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 長らく続いたS&P 500の2820 -2950レンジはようやくブレイクされた。本ブログが警戒していたのと逆に上方向に、である。「買いは何かファンダメンタルズに新たな材料が出て2950を再び上回ってからでも遅くない。逆に何もなければ2800台半ばから上は売り場となるだろう」「テクニカルな下値余地としては、首の皮一枚になった2820で跳ね返るのが理想ではあるが、あまり期待が持てない」としてきたが、その後に米中貿易交渉再開、また中国の預金準備率引下げ予告などのヘッドラインが流れ、すっかりリスクオンの流れになってしまった。またイギリスでもイタリアでもポピュリスト指導者が凡ミスをしてしまい、ヘッドラインリスクは大きく後退した。一方、注目されていたISM製造業はついに50を割り込んでしまい、足元の景況感そのものは順当に後退が続いている。本ブログはレンジを正しく指摘して来たにもかかわらず、レンジ上限下限でそれぞれ突破を懸念して振り回されてしまった。

 米中貿易交渉再開については、まず条件が折り合うのは難しいだろうと考えるように我々は2018年以来現実に訓練されて来たが、5月以来グッドニュースの数々に「中国側の3条件(関税撤廃、数値目標は現実的に、文章は平等に)は変わらない」と冷水をぶっかけてきた陶然筆記が珍しく「9月いっぱいは現場が丁寧な事前準備を行うだろう」「実質的進展を得るためという表現は5月以来」「中国側は感情的になっておらず、特定の誰かを損させようとせず、ただ貿易戦争の害を世間に示そうとしてきた」とポジティブなトーンを示してきたため、少なくとも9月いっぱいはあまりネガティブなヘッドラインを警戒しなくても良さそうな雰囲気となっている。

 欧州でもイタリアで「同盟」率いるサルビーニ副首相が連立政権を解体して一時期総選挙リスクなども取り沙汰されていたが、 同盟抜きで連立政権があっさり成立してしまった。イギリスでもBrexit延期法案が通過し、差し迫ったHard Brexitのリスクが低下した。もっとも、後者についてはイギリス側だけの都合でまとまるものではない。
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 米国の景況感を占う上で重要なISM製造業は50より下に沈んだ。これは5月以降の貿易戦争激化が米国景況感の後退に繋がったことを証明している。ただこれだけ騒ぎを大統領が作って来たので景況感がガタガタになるのは当たり前であり、また先立つ米金利のインバートからのリセッション騒ぎもあって、青天霹靂というよりはようやく来た感もある。また(更にどうハト化するのかという感もあるが)悪い景況感は9月FOMCのハト化に繋がり得るため、短期的には必ずしもバッドニュースではない。(堅調な)非製造業のウェイトが大きい雇用は普通である。

 テクニカルにはやはり2820 -2950のレンジブレイクが大きい。2950は明らかに4週間にわたって上値として意識されて来た。「大天井からの下落推進波→3週間のコンテニュエーションとしてのボックス調整→下落トレンド再開」という見方が否定されるとなると、ショートカバーが先行するのは仕方ない。しかし「勘違いの島」が消滅したものの、指数は再び過去最高値に近づいており、高値圏にあることには変わらない。先週安値(週足下ヒゲ)の2890、そしてすっかり遠くなった2820をサポートとして意識しながら押し目買いを図っていく形となるか。景況感そのものは特に良くはないため、株の押し目にはさすがに事欠かないはずだ。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。