
本ブログにして「ブラックスワン」とまで恐れさせるほど高騰した中国の豚肉価格は11月に入ってやや下落に転じている。寒くなると豚コレラの活動がやや鈍るのと、輸入を増やしてきたのが背景である。1月から10月にかけて中国の豚肉輸入は50%増えており、また代替物の牛肉も55%増と道連れにされている。地方政府などが備蓄してきた冷凍豚肉の放出も行われているが、これは長期的な需給バランスの崩れをカバーできるものではない。何かとデータの不透明性を批判される中国だが、こと経済指標については明らかにデータ先進国であり、豚肉価格は日次や週次で更新、公表されており、知らなかったでは済まされない。11月に入って豚肉価格はおよそ16%下落している。CPIバスケットに占める豚肉のウェイトは2.3%程度であるから、これに伴って11月分のCPI伸び率も年率3.8%から3%前半まで低下する可能性が高い。

価格の下落を裏付けるように中国の豚肉在庫も秋以降安定してきた。

しかしZerohedgeは来年になって更に国内の豚肉供給が減るようだと、世界中の豚肉を全て中国に輸出しても賄いきれない恐れがあると主張する。重要な供給源である欧州では環境要因から豚肉の養殖が減る傾向にあるとのことがだが、これはもっと長期的な話だろう。米国からの輸入は貿易戦争をやっている手前増やしづらい。冬は豚コレラはあまり広まらないだろうからしばらく需給を心配する必要がなさそうに見えるものの、今年と同様来年の春から再びこの話が盛り上がるかどうかが注目である。なお前回の記事でも触れたように、この程度の食料品インフレでは社会不安要因にならないとの観測は維持する。
本ブログは今年春から「価格上昇が起きても養殖拡大に投資する動きが非常に鈍いようだ。豚肉の高騰はそれなりに続く可能性がある」と注目してきた。「コストプッシュインフレにおいては、家計は当該セクター以外の消費を切り詰めて対応すると思われるため他の品目がバーターで値下がりしやすく、家計所得(総予算)が増えない限り一般物価は上がりづらい」としていたが、ここまで豚肉価格が突き抜けるとCPI全体が上がるのも仕方ない。「豚肉価格の更なる高騰→CPIの高止まり→金融引締めに追い込まれることはリスクシナリオの一つであるが、今のところまだ現実化していない」としていたが、こちらはいまだに現実化していない。「中国人民銀行のインフレ誘導目標は先進国より高い3%であるためまだまだ余裕がある」としていたが、3.8%まで突き抜けてしまった。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。