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 大手ブローカーTradeWebのツイッターアカウントに「We meet again」と煽られているように、ドイツ国債10年金利は3年ぶりに日本国債10年金利に追い付いた。元よりイタリアがテクニカルリセッション、ドイツも辛うじてリセッションを回避したという程度には景気が悪い中で世界中銀のハト化(トップバッターはFedとPBOC、最新はRBNZ)が重なり、ECBのドラギ総裁がマイナス金利の副作用の強さに耐えかねて預金金利の階層設定導入を検討しているとのヘッドラインがとどめとなった。このままではドラギ総裁は歴代ECB総裁の中で利上げ童貞のまま退任する初めての総裁となる。

 ドラギ総裁は「必要ならばマイナス金利の副作用を緩和しつつ、それが経済にもたらす好ましい影響を維持できる措置を検討する必要がある。とはいっても、銀行の低い収益力はマイナス金利の避けられない代償ではない」と述べている。その措置とは、我らが誇る日銀が2016年1月にマイナス金利政策を始めた時に満を持して導入した、限界的な金利を引き下げながら銀行のマイナス金利負担を軽減できるマイナス金利の階層設定(Tiering)である。マイナス金利の三層構造を考え出した日銀の中の人はかつて「我々はこれは本当によくできたスキームだと自負している」と語ったそうだが、実際またしても日本がパイオニアとなり模範となったのである。

Mr. Draghi's comments suggest the ECB could consider action to mitigate the impact of negative rates on banks, a step already taken by some other central banks, including the Bank of Japan. One option is to introduce a tiered deposit rate, which would shield a part of banks' deposits from the charges. -MarketWatch

 もしECBが階層を設定した場合、マイナス金利政策が更に持続性を獲得できるため、マイナス金利の長期化を織込む動きが出ても仕方ない。なお日本の例を見ると、三層構造が金融機関に安堵したマイナス利払い分よりもマイナス金利政策長期化の悪影響の方が強い。本ブログは「通貨ユーロの日本円化について」では「もちろん本格的にECBが追加緩和に踏み込むような局面になるとユーロ版アベノミクス相場が来る可能性もあるが、今のユーロ圏はまだアベノミクス前のような、どんなに景気が悪くてもそれで円安にはならなかった局面のアナロジーにいる可能性がある」としていたが、もし階層設定が導入された場合はどんなフォワードガイダンスよりも「本格的な追加緩和」として捉えられる可能性があるのではないか。

 なお発明者である日銀が追随者が出たことを素直に喜べるかというと、今まで事あるごとにマイナス金利政策の正当性を説くのにECBを引き合いに出してきたことから、ECBがマイナス金利政策の不都合を認めたとなると、ややハシゴを外された形となってしまったのではないか。

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