
2/26にインドがパキスタン領内の「テロリストキャンプ」を空爆したことにより世界中で一瞬だけリスクオフが走った。インド・パキスタンはともに核保有国なので全面衝突に発展すれば大変な騒ぎになるが、そうなる可能性は極めて低い。この戦闘はモディ首相の選挙対策のためのパフォーマンスにすぎないからだ。日経新聞は2/27の記事で
「インドは2016年9月にもパキスタン側を攻め、有権者の間ではモディ首相の強気な姿勢を評価する声が一部にあがった。今回も4~5月にインドで総選挙を控えるなか、モディ氏が再び攻撃することで低迷する支持のテコ入れを狙ったと見る向きがある」
また3/4の記事でも
「インドのモディ首相が、パキスタンとの軍事対立を、自らの支持率浮揚につなげようとフル活用している。連日の演説で、国民のナショナリズム的な感情を刺激する発言を繰り返す一方、空爆の成果に疑問を挟む野党は「反インドだ」と糾弾する。4~5月に総選挙を控え、低下傾向が続いていた支持率を反転させる千載一遇の好機ととらえているようだ」
「続投の賭かった総選挙(下院選)を4~5月に迎えるモディ氏は、印パ対立を千載一遇の好機と見なしているようだ。地元誌インディア・トゥデイの世論調査によると、モディ氏の支持率は2017年を境に下降線をたどる。14年の下院選で下院議席の過半を単独で獲得した与党インド人民党(BJP)は今回は議席を大幅に減らし、前政権与党で最大野党の国民会議派などに敗れる可能性も指摘され始めていた」
と容赦ない。
元々モディ首相は反ムスリムのヒンドゥー教至上主義者として有名である(大英帝国のインド植民地の中で仲が悪かったヒンドゥー教地域とムスリム地域が分離独立したのがそれぞれ今のインドとパキスタンである)。グジャラート州知事時代の2002年にムスリム住民を標的とした暴動を放任、一説には扇動すらしたと言われ、790人とも1000人以上とも言われる死者を出したため、「宗教の自由を深刻に侵害した外国の当局者の入国を禁止する法律により」2005年に米国国務省によって米国ビザ発給を停止されている。もちろん2014年にモディがインド首相に当選すると禁止令が解除されたため、一国の首相が米国旅行禁止という恥ずかしい事態は避けられた。このような好戦的な指導者なら、選挙のために死人を出すことにも躊躇しないだろう。
初日の空爆ではインド空軍はJeMと呼ばれるテロリスト集団の訓練拠点の近くの森に爆弾を落とすことに成功したようだ(インド空軍はテロリストを300人殺害したと言い張っていたが続報はない)。もっとも、ロイターなどは
「武装勢力の訓練施設などそこにはなかった。数年前に移動している。それがわれわれ情報コミュニティーの間では周知の事実だ」と、ある西側外交官は語った」
と容赦ない。たとえパキスタン軍が対空防御システムを導入していたとしても、軍事基地周辺を防衛するのがせいぜいであり、国境近くの山奥をピンポンダッシュのように奇襲するのは難しくない。しかし翌日になるとインド空軍はあっさりMig-21を1機撃墜され、機体がパキスタン領内に墜落しパイロットも捕虜になってしまった。空気を読まないパキスタン空軍のせいで、モディ首相は選挙パフォーマンスで空戦を始めたのにそこで劣勢という恥ずかしい立場に陥ってしまった。
2/27以来「カシミール地方の実効支配線を挟んだ砲撃戦は今も続く」など、無駄な戦闘が続いているのは、上げた拳を下ろせなくなったモディ首相のせいだろう。喧嘩を売られたパキスタン政府は戦闘開始以来、一貫して受け身で弱腰であった。捕虜になったインド空軍のパイロットも早速解放している。従ってこの小競り合いが拡大するかどうかは完全にモディ首相の気分次第であり、パフォーマンスが済んだら収束するだろう。なお核保有国同士の戦闘は1969年の珍宝島の戦いを筆頭に珍しくない。1999年の、同じくインド・パキスタン間でカシミール地方を舞台に戦われたカールギル紛争では双方合わせて少なくとも1000人の死者を出している。それに比べると今回の紛争は茶番にしか見えない。長引けば双方の経済にダメージが出ると思われるが、インド亜大陸以外への影響はありそうにない。
インド、パキスタン領を空爆 自爆テロに報復 -日経
アングル:インド空爆の犠牲者はどこに、パキスタン住民が困惑 -ロイター
インド、パキスタンに操縦士の解放要求 カシミールめぐり緊張が激化 -BBC
インドの首相候補モディ氏はなぜ米国入国を拒否されたか -WSJ
「武装勢力の訓練施設などそこにはなかった。数年前に移動している。それがわれわれ情報コミュニティーの間では周知の事実だ」と、ある西側外交官は語った」
と容赦ない。たとえパキスタン軍が対空防御システムを導入していたとしても、軍事基地周辺を防衛するのがせいぜいであり、国境近くの山奥をピンポンダッシュのように奇襲するのは難しくない。しかし翌日になるとインド空軍はあっさりMig-21を1機撃墜され、機体がパキスタン領内に墜落しパイロットも捕虜になってしまった。空気を読まないパキスタン空軍のせいで、モディ首相は選挙パフォーマンスで空戦を始めたのにそこで劣勢という恥ずかしい立場に陥ってしまった。
2/27以来「カシミール地方の実効支配線を挟んだ砲撃戦は今も続く」など、無駄な戦闘が続いているのは、上げた拳を下ろせなくなったモディ首相のせいだろう。喧嘩を売られたパキスタン政府は戦闘開始以来、一貫して受け身で弱腰であった。捕虜になったインド空軍のパイロットも早速解放している。従ってこの小競り合いが拡大するかどうかは完全にモディ首相の気分次第であり、パフォーマンスが済んだら収束するだろう。なお核保有国同士の戦闘は1969年の珍宝島の戦いを筆頭に珍しくない。1999年の、同じくインド・パキスタン間でカシミール地方を舞台に戦われたカールギル紛争では双方合わせて少なくとも1000人の死者を出している。それに比べると今回の紛争は茶番にしか見えない。長引けば双方の経済にダメージが出ると思われるが、インド亜大陸以外への影響はありそうにない。
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