9/6に中国は久々に預金準備率を引き下げた。豚インフレの亢進や、超過準備(下図)をあまり積みたがらない中国の銀行の預金準備率が先進国銀行対比で既に高くないことなどでもう可能性が低いと言われていたところでの久々の引下げである。これにより9000億元(14兆円程度)の流動性が釈放される。特にインターバンクファンディングが厳しくなりそうな中小銀行向けが甘くなっている。
低金利の先進国では既に預金準備率は最低限まで引き下げられており、金融政策は金利の上げ下げで行われたことが多い。低水準からの金利の引下げは銀行収益への打撃と通貨安効果のトレードオフしか起きないが、新興国の(まだ残っている)預金準備率引下げは全ての意味で緩和である。銀行が1.62%という低金利で拘束される準備預金を引き出して利回り3.3%の1年MLFを返済すると考えると、全ての銀行を合わせて9000億 x (3.3 -1.62%) =150億元を節約できる。
これとバーターというわけではないが、先立って銀行にとってややアンフェーバーな改革も行われている。企業向け貸出の金利指標として使われて来た貸出基礎金利(Loan Prime Rate, LPR)は2015年以来4.31%で固定されたまま忘れ去られてきたが、これが8/16に「より市場化された決定方法」に移行し、低下圧力がかかっている。具体的にはMLFなどの金利に調整を加えて18行のパネル行が報告する。一方、この貸出金利低下が不動産価格に波及「しない」ように、住宅ローン金利は別途LPR +スプレッドで決定され(更に二軒目はLPR +スプレッド +60bp)、更に下限も設定される。今回の貸出金利引下げ改革で恩恵を受けるべきはあくまでも企業であり、不動産購入のための借入れはピンポイントで意地悪されている。
ところで、8月分の社会融資総額は7月対比で堅調であった。銀行融資はそこまで伸びていないし、シャドーバンク系の壊滅も変わっていないが、社債発行が戻っており、シャドーバンクの正規化という解釈に収まる範囲となっている。今のところ三つの地銀破綻も貿易戦争の激化も特に流動性危機を招いていないようだ。
融資状況は必ずしも景況感を表すものではないかもしれないが、奇しくも8月の財新製造業PMIも予想外に50以上への反発を見せている。飛び交う貿易戦争のヘッドラインの裏で、全てのデータは中国経済そのものの意外な底堅さを示唆している。
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