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  中国の議会に当たる(ただし議員は普通選挙で選ばれない)全人代において、2019年度の財政赤字目標がGDPの2.8%と発表された。2018年度は2.6%だったため、財政赤字の拡大と言える。もっとも「財政拡張」という方向性は既に去年の中国共産党「中央経済工作会議」で決められたものであり新意はない。もう一つの中央工作会議で決められた路線に沿ったニュースはVAT(付加価値税)の引き下げである。「減税については個人所得税は2018年に大幅に切り下げられたが、次は法人税引き下げが来るのだろうか」と本ブログも12月に記していた。VATの減税規模は毎年6000億元程度となる。昨年から期待されてきた財政拡張について、ようやく満額回答に近い回答が得られたわけである。


 ところで、日経は早速この財政拡張に債務問題を持ち出して水を差している。曰く、中国の公的債務は公式発表の18兆元強に加えて、政府系企業の債務など「隠れ債務」と合わせると19年末には50兆~60兆元(800兆〜1000兆)という莫大な額になるという。

 なお日経も認めているように中国のGDPは年間で90兆元以上ある。GDP対比の公的債務という馴染み深い数字に直すと、公式債務はGDP比20%というとんでもない緊縮マニアの領域である。隠れ債務を全て加えたとしても60%程度であり、米国は104%、ドイツは64%なので緊縮マニアのドイツ並みに健全である。もちろん「まだ大規模な財政出動が必要となる大不況を経験していない」というのもあるが、中国の中央政府(財政部)はイメージに反して吝嗇なのである。動的に考えても年間財政赤字のGDP比2.8%は日米の半分程度であり、3%のEUルールを当てはめても合格である。これに加えて更に莫大な民間債務があるという反論もあるだろうが、民間債務の大きさは公的債務を減らす理由にならない。むしろ本当にデレバレッジをやる気があるならば、民間債務をゆくゆくは全て中央政府の債務に置き換えるくらいの気合いが必要なのである。
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  これに更に規模が拡大する一般会計外の地方政府専項債が加われば、中国の2019年の財政政策は2018年よりもだいぶ拡張的と言えるだろう。財政支出はインフラ投資に先行してきた(図)ため、たとえば固定資産投資もインフラ投資主導で持ち直すと期待される。

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