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 一ヶ月前に「中国国内の新型コロナ患者数は安定期に入った」と遠投記事を投げてから修正を加える必要もないので中国経済に全く興味を示して来なかった本ブログだが、一応中国経済のアップデートをしてみようと思う。中国経済のデータの透明性は世界でも稀に見るほど透明度が高く、中国系、日系、外資系を問わず投資銀行が毎朝のようにアップデートしているが、その内容は(新型コロナのアンダーコントロールを受けて)「回復しつつあるがそのペースは緩慢」に尽きる。世の中の大半の投資家が一様に十種類以上の日次(高頻)データをチェックしているという過剰に透明になっている中でクオンタテイティブに何かやろうと思ってもエッジが出なかっただろうが、会議で中国経済とビッグデータを分かっているワタシアピールには十分なったであろう。

 中国における感染収束に伴い各地の都市封鎖は解除が進んでおり、震源地となった武漢でも4/8の封鎖解除が決まっており、それ以降の武漢発の北京行きを除く航空券が買えるようになっている。1/23の武漢封鎖から2ヶ月半程度である。発電所の日次石炭消費量は例年の9割まで回復してきた。
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 トラック輸送量は2019年ピークの8割まで回復した。
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 しかし、当然ながら回復度合いは業種によってばらつきが大きい。不動産の販売面積は例年と比べてつい先日まで伸びが非常に緩やかであった。
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 自動車売上げの前年比も一時期からは回復しているが巡航速度はまだ遠い。
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 映画館の収入に至っては前年同期間の0.02%までしか回復していない。 
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 清華大学が統計した都市部オフィス街の人出は通常の6割程度に抑えられており、また農民工の工場復帰率も7割程度となっている。しかしこの見かけの回復度はそのまま生産性の回復には繋がらない。サプライチェーンの一箇所でも生産に復帰していないと他の上流や下流の企業が出社してもやることがない。

 前回の記事では「今後はこの安定期に入った統計結果を受けて企業の営業再開が続々と始まり、またまだ帰省先から帰ってきていない労働者が戻って来る(もっとも大都市に帰ってきたらまず14日間の自宅待機が待っている)。それが二度目の症例増加に向かうきっかけとなるかどうか」としていたが、どうも生産活動の再開に伴う二度目の症例増加には繋がらなかったようだ。もし繋がったとしても再開を急いだ首脳部の判断が誤っていたことになってしまうので隠蔽されるだろう、という憶測もあり得るが、既にこの件で信用が地に堕ちている当局が人命を賭けて再び隠蔽するのはさすがに勇気がいるだろう。代わりに、海外からの帰国・入国者によるウィルスの持ち帰りが問題となった。特に中国政府の「海外が危険であり中国は新型コロナの抑え込みに成功して安全である」というプロパガンダは(国際社会が黙殺する中)留学生や華人の大挙帰国というアホらしい事態を招いている。ウィルスの二次持込みを受けて中国政府は3/28に外国人の中国ビザ効力の一時停止、つまり外国人の中国入国禁止を発表した。留学生の帰国も禁止こそできないものの、航空会社の中国発着の国際便数の制限などによって有形無形に妨害している。結局、数ヶ国が先に収束させても、他国も収束するまで人の移動は再開できないのである。物流はともかく、人の移動の正常化はだいぶ先になるだろう。
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 「完全な制御不能な状況に陥る可能性は大幅に減っており、それが今後あるとしたら中国というよりも中国以外のどこかで起きるのが先ではないかと思われる」としていた通り、中国は総陽性患者数で欧米諸国に次々と追い抜かれている。これは中国が全件検査を行っておらず(少なくとも武漢ではそれどころではなかった)無症状陽性を放置してきたためでもあり、割り引いて考える必要がある。前回の記事でも記した通り「8万人の外では大量の無症状陽性が病院の外をウロついている」ことには変わらないだろう。しかし、それでも武漢でキャパオーバーの洗礼を受けた医療体制が温存されている限り、やはり多少の無症状陽性からの再感染はあっても再び爆発的に感染が広まる可能性は高くない。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。