前回の記事では二つの地銀の破綻処理を経て中国のインターバンク市場が揺さぶられ、当局が支援したい中小企業への貸出の主力である地銀が苦しくなっているのを取り上げた。8月になって三つ目の破綻地銀を公的ファンドが救済した。ボコボコと地雷が炸裂する中で地銀がどこまで自由にインターバンクファンディングして攻めの融資姿勢を続けられるかが注目される。またメガバンクも公的ファンドと共にお金を出して地銀の救済をさせられるのなら体力が弱ってしまう。
もっとも、一応は国有銀行、民間銀行、地銀、信金信組(藍から水色の順)に当たる各銀行セクターのインターバンクデポジット利回りが上図に示されているが、ボラタイルに、また小さい金融機関ほど高くなったものの露骨な急上昇は見せて居ない。当局の努力もあって直ちに金融危機というわけではないようだ。
前回の記事では「グッドニュースがあるとすれば、ゴタゴタを経ても社会融資総額(TSF)がまだ失速していないところ」「いつまで積極的な貸出が続くか要注意である」としていたが、この唯一のブライトポイントも翳って来ている。7月のTSFは引締めが続いた2018年の最も低い月レベルの量となった。中身をみると依然銀行融資と社債発行が孤軍奮闘しており(そして前者はそれでも弱い)、シャドーバンク系が壊滅している。中国のクレジットインパルスは着実に弱っているように見える。
急減速から回復しかけたと思われるM1(オレンジ)も再び下向きになりかかっており、諸説あるもののいわゆる信用創造の弱さを示唆していると言えそうだ。
となるとせっかくFedもハト化している今、また人民元相場が7.0の縛りから解放された今こそ金融緩和で金融市場をブーストすべきという話になりそうだが、CPIが高止まりしているため金融緩和も実現しづらい。PPIは一人チャイナショック翌年2016年以来の前年比マイナスに転落しており、デフレーションを示唆している。貿易戦争が毎日激化しているためこれもさもありなんである。いずれにしても中国景気は年初からの減税が急に効き出さない限り、あまり上向きの話がなさそうである。
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