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 米中貿易交渉に振り回された一週間であった。金曜夜の会談に向けて「米国政府が中国のテクノロジー企業や官僚個人をブラックリストに追加」「中国代表団が帰国日程を1日前倒し」など振り落としのヘッドラインが続いたが、週半ばから一転して「上手くいく」方向のヘッドラインが優勢となり、金曜になると香港やBrexitのヘッドラインも加わってもはや会談前から勝負が決まった感があった。結局しゃんしゃんで進んだ会談の結果、10/15に25%から30%への引上げが予定されていた2500億ドル分の引上げは先送りされた。S&P 500は2944〜2893〜2993と大きく往復した。「合意がなければリセッション待ったなしな上に、合意が得られる可能性は小さい」とリスクオフベットのオッズが良すぎたのが罰せられた。

 本ブログとしては「少なくとも日本においては誰に聞いてもグッドニュースなどあるわけがないというスタンスで、アップサイドは織り込まれていないはずだ。しかし個人的には今回はトランプが中国投資制限を言い出した(後に財務省が火消し)割りには、中国側から反発の買い言葉が出てこなかったのは意外と重要で、協議に向けた誠意の表れではないかと見ている。陶然筆記も長い沈黙を保っている」と、「今回は違う」「今回は上手くいく」と主張してきた。そして実際にブルニュースが返ってきた。本ブログも見落としていたが、そもそもライトハイザーの誕生日である10/11に会談日程が決められた時点で全てが予定調和であったかもしれない。「前回の記事では協議決裂を恐れた上で「それより景況感である」としていたが、今週は逆である。それよりヘッドラインである」としたが、実際(先週の悪かった)景況感は忘れ去られ、ヘッドラインが全ての一週間となった。レンジ幅に至っては「2850〜3008のレンジか」に対して2893〜2993とうっとりするような出来であった。

 さて今週。テクニカルには週足が下ヒゲ陽線・2本目の長い下ヒゲとなるため2800台はサポートが強そうだ。具体的には先週安値の2893がサポートとなる。先週取り上げた「200日線の2841〜先週安値の2850はサポート帯」もまだ健在だろう。上ヒゲ陰線を下ヒゲ陽線で返せたため3008レジスタンスはお払い箱となる。2900台でどこまで深い押し目を拾えるかというところか。日足チャートを見ると8月からの水平レンジないしは長いトライアングルに見えなくもないが、そこでこのレンジが始まったのが第4弾と考えると第4弾が残っているうちに上抜けするのはいかがなものかと思えてしまう。

 ポジショニング的にはリセッション待ちがまだ健在と思われる上に、半信半疑でアップサイドを織り込めなかった参加者の踏みが控えているかもしれない。下を叩いてヒゲを作ったCTAがいたならそちらもお仕置きが待っている。しかしファンダメンタルズにはブルヘッドラインは一巡しており、また米国の景況感は相変わらず悪く、転換点が見えない。もっとも個人的には今回のISMが底であったとまだ信じている。第1〜3弾の引上げは回避されたものの、第1〜4弾は立派に続いているし12月の第4弾年末商戦まで猶予分もまだ控えている。また米企業の決算発表も本格化してくる。従って売りはトランプを信じられなかった、ないしは過大評価していた人達の懺悔に巻き込まれる可能性がある一方で、ひたすら高値を追い掛けるのはあまり安心感がない。
HYG
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VIX
 ハイイールド債やVIXというカナリアは株のリスクオンが始まった後も様子見の雰囲気が強く、金曜になってようやく株の値動きにマッチしてきた。VIX的にはリスクパリティはしばらく買いでも売りでも波風を立てなそうだ。
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    シーズナリティ的にはそろそろ年末の上昇が始まる時間帯である。もっとも2018年にはこれが大外しした。まとめると、上の蓋は取れて先週よりもやや強気になれたものの依然レンジ感覚が優勢である。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。