先週のS&P 500は中国でのコロナウィルス騒ぎもあって週前半から上ヒゲ陰線日足連発で重く、木曜には一回下げてから下ヒゲ陽線でアク抜けしたかと思いきや、金曜には木曜の下ヒゲを下にブレイクして偽アク抜けとなった。その結果、週足も綺麗な上ヒゲ陰線となった。
株安の背景として一応「コロナウィルスの米国上陸」が挙げられていたが、では上陸しない可能性があったと市場は思っていたのか。次にここまで株を持ち上げてきたFedのバランスシートがレポ残高の減少によって減ってきたという話もある。そんなのテクニカルなブレではないかという見方もできるが、Fedのバランスシート(Total Asset)の増減を見てパブロフの犬のように指数を動かす集団はどうもいるようだし、体感としてもこの増減トレンドに逆らうとけっこうきつい。
ところで、久々にカナリアがワークしている。日足をカウントすれば分かるように、株がコロナウィルスネタで一喜一憂している間からハイイールド債ETFは一直線に売られ続けている。特にS&P 500の木曜の下ヒゲ陽線が偽アク抜けであったのはHYGを見れば一目瞭然であった。債券市場はいつもよりも少し長い、10月初頭並みの規模の資産価格の調整を見込んでいるのではないか。ハイイールド債投資家がコロナウィルスをディーリングするとは考えにくいので、金曜の株式指数クラッシュはヘッドラインが誘発したというより、ハイイールド債の調整を含む「単なる資産価格そのものの調整」の一環ではないか。
金曜の陰線は12月初頭以来のがっつりしたものとなったが、それでも下げ幅は前日比-0.9%となり、「どちらの方向にも1%動かなかった」記録はまだ続いている。VIXの方ももう一羽のカナリアと比べて動きが鈍いが、それでも金曜の下げだけはそれまでの小さな日足下げよりも重く見ているようだ。
というわけで、今回の調整は10月以降の全てのそれよりやや大規模なものになる可能性を見ている。先週までの感覚で「どうせバブルになるので少しでも押したら買い」というわけにはいかないだろう。先週高値の3337は久々のレジスタンスとなる。テクニカルには一直線に上がってきたのでサポートはない。ではどこで押し目を拾えばよさそうか。
BAML SP 500 EPS & PE scenarios pic.twitter.com/DoZsUnxYGm
— LongConvexity (@LONGCONVEXITY) January 24, 2020
本ブログはS&P 500のバリュエーションは割高であり「今から飛び乗るとどこかでまた飛び降りることになりそう」としてきたが、そんなことは万人の目に明らかであり、それを無視して上がってきたのが今までなので、今回の調整が「割高でない買いやすい水準まで」のものになるとも期待していない。
かなり機械的な計算ではあるが、
— 藤代宏一 F Koichi economist (@KoichFuj) January 25, 2020
2007年5月以降のデータに基づいて
現在のISMとPM Iに整合的な
株価を試算(単回帰)すると、
ISMに対応するS&P500の水準は2800pt、PM Iは2900pt近傍となる。 pic.twitter.com/NwzAQi1tG8
たとえばISM/PMI相当なら2800〜2900、フォワードPER=17なら3000となるが、そのゾーンまで突入するのは難しそうだ。10月と同じ5%調整なら3100程度となる。
SARSの時と同じ10%調整でようやく3000に届くが、当時と比べて指数はテックのウェイトが増えたこともあって動きづらくなっている。今日までの展開を考えるとどんどん安値を売って儲けられる気もあまりしない。基本的に、どこまで深く押し目を拾えるかだけの問いである。本ブログのイメージする「割高なのでせいぜい押し目買いから細々と引っ張って」きただけならこの程度の調整で致命傷を負うこともないだろう。コロナウィルスのヘッドラインを追いかけるよりも、もしもう一つの隠れていた下げ要因が世に出てきた時に心を折られないように備えることの方が重要そうだ。
唯一下げを加速させることができそうなのは株エクスポージャーがパンパンになった、リスクパリティをはじめとするシステマティック勢である。VIXショックの時と異なり金利上昇がきっかけになることはなさそうなので、クラッシュを誘発するには誰かが強引にVIXを20〜22まで持ち上げる必要がある。個人的にはとてもこの絵を見てみたいのだが、本当にそこまで期待しているわけではない。逆に朝起きてVIXが22をブレイクしていたら押し目買いに飛びつく前に一呼吸置いた方がよさそうだ。
S&P 500は引続き座して押し目待ち
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S&P 500は売りをこなしながら更に上値を試す
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S&P 500が利下げ織込みすぎから押すな押すなに
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。