CNH chart
    中国人民銀行(PBOC)は2月に香港市場でオフショア人民元建て短期証券を発行すると発表した。3ヶ月物100億元、1年物を100億元、合わせて200億元(約3千億円)である。このPBOCの香港でのオフショア短期債発行は史上2回目であり、前回は2018年11月であったという。またさらに昔の2015年10月に人民元決済センターを目指していたロンドンで発行したこともあったという。
    中央銀行が自国通貨が足りなくて調達するなどということはないのでこれは明らかに金融調節の一環である。金融市場に短期債をばら撒くと、資金を吸収して金利を押し上げる効果をもたらしやすい。つまり金融引締めである。

SHIBOR
    オンショア人民元市場は金融緩和が続いているため、オンショア人民元短期債は2016年以降発行されていない。元々香港市場のオフショア人民元市場はオンショア人民元の流動性と切り離されているので、人民元レート防衛の主戦場となってきた。当局はCNHショートのコストを増やすために準備金を積ませたりHIBORを急騰させたりと、オンショア人民元の流動性(や実体経済)へのインパクトを気にせずにCNHショート勢にありとあらゆる嫌がらせをしてきた。

    2018年に「制御された墜落」と表現していたが、PBOCは人民元の下落局面で力づくの防戦を選好することはあまりなく、人民元が一旦下落に転じると政治的・心理的ラインである対ドル7.0手前まではスカスカであることが多い。代わりに(「天の時」ではないが)ファンダメンタルズが好転するのを待って攻めに転じ、更に追撃をかけて一気呵成を狙うことが多い。今回も2018年末の貿易戦争で7.0を今日明日にも破かれそうなところまで追い詰められたが、「殴る拳が痛くなった」Fedの利上げ休止で人民元防衛側が一気に有利になったため、Fed利上げが居ぬ間にオンショアで金融緩和(RRR Cut)を敢行してSHIBORを低下(上図)させる一方で、CNHの流動性を吸い上げてスクイーズをかけようとしているように見える。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。