも言われ、中国の景気減速ゆえとも言われるが、とにかく「中国事業低迷による売上げ下方修正」という爆弾となった。ISM製造業(上図)も一時期は連動していた財新製造業PMI(下図)を引き離し「貿易戦争によるデカップリング」と思われたが、結局それはまやかしに終わりリカップリングしたと見ることができる。アップルの不振の下に部品産業が広がっていると思えば同タイミングでのISMの急落も全く不思議ではない。

センチメントと値動きの乖離

 とはいえ、アップルショックを受けた米株(及び日本株)はセンチメントこそ最悪になったものの、下落幅は限定的であった。S&P 500などは昨年クリスマスの安値より100ドルも高く、二番底とすら言えない。水準と投資家の含み損の実額はクリスマスの時よりだいぶましであったにも関わらず、我々のセンチメントがクリスマスよりも悪くなったのは、不明と思われていた昨年の急落の背景が今更判明したからにすぎない。冒頭の図の緑の円で最も景気悪化が議論された箇所と思われるが、S&P 500のチャートで見るとただの小さな窪みにすぎない。背景不明のまま先に株式、金利市場がクラッシュを織り込み、次に材料が判明したものの各市場の反応は限定的、という展開は今回の下落サイクルが既に終盤に差し掛かっていることを意味するのではないか。

クレジットのカナリアが飛び立つ

HYG
BKLN
 ハイイールド債ETF「HYG」とバンクローン(レバレッジドローン)ETF「BKLN」を見ると株式指数よりもずっと戻りが力強かった。特に後者も戻って来ているのは機関投資家のリスク許容度も戻って来ていることを意味する(彼らの相場勘が当たるかどうかは別として)。こちらの反発は「デフォルト率見込みなどの調整が必要となるほどの景気後退はない、単に株のバリュエーションが高すぎただけだ」という解釈になる。クレジットと株の参加者が最終的に似たようなチャートを描くはずだと信じる場合、S&P 500も12月上旬の水準まで戻るべきということになる。

S&P 500テクニカル

 テクニカルには、前途多難を覚悟しながらも楽観的だった前回の記事を踏襲する形で、逆張りの自覚を持ちながら押し目買いというスタンスとなる。週足は2本目の下ヒゲ陽線となり、2444までサポート(損切りライン)が上がってくる。上は引続き2817がレジスタンスであり、腰を据えた長期投資目線にはまだならない。いろんな資産に手を出せる立場の参加者でもしHYGを底で拾えていたらこの辺りからまだ底値圏にいるS&P 500に入れ替えると居心地良さそうだ。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。