
中国の武漢市を中心で流行している肺炎を招くコロナウィルス(英語ではSars-like coronavirusと呼ばれている)において、人から人への感染が現実的になったところで香港株の暴落を招いた。中国株も弱かったが何よりもSARSの記憶が残っている香港がパニックになった。特に今週末から旧正月が始まり、数億人が里帰りすることが決まっている。これで旧正月の休場中に株を処分できないままパンデミックになったらたまったものではない、と香港株は朝から引けにかけて豪快にぶん投げられた。

筆者は医学に詳しいわけではないし、ローカルニュースはどうせ情報封鎖とデマの両極端であるので追いかけても仕方がない。特にWechatスクショという形で流れがちなデマは信用する価値がない。筆者のところにも武漢市から富裕層が肺炎になった子供を車で上海復旦大学病院に送り込んだため上海市も厳重警戒状態になった、などというのが流れてきたが、道中で手遅れになる可能性を考えてそんなことをするわけないだろうというのは中国の高速道路に対する筆者のイメージが古すぎるのだろうか。一方で公式発表も悪質な隠蔽でなくても「パニックを防ぐために」という言い訳の下で情報が小出しにされがちであり安心感がない。いずれにしても、SARSの時ですらなかった「春運」と呼ばれる旧正月の民族大移動との合わせ技のインパクトはどんなに警戒しても杞憂ということはなさそうだ。今後は警戒されているWHOのアラート発信があるかどうかに注目が集まるか。

ところで、ではSARSの時の資産価格はどうだったかというと、WHOのアラート発令から1ヶ月程度は香港株(水色)は下がり続けた(概ね8%のドローダウン)が、そこは押し目で終わり3ヶ月後には忘れ去られている。ウォーレン・バフェットがペトロチャイナの株を大量に買い集めたのもこの時である。例のごとく日経(オレンジ)も1ヶ月程度付き合いで下落を演じた。2014年のエボラ熱パンデミックの時も一瞬はリスクオフを招いたが押し目で終わった記憶がある。特に米株対比で割安化が目立つ香港株について、今回もよほど社会不安を招くレベルでなければ、またパンパンになっているシステマティック勢のグローバル株ポジションを突っつかなければただの貴重な押し目に終わりそうだが、果たして。

こちらのサイトでは中国語版だが最新の公表情報が収集されて中国地図にマッピングされている。赤が感染確認で黄色が感染の疑いが出た省である。ただどうも致死率は高くないようで、確定者が出ても重症化しているとは限らない。どこかのタイミングで閲覧不能になるかもしれないが、それまでは役に立ちそうだ。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。