

世界中が米中貿易戦争の再開に注目している中、本日発表された中国の社会融資総額(TSF)がしれっと滑っている。「景気論争に決着を付けた」とも言われた3月の完璧な数字から一転して4月は息切れした。総額とその中で最も重要な新規銀行貸出の推移をまとめたBloombergのチャート(上図)によると、銀行貸出は「デレバレッジ運動最中の2018年の平凡な月」並みの1兆元となった。表は省略するが特に引き締められなかったシャドーバンク系も軒並み退潮しており、3月並みとなったのは社債発行(下図)くらいである。

項目別の推移である。最も重要な「非金融企業への中長期融資」(藍色)は1, 2, 3月対比で大きく萎縮し、2018年の平凡な月よりも少なかった。

PBOCによって市中流動性が引き締められたのも背景にあるだろうし、金利上昇で企業側の借入れ意欲が低下した可能性もある。図は中国10年国債金利と7日リバースレポ金利である。

TSFと歩調を合わせる形で、「信用創造の度合い」を表すM1伸び率も2018年の大減速から1-3月にかけて一旦反発したように見えたものの4月に再び下向いている。諸外国ならM2を使うところで中国の場合だけあえてM1が使われている。2018年の大減速については様々な解釈もあったが、大雑把に言ってM1は「現金(M0)+企業の手元流動性」を表している。

財政赤字の目標外の財政拡張を担う地方専項債(Infrastructure bond, Special bond、左図のグレー)も3月にブーストした後に4月は1, 2月の水準を大きく割り込んでいる。こちらは昨年から新たにTSFに含まれた項目である。ベース金利の上昇で当局がクラウディングアウトを避けるために発行スケジュールを調整した可能性もあり、年間発行額への期待まで変えるような数字ではないと思われるが、銀行融資と同時に引き締まったのは、本ブログが何度も取り上げた「4月の金融引締め」の成果であろう。初めて4月の引締めを取り上げた時は「クレジットパルスと比べて金融緩和度合いは重要ではない」と油断していたが、両者は表裏一体であったようだ(ただ、馬を水辺に連れて行く金融緩和だけを進めてもクレジットパルスは改善しない)。やはり「しばらくは中国発のポジティブなヘッドラインがあまりなさそうである」。
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