
米国の景況感に注目が集まる中、8月分の住宅着工(カラム)が2007年以来の水準への予想外の大ブーストを見せていることが話題を呼んでいる。直近の中古住宅販売(点線)もブーストこそしていないが、2018年年末を底に反発しており、住宅着工と矛盾はしない(米国では新築の10倍程度の件数の中古住宅が売買されており、新築よりも中古販売の方が重要である)。


住宅価格の上昇と米金利の引上げに由来するモーゲージ金利の上昇によって米国の住宅販売は長らく停滞していたが、利下げサイクルへの転換と長期金利低下のおかげでモーゲージ金利は急低下し、再び住宅が売れ出したようである。住宅購入の原資と決断の根拠となる雇用と賃金は堅調さが続いており、グローバル経済への不安なセンチメントに金利コストの低下が打ち勝った形となる。最高値4.9%から足元の3.5%へと140bpも低下したので、30年固定金利モーゲージのデュレーションが15年として物件価格の実に20%もの金利節約となる。
トランプ大統領がFedに強制した利下げサイクルへの転換は、貿易戦争の製造業への悪影響を打ち消すことはできないと考えてきたが、一方で利下げはトランプの本業でもある不動産市場にポジティブな影響を与えているようだ。2019年第1四半期時点で居住用の住宅投資が米GDPに占める割合は約3.8%にすぎず、これは昨年まで利上げが住宅市場に与える悪影響について議論する時に「問題ない」とされてきた根拠でもあったが、住宅需要は建設資材や家具・家電製品などへの需要の波及効果は大きく、GDPに与える影響は実際の割合以上に大きいとも言われている。もちろん貿易戦争のせいで雇用と賃金までコケた場合は住宅購入どころではなくなるが、足元では意外な分野が米国経済を下支えする可能性も出てきた。
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