週末発表された中国のCPI /PPIは最悪の組合せとなった。豚コレラの影響によりCPI伸び率はインフレターゲットの3%を大きく飛び越えて3.8%を付け、一方PPIは貿易戦争の影響もあってマイナス域での低下が続いている。豚肉価格については夏に取り上げた構図は変わっていない。
元々生産者物価で物を作って消費者物価で売るだけなのでPPIとCPIが極端に乖離することは珍しく、特に2015年まではよく連動していたが、2015年以降は両者の連動は完全に切れた。中身を見てもCPIの少なくとも半分(サービス30%と食品20%)はPPIに含まれていない。
メインドライバーはもちろん2.3%程度のウェイトを占める豚肉である。こちらが聯訊証券が恐らく回帰分析で計算した2019年各月の豚肉ウェイトであり、微妙にブレてはいる。
またCPIは2015年までM1, 2017年までM2にそれぞれ遅行していた(つまり、お金を刷ればCPIもPPIも上がるというシンプルな話であった)が、最近はどちらも連動が切れている。M2との連動はややこじ付けに近く、やはり中国ではM2よりM1であることがここでも分かる。M1との乖離は最近の金融緩和が良くも悪くもCPIに効かなくなってきたことを示す一方、今回「金融緩和がなくても物価が上昇した」のはそれだけ豚インフレのマグニチュードの大きさを示唆している。
またCPIは2015年までM1, 2017年までM2にそれぞれ遅行していた(つまり、お金を刷ればCPIもPPIも上がるというシンプルな話であった)が、最近はどちらも連動が切れている。M2との連動はややこじ付けに近く、やはり中国ではM2よりM1であることがここでも分かる。M1との乖離は最近の金融緩和が良くも悪くもCPIに効かなくなってきたことを示す一方、今回「金融緩和がなくても物価が上昇した」のはそれだけ豚インフレのマグニチュードの大きさを示唆している。
「豚肉以外のCPI」(ピンク)はPPIと似たり寄ったりのデフレーショナルなチャートとなっている。
輸出が低迷し、2015年以降もなんとなくPPIとの連動を保っているM1も弱いのが足元でPPIの弱さの背景である。
という中で、CPIの高騰は100%バッドニュースである。金融当局は何も触れていないが、企業収益がフラフラしている中で金融政策がCPIによって制限されるようでは、スタグフレーションの可能性も残る。2008年や2011年の豚肉価格上昇は利上げを伴った。物価上昇から消費の好況を読み取ろうとしたり、人民元高やら米国との貿易交渉(食糧輸入拡大)の後推しやらを期待するよりも、素直に予想外の外れ値として市場のリスクセンチメント収縮のトリガーにされる可能性の方が大きいではないか。
一方、更に進んでこの豚インフレで社会不安まで恐れる声もあるが、そこまで行くと考えすぎである。生産力の向上とインフラ整備による物流の進化によりCPIは2011年以降ボラティリティが相当下がってきたが、それ以前はもっと大幅に変動していた。例えばリーマンショック直前にも沿海部の富豪富商による大豆やらニンニクやらの買占めでCPIが2桁成長手前まで行った時も大して社会問題にならなかった。天安門事件の時も二桁インフレになっていたが、それは元々社会主義計画経済という建前の下で虚偽の低物価だったのが修正されつつあったためであったが、物価よりも国営企業関係者が特権的にしっかり建前通りの虚偽の低物価で商品を仕入れては市場価格で転売するのが横行したという政治の腐敗の方が問題だった。
一方で良い指標もある。前回の記事で取り上げた中国ローカル景気の謎の春はまだ続いている。財新PMIとそれを裏付ける発電用石炭消費量はそれぞれ堅調である。足元のPMIとPPIの乖離は未だに謎である。
中国の豚がCPIを道連れに飛び立つか
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。