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 先週のS&P 500は毎日100円幅の上下を繰り返した挙句に大きくクラッシュした。本ブログは200週SMAに囚われすぎて「2630 -3100レンジ」などをぶち上げたが、相場は2630を大きく下抜けて2478までやってしまった。挙句の果てに2630は帰りでも特にレジスタンスにならず、ただの誰も通過できる平地であったようだ。「しぶとかったドル円もようやくフラッシュクラッシュしたことだし、ハイイールド債までクラッシュしたら相場は一巡したと認めてよいはずだ」としていたが、その後更に投資適格債のクラッシュが来たのは計算外であった。「さすがに2700代は売り場ではないはずだろう」とした後に一時2700代から2900近辺までの反発がやって来たが、これを「再び拾ったナイフの捨て場」とした3100手前と呼ぶにはやや遠かった。幸い、レンジ下限としていた2630には金曜帰って来ており、そこの手前での押し目買いも一応助かってはいる。結局変に決め打ちするのは間違いであり、最初のVIXショックの記事で記していたように傷付いた相場が落ち着くまで「値幅より日柄」であった。

 「新規買いを入れるならハイイールド債なりVIXなりが落ち着くのを待てばよく、先物のサーキットブレーカー発動が話題になる中であえて急いで飛び付く必要もなさそうだ。本当は2630〜3100レンジと宣言したいところだが、VIXが50もあるようではレンジ逆張りを試みるのは論理的にはやや分が悪い」としていたが、ドタ勘レンジよりも論理が勝ったようだ。「アドレナリンが出るような激しい上下相場は安定の敵である。リスクパリティを持ち出すまでもなく現代ポートフォリオ理論によると激しい値動きでアドレナリンが出ない投資家の方が多数である。」木曜には日替わりの激しい上下に振り回された投資家がいよいよ耐えられなくなったようだ。また米金利の低下も限界を迎えるにあたり、それまで株の損を米国債上昇で誤魔化していたバランス系ファンドがいよいよ顔面着地した。
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 ファンダメンタルズ的には米国の欧州からの入国制限など、これまた本ブログが中国の回復経験からつい軽視してしまった新型コロナ関連のバッドニュースが降り積もった。週末になっても欧州での人的移動の制限拡大などバッドニュースは続いている。これに対してFedの資金供給、欧州の銀行のカウンターシクリカルバッファ撤廃、米国の国家非常時宣言に伴う財政支援など政策面の支援策が立ち向かう形となり、恐らくウィルス騒ぎが一巡すると金融緩和と財政出動だけが残る時期がやって来て壮大なバブルになるのではないかと思われるが、耐え抜いた後のあまりに大きなリターンの期待がグリードさになってS&P 500の激しい上下チャートの背景にもなったはずだ。しかしその一巡があまりにも遠かった。このグリードさの残骸は上昇トレンドへの素早い復帰を阻害するだろう。3/18にはFOMCが控えており、先日に続いて少なくとも50bpの利下げが織り込まれているが、果たして満額回答が出てくるのか。
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 バリュエーションは2014年以来で見ると底値近辺である。VIXで見ても今回のショックのインパクトは2014年以来のあらゆるショックを上回っており、景気後退リスクを考えると多少安くても仕方がない。しかし個人的には雇用が減らない限り、またグローバルの生産力が(生産停止や分断で)年単位で長期的に阻害(その場合はインフレが伴う)されない限り、多少経済活動が後倒しになってもリセッションには繋がらないと考えている。
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 ポジショニング。もはやほとんどの参加者は軽いだろうが、流動性の枯渇でそれどころではないはずだ。先々週金曜の第一波がリスクパリティのセリングクライマックスであったなら先週木曜の第二波は漫然バランスでリスクを潰したつもりのマルチアセッターのセリングクライマックスだろうか。カナリアのVIXは毎日の日足鯨幕に正当化されてしまったこともあってどんどん調子に乗って高値を試しており、リスクパリティの売りが出涸らしになったとは言っても、少なくとも腰を据えて上値を追い掛ける行為を正当化しない。HYGはほぼS&P 500とシンクロしており、あまりインプリケーションがない。

 テクニカル。週足的にはヘッドアンドショルダーがまだワークしており、右肩の3130は遠いレジスタンスとなる。サポートとしていた2630は平地であった。しかし日足的には木曜の上ヒゲ陰線を金曜の巨大な下ヒゲ陽線で被せており、一旦は下落トレンドが終了した形となる。従って2480 -2600の間は日足程度の時間軸での買い下がりをチャレンジする価値がありそうだ。一方で2480までも遠いため、既にリスクを取りすぎてしまった参加者にとっては現水準より上は整理の機会となる。レジスタンスはヘッドアンドショルダーのネックラインにあたる2850近辺か。先に上値を試した場合は再びその手前がポジション整理の好機となりそうだが、もし先に2480 -2600の間で一回二番底を付けてから2850まで来たら何かのレジームチェンジがあったのかもしれない。ただそれでも短期的に3130を超えるのは至難の技だろう。VIXが高止まりしている間は上値を追いかけない方が安全そうだ。
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 にしても今回の下落のペースはベアマーケットの中でも際立っている。これくらいの下落幅に耐えられないようではリスク管理に問題がある、と説教されることもあるだろうが、幅はともかく下落ペースは現に前代未聞であり、びっくりしたところで責められるべきではない。全体像として今起きているのはあくまでも流動性にあぐらをかいていたパッシブ x自称クオンツのマルチアセッターの過剰なリスクテイクからの、VIXや特定セクターに怯えて押すな押すなとなっている過剰な萎縮への移行にすぎず、アホらしいポートフォリオ・インシュランスの化けの皮が剥がれたブラックマンデーの後に近い展開にあると考えている。それが異常に速い調整ペースと整合的だからである。

 従って例えば不況時のジョブリスクをヘッジするために株式投資から離れたりショートをベタッと保有するほどの事態は来ていないと思うが、反対に落ちるナイフを掴みに行く時も十分な余力を残しておきたいものである。3100, 2850と戻り高値でそれぞれリスクを外せた参加者は既にレイ・ダリオを含む世界中の投資家の大半より有利な立ち位置にいるため多少羽目を外しても許されるだろうが、後で「もう少し耐えれていれば」というところでポジションを切る羽目にならないように資金管理には十分な注意を払うべきであり、VIXが恒常的に50を超える「ニューノーマル」にふさわしいリスクテイクに抑えるべきである。

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