SPX dailyTNX Daily
 前回のS&P 500テクニカル記事では、「もし金利上昇が今月いっぱい続いたりした日には、久々にリスクパリティファンドの出動が見られる可能性があるのではないか」「テクニカルには、まだまだ最高値更新のモメンタムが残っているように見える。トランプのツイートが終値を持ち上げたおかげでS&P 500の週足は下ヒゲ陽線となっており、それまでの天井水準にもあたる2950がサポートとなっている。ここを下にブレイクして初めて週足ベースで反転を確認でき、そこまでいけば今年初のリスクパリティショーが期待できるだろう」としていたが、当局の消火活動は苛烈を極め、今のところ金利上昇は続いておらずリスクパリティの投げシナリオは不発となっている。S&P 500はテクニカルサポートとして挙げた2950の手前で跳ね返り、一度は3000超えまで浮上した。リスクパリティショー見学モードにはまだ入らなくて良かった。

 それどころか、18日にはNY連銀のウィリアムズ総裁が「経済危機の初期兆候が出た場合、素早く利下げに動く価値がある」と行きすぎたハト的スピーチを行い、7月の50bp利下げ確率織込みが60%に達した金利為替の方の記事では織込みを「25bp〜37.5bpの間で見ておけば良い」と宣言したが早速37.5bp(25bp + 25bp x50%)を上回ってしまった。もっともこれについては早速NY連銀が「あくまでも学術的な話」と異例の火消しをしたり、他の総裁達も7/19から始まるブラックアウト期間を前に駆け込みで織込みを25bpに誘導させようとした。株と為替金利も連れられて右往左往したが、Fedが市場に織り込ませたい水準は明白である。今後は月末のFOMCまでブラックアウト期間に入るため引続き25bp〜37.5bpから逸脱する可能性は低く、従って米金利も6月からのレンジ内で消耗試合になるだろう。というより、最後の数日のFed関連者の右往左往に対して(短期金利やドル相場はともかく)米長期金利の反応は不遜なほどに小さく、むしろS&P 500の方が振らされた幅が大きかった。50bp cut織込みが大勢にならないとS&P 500の3000台キープは難しいように見えたがどうだろうか。

HYG Daily
 前回取り上げたカナリア・ハイイールド債ETFは引続き元気がない。50bp利下げを織込めないとなるとこちらはとても買いたい水準に見えず、勢いもない。
Positioning
 米株指数だけはどうしてここまで執拗に買われるかというと、6月末の記事で「目先はとにかくこのチャートの需給の良さ(ショーターの苦しさ)が一巡しないと逆張りはやはり危険に見える」と踏上げへの注意を喚起していた通り、やはり「トレンドフォロワー系ファンドの急速な買上げ」が背景にあったようだ。この「ヘッジファンドの株エクスポージャー」が爆上げを経て2015年チャイナショック前や2018年VIXショック前の水準に近付きつつあるのを見ると、上昇に付いて行く必要はとてもなさそうに見える
BofA QA
 ZerohedgeがTwitterに投稿したBoAメリルのクレジット投資家サーベイによると、7月時点で5月と比べて貿易戦争周りの懸念が減り(G20を通過したため)、代わりにリセッションとアセットバブル懸念が増大。リセッションを懸念しながらアセットバブルも懸念ということは自分達はバブルに乗れていない。リアルマネーは6月の記事で取り上げた「ファンダメンタルズを懸念して祭りに参加せず」というスタンスから変わっていないように見え、存在感が薄い。
NFLX
MSFT
 米企業決算については、滑ったNetflixは置いておくにしても、良い決算だったと言われがちのMicrosoftも結局出来高急増を伴う寄り天で引けたことを考えると、決算通過へのハードルは限りなく高いのではないか。

 テクニカルには前回の記事と同じく2950がキーとなる。イメージとしては金融緩和と決算への過剰な期待の健全な剥落が必要に見えるが、前回「2950割れでクラッシュに期待」と書いた後の踏上げが力強すぎてショートに傾ける気もあまりしない。2950を背にしたロングもリスクリワードが悪すぎ、ひたすらクラッシュ待ちの雨乞いというところである。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。