



先週のS&P 500は週次値幅400ドルと、再び上下に大きく動いた。週明けには期待されていた米国の2兆ドル経済対策法案が上院で一度は否決され、民主主義の形式美を見せつけてくれた。リーマンショックの時の金融安定化法と同じ展開であり、「米国の総賃金は9兆ドルちょっとなので2兆ドルは額としては十分に見えるが、議会で採決されるまでは油断できない」としていた通りとなった。これを受けてS&P 500は一時2200すら割り込んだ。月曜の夜にはFedが無期限債券購入を発表し、米株は月曜の夜こそ反応しそびれたものの火曜以降は大陽線が続き、週間では「ここ10年余りで最大の」10%上昇となった。ダウに至っては史上最速のベアマーケット入り(37%調整)から史上最速のブルマーケット入り(21%反発)を演じた。

経済対策法案は結局3/25に上院、3/27に下院を通過して無事に成立した。これにより先週の記事にて「雇用は一時的に激しく落ち込むのは既に織り込まれつつあるように見え、またそれによる総収入の落ち込みは短期的には(通れば)財政出動でカバーされるはずなので、そこで改めてクラッシュというより、もしそれまでに米ドルの流動性が諸施策で回復していれば米金利低下〜ゴルディロックスが戻ってくるだけの可能性もあり、失業そのものをあまり過度に恐れる気にはならない」としていた通り、木曜に発表された328万人の新規失業はマーケットに全く悪影響を与えなかった。
テクニカルはこの往復のおかげでだいぶ明瞭になった。二度も想定レンジを下方にブレイクされた挙句に先週は「ポジショニングとテクニカルは慎重になってしまう」としたのが更に曲げる形となったが、懲りずにレンジを設定していこうと思う。買い疲れにより金曜の日足は上ヒゲ陰線となった。「2630の週足200SMAは昔から相当重要だったらしく、やはり週足200SMAの下での推移では下向きの力がかかりやすそう」としていた「重要な」週足200SMAは2640まで一時上昇したが、そこで指数は頭を一度抑えられた。一方その手前の週足上ヒゲレジスタンスの2560はブレイクされており、2本のキャンドルを合わせて週足は陽転となる。とすれば来週は2200 -2640のレンジを意識する形となるか。2500後半は一旦ポジション整理のチャンスとなる。一方、2640を再び上にブレイクできた場合は週足ヘッドアンドショルダーのネックラインの2850までは上値余地ができそう。2200はさすがに遠いがレンジ下半分は再び買い場となるだろう。もっともこれらは先に下を試してからの上のケースを想定しており、先に上を試してからの下は拾いづらい。


ポジショニング。ドイツ銀行によるとCTAは既にマッシブに近いネットショートまで突っ込んでいる。中期的には少なくとも0までは買い戻さないといけないはずだ。ロングショートやクオンツファンドはネットどころかグロスポジションすら縮小させている。中東勢の解約については、たとえばサウジアラビアの歳入は30兆円程度であり、うち18兆円程度の石油収入が減ってSWFの取り崩しで賄うにしても年間数兆円単位のリクイデーションにすぎず、FedのQE総額と比べると大したことない。従ってここからファンダメンタルズが悪化してもポジション解消の売りに押される可能性はやはり高くない。

ファンダメンタルズ。Fedの無期限QEと2兆ドル経済対策のおかげでほとんど意味のある議論はなくなった。もちろん新型コロナの米国での流行は恐らく当局の想定よりも激しく、週末を中心にバッドニュースの方が出やすいという足元の流れは続くと思われる。また長期的にも自社株買いの沈静化、アグレッシブすぎたBSの修復やサプライチェーン再構築による収益性低下などで指数のアップサイドは非常にゆっくりになる可能性が高い。セクターや企業の信用力による選別も改めて始まるだろう。しかし、だからこそ後で上値余地がなくなった後の高値を欲走って変に追いかけることにならずに済むように、安値圏ではきちんとポジションを構築しておきたいものである。
流動性については、米ドルの枯渇に伴う悪いドル高が解消されつつある。「しばらく米ドルの流動性がキーになる。具体的にはいつLIBOR(LIBOR -OIS)が下がってくるか。CP利回りも監視したところだが探しづらい。補助的にはドル円ベーシススプレッドも監視対象になるだろう」としていたが、どうも使えない、間違った指標に目を付けていたようだ。FedのCPFFがあまり強力でないこともあってLIBORはいまだに毎日上がっている。しかしクレジットも株もすっかりそれを無視するようになってしまった。ドル円ベーシスは週半ばからタイトニングを始めておりこれだけはちゃんと参考になった。


