China Manu PMI
 中国経済についてのアップデートをしばらく怠ってきたが、実際この間貿易戦争再開騒ぎ前に最後に言い残した「しばらくは中国発のポジティブなヘッドラインがあまりなさそうである」という状態が続いている。1-3月期には目覚ましい反発が一回あったが、その後はひたすら停滞が続いている。一方で、貿易戦争が騒がれている割りには底が割れる気配も特に見られない。まず最も大事な財新製造業PMIは低下トレンドが続いており、6月発表の5月分は昨年12月以来の50割れに再び落ち込んでいる。GDP成長率が6.2%か6.3%かはヘッドラインになりやすいだろうが元々総量が増えるにつれて逓減するに決まっているのでどうでも良い。
 
China Industrial Production
 本日発表の鉱工業生産は貿易戦争を横目にやや堅調であった。3月と同じく1%弱ほどは2018年の凹みに由来するものとして割り引いて見るべきかもしれない。ただ基調としては貿易戦争の影響を和らげるための引締め後退もあって弱くはない。5月の貿易戦争再開に伴う対米輸出25%関税の開始(忘れている人が多いと思うがまだ絶賛続いている)を受けての輸出受注や輸出契約更新はまだ6月分のPMI以外のハードデータには十分に反映されていない。
China retail sales
 小売売上高。4月分はThe End of the Worldな雰囲気を醸し出していたが、蓋を開けてみればその後反発している。6月分は再び10%近くの伸びとなった。
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 ドライバーとしては自動車販売が急速に反発しており、こちらは前月比+17%で小売全体に4〜5%の寄与をもたらしている。2018年から今年にかけて中国の自動車販売の不振が話題となっていた。住宅負担による押し出し、当局の大気汚染対策、渋滞(買い替えはともかく道路上を走る自動車総台数は総道路延長が増えない限りそんなに増えようがない)などが背景として挙げられていたが、今回の反発の背景は排気ガス規制強化を目前とした業者の値引き売りである。中国の足元の排気ガス規制はEURO .5に相当する国5基準だが、これがEURO .6に相当する国6基準に来年から置き換わることが前から決まっており、長い買い控えの背景にはそれもあったと思われるが、一部の地域で今年7/1から前倒し導入するに至り6月に多くの業者が在庫処理に追われた。またちょうど2018年6月も7月の自動車関税引下げを前に買い控えの動きが目立ったため発射台も低くなっていた。中金は「もし自動車販売が0成長なら小売売上高は4.9%、前月並みの2.1%なら5.6%」としており、中国の消費減速の大きな流れは変わっていない。
RPI
 また小売物価RPI(Retail Price Index)から見ても、豚肉の影響で高騰が続く食品は食品以外の支出を明らかにクラウディング・アウトしている。不動産投資、社会融資総額、地方専項債等については次回取り上げようと思うが、とりあえず足元は「長征」にふさわしくグダグダな状態が続いていると見て良いだろう。

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