ISM NY 
 1月分米国ISM製造業PMIが大変良かったのに続いて2月分ニューヨーク連銀製造業景況指数(俗称NYエンパイアステイト)も大変良い結果となった。ISM製造業は1月後半のアンケートなので新型コロナ問題はまだ十分に盛り上がっておらず、寄せられたコメントの中でもごく一部しか新型コロナによる影響に触れていなかった。なので慎重な債券投資家を中心にISM製造業を新型コロナ問題勃発前のバックミラー指標にすぎないと見る動きが優勢であった。中国工場の稼働停止がグローバル企業のサプライチェーンに悪影響を及ぼすに違いないので、来月のISM製造業を見ないと景気回復を信じられない、ということである。そこに被せてきたのが絶好調のNYエンパイアステイトである。

"The survey is sent on the first day of each month to the same pool of about 200 manufacturing executives in New York State, typically the president or CEO. About 100 responses are received. Most are completed by the tenth, although surveys are accepted until the fifteenth."

 こちらのサーベイは2月1日にニューヨーク州の製造業約200社の経営層に送られ、回答締切が15日であるものの大半の回答は10日までに寄せられると公式サイトで説明されている。WHOの緊急事態宣言は1/30には出されているので、こちらは新型コロナ問題が勃発した後のサーベイということになる。
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 中身を見ても全面的な回復である。新規受注は早速2018年の天井に近づいている。
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 ダンスケ銀行はNYエンパイアステイトは日頃からボラタイルであることに触れつつ、ISM風に加重平均するとISM製造業の60近辺と整合的になる水準であるとしている。
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 サーベイだけ見ると新型コロナが米国の製造業に大した影響を与えると米国企業の経営層は思っていないようである。まだ(シカゴPMIが表現したように)ボーイングの減産の方が大きい。1/15にフェーズ1締結によって一段落した貿易戦争は更に大きい。図は1/23発表のカンザスシティ連銀製造業景況感と1/29発表のリッチモンド連銀製造業指数であり、それまでよく連動していたのが一週間遅いリッチモンドだけが大きく反発している。そこに好調なISM製造業とNYステイトエンパイアが続いている形である。やはりフェーズ1締結が全米で幅広く企業活動を正常化させたことは間違いなく、その影響は新型コロナによっても打ち消されていない。

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