HYGとLQDの兄弟はひたすら買い戻しと果敢な高値追いである。LQDは既に半戻しを達成している。このあたりは株のバリュエーション問題には無縁なので、ひたすら腰が引けてポジションを復元できなかった人間を嘲笑っている。改めてバッドニュースが注目されることになっても、それはETFごとのぶん投げというより、あくまでも資産内での再選別という形になるだろう。

一方で全く安心感がないのはVIXの方である。毎日の激しい鯨幕はリーマンショックを上回る激しさであり、それがVIXの高騰を下支えしている。それまでスパイラル状にボラティリティを押さえていたVol売り戦略は壊滅したので世の中へのガンマの供給が急に足りなくなり、指数が上がっても下がっても追いかけざるを得ない勢が多そうだ。その結果としてのボラティリティの高止まりは「腰を据えた」資金流入を阻んでいる。本ブログが三連発で想定レンジをぶち抜かれたように、どちら方向への動きも思ったより進んでしまう可能性があるわけだ。

しかし、それでも来週は懲りずにレンジ内の押し目待ちとなる。バリュエーション的に面白くなくなっても、QEに逆らうのは気持ちよくない。クレジットは既に盤石になりつつあり、流動性もドル安方向に動きつつある。時間単位はともかく日単位ではヘッドラインに慌てて付いていく必要はなさそう。

日柄で言うと、ここもと(新型コロナ関係のバッドニュースが入りやすい)週末が弱く火曜が強い傾向があるようだが、果たしてこの振られ方がどこまで続くか。
S&P 500はVIXが50を超えるニューノーマルへ
S&P 500の持込み可試験はそろそろ終わる
S&P 500は教科書二冊持ち込み可の試験
S&P 500は再び天井サインが点灯
S&P 500は新高値に釣られず様子見
S&P 500のバーゲンセールを期待
S&P 500は10月以来の調整入り
S&P 500は引続きメルトアップ
S&P 500は引続き座して押し目待ち
新年のS&P 500
S&P 500は年末を前にメルトアップ
S&P 500はユーフォリアか出尽くしか
S&P 500は一瞬だけ調整を見せる
S&P 500は外部環境を最後まで無視し切れるか
S&P 500は高値圏でグダグダ
S&P 500は最高値でこそ長期投資を始める流れに
S&P 500は売りをこなしながら更に上値を試す
S&P 500は本当に新高値に売りなしに
S&P 500は万人の期待に反してサプライズ上抜けへ
S&P 500はやる気なくレンジ継続
S&P 500はレンジを信じた者を救う
S&P 500はISMで振り落としをかける
S&P 500はトランプ政権のせいですっかりクソゲーに
S&P 500は7月高値を前に伸び悩む
S&P 500は全ての懸念の壁を駆け上がる
そしてS&P 500はレンジ上限をブレイク
S&P 500は一気にレンジ下限が危うい形に
S&P 500は雨が降って地合い固まる
S&P 500はリスク非対称なレンジを作る
S&P 500は貿易戦争再開でどこまでクラッシュするか
S&P 500はひたすらクラッシュ雨乞い
S&P 500が利下げ織込みすぎから押すな押すなに
S&P 500が結局浮力に負けてしまうか
利下げサイクル開始でドル安に備える局面が近付くか
S&P 500が意外な粘り強さを見せる
下抜けてもやはり煮え切らないS&P 500
新高値に売りありS&P 500の煮え切らない調整
S&P 500の新高値に売りありの法則
Fedハト化でもS&P 500の勢いが止まる
S&P 500が最後の関門を突破
S&P 500がH&S右肩近くまで一気呵成
S&P 500の重要な水準が向こうからやって来る
S&P 500ここから上はさすがに前途多難
ようやく貿易戦争の悪影響の織り込みが終わる
S&P 500のテクニカルの続き
全てがかかっているS&P 500の右肩
米株指数を純粋なテクニカルで見る


