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 3/21未明に結果が発表されたFOMCは2017年9月以来の据置きを決定した。答え合わせとしては「米ドルと米短期金利も上方向に調整しやすい」としていたのが完全に外れた。2019年のドット中間値は2回利上げから0回利上げに変わり、一方2020年は1回利上げが残った。個人的にはこの組合せは「利下げ憶測の否定」に当たるだろうと思っていたが、特段利下げ織込みへの牽制もなかったようで、市場はエクストリームハト化として捉えてドル全面安・米金利低下で反応した。米株は「満額回答が得られないようならS&P 500は調整」としていたが、金利市場的には満額回答だったように見えたにもかかわらず、株の方はECBハト化への反応と同じで「景気の悪さの再確認」というか中銀の痛くもない腹を探られたというか、ファーストリアクションは株安だった。その後は金融緩和的要素がようやく思い出されて大きく反発したが、結局その後ドイツの製造業PMIが44.7という低さを付けたのを受けて米国債が再び3ヶ月短期国債金利と10年国債金利がインバートするまで買われ、S&P 500は更に暴落した。ドル相場は、オセアニアと円以外の主要ペアはリスクオフもあって、ファーストリアクションのドル安を全戻ししている。Fedがハト転しても余所の中銀は更にハト転するだろうから、Fedのハト化だけではドル安には繋がりづらい。
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 金利についてはメインシナリオから外しながらも懸念していた、ドットが金利市場の織込みを追認するように下がってくるとそれ見たことかとばかりに金利市場の利下げ織込みが更に進む「アキレスのドット」現象が見事に実現した。年内の利下げ確率は「織込みすぎ」と述べていた30%から更に急騰してしまっている。筆者と同じ考えだった参加者がFOMCを受けてさてどうしたものかと思っている間に、ドイツ金利からの染み出しがとどめとなったわけだ。

 週が終わるとFOMCの話題はすっかり金曜に起こった3M -10yのインバートに取って代わられた。長短金利の逆転は景気後退の予兆として有名である。ITバブル崩壊前もサブプライムショック前も、日本のバブル崩壊時も長短金利が逆転していた。長短金利と言えば3M -10yと2y -10yなど様々な測り方があるが、今回は3M -2yも早々と逆転してしまっているため、引き算した2y -10yはまだ順イールドである。1yは新発債がないためキリが良い割には指標金利になり得ず、「短期金利の指標」は3Mと2yのどちらかとなる。

 本ブログはイエレン前議長と同じく、Fedが長期金利を低く押えていた(マイナスのタームプレミアム)からインバートするのであって、必ずしもリセッションを預言するわけではないというスタンスを取っているが、それでも世間でインバートが話題になるのを止めることができるわけではない。またタームプレミアムについて、粛々と進んでいるFedのバランスシート縮小が早期終了する、それも明らかに「弱い景気」を見て早期終了するからこそまだ潰されているのであり、結局はその辺のインバートとそんなに違わないという見方もできるだろう。
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 過去のインバート局面ではインバートからリセッションまで1〜2年の猶予があり、またその間米株のパフォーマンスも決して悪くない、むしろ引締めが終わり株式フレンドリーな環境、手っ取り早く言うとバブルが始まるこの場面が一番美味しいという話もある。それも過去の事例を見ると事実であるが、今回はそちらの考え方がやや前のめり気味に一人歩きしているのはやや気になる。今までの引締めの最終局面で株価が伸びたと言っても、いずれも近いうちに盛大にクラッシュしたため、それを学習した上で何度も全員で無意味なバブルを作る必要があるだろうか。
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 実際、足元のアセットアロケーターは明らかにインバートを祝うべきグッドニュースと捉えていない。米国の2年金利と5年金利が11年ぶりに初めて逆転したのは12月3日であった。そこから米株は肝が冷えるような急落に見舞われた。2年-5年についてはその後1回の反発を経てインバートが定着してしまっているが、「3M -10yと言う新たな有力年限のインバート」も当然ベアシグナルとして捉えられやすいだろう。実際、米株がドイツ指標のもらい事故でここまで売られたのは、明らかに0%を付けたドイツ金利からの染み出しが米国債の3M -10yインバートを招き、インバートが更に株の売りトリガーを発動させた結果に見える。
ISM Philly
 米金利のインバートが定着するかどうかは、米中景況感が回復できるかどうかに掛かっている。中国の財新製造業PMI及び米国内の先行指標であるフィラデルフィア連銀景況感のヘッドラインは反発している(もっともその中でも6ヶ月先景況見通しは悪い)が、ISM製造業は反発を期待できるだろうか。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。