前回の記事では「とりあえずは2800〜2950の広いレンジ継続を見て、もし2800を下に抜けたら一段安に備えて仕切り直しという形になるだろうか」としていた。下限としていた2800の根拠は週足の下ヒゲであったが、こちらは実は見間違えでヒゲ先端はもっと高めの2820近辺にあった。しかし、2820 -2950のレンジなら更に精度が高かったであろうと思われるものの、2800 -2950でも十分に正確なレンジ当てであったと言えるのではなかろうか。週明けはグダグダで始まったものの、13日にはトランプ政権が「9/1に発動予定の中国製品に対する10%の追加関税のうち、ノートパソコンや携帯電話など一部製品への発動を12/15延期する」と発表し、ドル円と米株は猛然とショートカバーに見舞われた。しかし、そこで付けた2943こそ、2800 -2950レンジから見た絶好の売り場となった。14日には米国債金利の「リセッションを示唆する」とされる2-10インバートが起こり、再び一部の人間より賢いファンドの自爆スイッチを押したのだろう。S&P 500は1日で2950近辺から2850まで売られた。前回の記事で「リスクは非対称的」としていた通り、2800を背にレンジ下限の逆張り買いは大変勇気がいることだったが、結果的には先週の下ヒゲ2820は(少なくとも現物ベースでは)破られず、NVIDIAの好決算やドイツの財政出動への憶測もあってS&P 500は週末に向けて再びレンジ上半部まで跳ね返った。本ブログが示したレンジ内で上限も下限も付けて綺麗に1往復したわけである。
ファンダメンタルズとしては、米国の2y-10yカーブが一瞬だけインバートしたことが話題になったが、(Day-1で色んな人間より賢いシステム戦略の自爆スイッチを押したのは明らかであったものの)これが直ちにリセッション懸念から暴落に繋がるかは分からない。14日の米株急落を受けてトランプ大統領は早速米大手銀の3トップに電話で相談したそうだが、大統領選に近付くにつれて焦り出すまでの値幅が縮まっている。いつもの怪しい取り巻きの代わりに実業界の人達に聞く限り当然「貿易戦争をさっさとやめろ」というアドバイスとなる。株安局面においてこれは怪しい取り巻きの思いつきや無責任な議会両党の面々の総意とやらより遥かに重い。トランプ政権がこのままグダグダ折れ続けることによるリスクオンも想定されるかもしれない。一方、ここから更に下値を掘る要因としては、一つは月末月初にかけてパラパラと出てくる米景気指標がBad news is good newsなどと言う余裕もないほど悪化した場合(なお先行するフィリーやNYはそこまで弱くない)と、退路がない水準まで突っ走ってきたグローバル金利が財政への憶測で逆回転することではないか。
テクニカル的には2820 -2950のレンジは継続であり、2820は引き続きサポートとしてワークする。週半ばには週足下ヒゲ陽線を週足上ヒゲ大陰線で被せるパターンに見えたものの、結果として今週週足は中途半端な形となり、下ヒゲ陽線と2820サポートはワーク継続となった。ドイツの財政出動やファーウェイ制裁までの猶予期間の延長などの憶測でむしろレンジ上限の2950で売るのにやや勇気がいるようになった。
ポジショニングとしては下値での買支えが目立った一週間となった。これは「恐らくクオンツ勢以外のポジションがまだ軽いため、強い押し目買い意欲は確認できた」との観測通りである。一方リスクパリティなどクオンツ勢が「最大限まで膨らませたポジションの縮小作業がしばらく続くのではないか」とも分かっていたため上値での売り安心感もあった。BoAMLの投資家アンケートによると、「株式の急落に備えたプロテクションを取っているか」への回答のネット%(Yes% -No%)はここ10年来最高となっている。もっともこれは「今の水準を作っている面々よりも賢い投資家が既にベア転」しているということかもしれないし、貿易戦争という分かりきったネタに対してみんな備えが出来ているから下がりにくいかもしれないし、単にVIX が上がりづらくなって安価なヘッジができるようになったからみんな手軽にヘッジを入れるようになったという構造的な変化かもしれない。一方、上の方で勘違いの島を作ってきた面々であるリスクパリティのポジション削減はまだ道半ばかもしれない。貿易戦争関連や財政拡張関連の新たにヘッドラインが出ず上値を買い上げるような雰囲気にもならなければ、2820 -2950レンジ継続となるか。財政拡張憶測が続くようであれば金利が崩れない限りはブル要因となる。ここまで目立ってきた2820サポートがもし何らかのネガティブ要因で下にぶち抜かれた時には下値余地が「3月、6月の底が並ぶ2700台前半」まで広がる。
S&P 500は貿易戦争再開でどこまでクラッシュするか
S&P 500はひたすらクラッシュ雨乞い
S&P 500が利下げ織込みすぎから押すな押すなに
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下抜けてもやはり煮え切らないS&P 500
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S&P 500ここから上はさすがに前途多難
ようやく貿易戦争の悪影響の織り込みが終わる
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テクニカル的には2820 -2950のレンジは継続であり、2820は引き続きサポートとしてワークする。週半ばには週足下ヒゲ陽線を週足上ヒゲ大陰線で被せるパターンに見えたものの、結果として今週週足は中途半端な形となり、下ヒゲ陽線と2820サポートはワーク継続となった。ドイツの財政出動やファーウェイ制裁までの猶予期間の延長などの憶測でむしろレンジ上限の2950で売るのにやや勇気がいるようになった。
ポジショニングとしては下値での買支えが目立った一週間となった。これは「恐らくクオンツ勢以外のポジションがまだ軽いため、強い押し目買い意欲は確認できた」との観測通りである。一方リスクパリティなどクオンツ勢が「最大限まで膨らませたポジションの縮小作業がしばらく続くのではないか」とも分かっていたため上値での売り安心感もあった。BoAMLの投資家アンケートによると、「株式の急落に備えたプロテクションを取っているか」への回答のネット%(Yes% -No%)はここ10年来最高となっている。もっともこれは「今の水準を作っている面々よりも賢い投資家が既にベア転」しているということかもしれないし、貿易戦争という分かりきったネタに対してみんな備えが出来ているから下がりにくいかもしれないし、単にVIX が上がりづらくなって安価なヘッジができるようになったからみんな手軽にヘッジを入れるようになったという構造的な変化かもしれない。一方、上の方で勘違いの島を作ってきた面々であるリスクパリティのポジション削減はまだ道半ばかもしれない。貿易戦争関連や財政拡張関連の新たにヘッドラインが出ず上値を買い上げるような雰囲気にもならなければ、2820 -2950レンジ継続となるか。財政拡張憶測が続くようであれば金利が崩れない限りはブル要因となる。ここまで目立ってきた2820サポートがもし何らかのネガティブ要因で下にぶち抜かれた時には下値余地が「3月、6月の底が並ぶ2700台前半」まで広がる。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。