ポジショニング。ドイツ銀行によるとCTAは既にマッシブに近いネットショートまで突っ込んでいる。中期的には少なくとも0までは買い戻さないといけないはずだ。ロングショートやクオンツファンドはネットどころかグロスポジションすら縮小させている。中東勢の解約については、たとえばサウジアラビアの歳入は30兆円程度であり、うち18兆円程度の石油収入が減ってSWFの取り崩しで賄うにしても年間数兆円単位のリクイデーションにすぎず、FedのQE総額と比べると大したことない。従ってここからファンダメンタルズが悪化してもポジション解消の売りに押される可能性はやはり高くない。

ファンダメンタルズ。Fedの無期限QEと2兆ドル経済対策のおかげでほとんど意味のある議論はなくなった。もちろん新型コロナの米国での流行は恐らく当局の想定よりも激しく、週末を中心にバッドニュースの方が出やすいという足元の流れは続くと思われる。また長期的にも自社株買いの沈静化、アグレッシブすぎたBSの修復やサプライチェーン再構築による収益性低下などで指数のアップサイドは非常にゆっくりになる可能性が高い。セクターや企業の信用力による選別も改めて始まるだろう。しかし、だからこそ後で上値余地がなくなった後の高値を欲走って変に追いかけることにならずに済むように、安値圏ではきちんとポジションを構築しておきたいものである。
流動性については、米ドルの枯渇に伴う悪いドル高が解消されつつある。「しばらく米ドルの流動性がキーになる。具体的にはいつLIBOR(LIBOR -OIS)が下がってくるか。CP利回りも監視したところだが探しづらい。補助的にはドル円ベーシススプレッドも監視対象になるだろう」としていたが、どうも使えない、間違った指標に目を付けていたようだ。FedのCPFFがあまり強力でないこともあってLIBORはいまだに毎日上がっている。しかしクレジットも株もすっかりそれを無視するようになってしまった。ドル円ベーシスは週半ばからタイトニングを始めておりこれだけはちゃんと参考になった。


HYGとLQDの兄弟はひたすら買い戻しと果敢な高値追いである。LQDは既に半戻しを達成している。このあたりは株のバリュエーション問題には無縁なので、ひたすら腰が引けてポジションを復元できなかった人間を嘲笑っている。改めてバッドニュースが注目されることになっても、それはETFごとのぶん投げというより、あくまでも資産内での再選別という形になるだろう。


一方で全く安心感がないのはVIXの方である。毎日の激しい鯨幕はリーマンショックを上回る激しさであり、それがVIXの高騰を下支えしている。それまでスパイラル状にボラティリティを押さえていたVol売り戦略は壊滅したので世の中へのガンマの供給が急に足りなくなり、指数が上がっても下がっても追いかけざるを得ない勢が多そうだ。その結果としてのボラティリティの高止まりは「腰を据えた」資金流入を阻んでいる。本ブログが三連発で想定レンジをぶち抜かれたように、どちら方向への動きも思ったより進んでしまう可能性があるわけだ。

しかし、それでも来週は懲りずにレンジ内の押し目待ちとなる。バリュエーション的に面白くなくなっても、QEに逆らうのは気持ちよくない。クレジットは既に盤石になりつつあり、流動性もドル安方向に動きつつある。時間単位はともかく日単位ではヘッドラインに慌てて付いていく必要はなさそう。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。