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 ドイツと同じく、米金利も低下が止まらない。10年国債金利は一時FF実効レートの2.4を下回った。先物が織り込む2020年年末までの金融政策変更は25bp x2回以上の利下げとなっている。
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 名目金利とTIPS利回りから算出される5年ブレークイーブン(インフレ期待)はWTI原油と連動していたが、3月下旬に連動が崩壊している。原油市場のプレーヤーもある程度景気の予想を立てながらプライシングするわけで、中期の米金利は原油で説明できない下げ方をしているということである。
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 FF金利先物が示す向こう1年のFed金融政策変更織り込みは概ねBloombergの米国の経済指標サプライズ指数と連動していたが、やはり3月下旬に連動が崩壊している。短期の米金利は米国の経済指標サプライズ指数で説明できない下げ方をしているということである。

 この米金利の下方乖離の背景として、一つ考えられるのはECBからの染み出しである。今年初頭から2016年パターン(及びその変則の2017年がやってこない2016年)を唱える人が多いが、ECBのマイナス金利長期化観測から2014年パターンも視野に入れておくべきかもしれない。2014年もECBと日銀の緩和が米国に染み出してドル独歩高と米金利低下が並存した。株高も伴ったがドル独歩高の歪みは後にチャイナショックとして噴出した。また2014年と同じく、ドル高そのものも物価低下圧力となる。

    もう一つは政治の圧力である。トランプ大統領が指名したFRB理事候補の保守系経済コメンテーター、スティーブン・ムーアは、FRBは直ちに0.5%ポイントの利下げを実施すべき、とNYTのインタビューで主張しあらゆる方面から批判を浴びた。経済学の教科書執筆で知られるグレゴリー・マンキュー教授などは「この重職に必要とされる知的な威厳が彼にはない」と批判しているが、素質がなくても上院で承認されて理事になり、その上でトランプが再選されると議長に指名されるという悪夢のような展開もあり得るそうだ。本邦でもそうだがこの手の有象無象はトップの言いたいことを言う腹話術の人形という役割が与えられているか、そうでなくてもトップの忖度を自らの存在意義と課していることが多い。実際その後クドロー国家経済会議(NEC)委員長も同じ考えを示し、トランプ大統領もツイッターで「インフレがほとんどない中でFRBが誤った利上げや、ばかげたタイミングでの保有資産圧縮をしていなければ、米経済成長率と株価はもっと高かった」と利上げが間違っていたと批判していた。トルコのエルドアンを笑えない介入ぶりである。我々は「民主主義国家の指導者は常にポピュリズムのために財政規律を緩めたがり、金融緩和をしたがる。従って独立した中央銀行が必要である」という金融の教科書が書かれる前の世界に生きているようだ。

 昨年年末の解任騒ぎがパウエル議長をビビらせたのは間違いないが、それと同時に他のFedボードメンバーをもビビらせたようだ。3月のドットが2019年据置きで綺麗に方向転換のは明らかに出来すぎである。タカ派を中心にFed理事達が存在感を消していく可能性もあるだろう。高圧政治から生まれた高圧経済というわけだ。経済指標そのものは弱々しいながらも明らかに改善しつつあり、米金利の急低下を正当化しない。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。