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SPX DailySPX Weekly
 S&P 500は二週間で激しい行って来いを演じた。良かった雇用統計を受けて先週は6%近い急騰となったが、今週はそれをそっくり吐き出してしまい、雇用統計後の高値圏の4日間はアイランドとして取り残された。ずっとキーポイントとしていた3140は行きでも帰りでも窓としてワープされてしまった。先週の記事では「ここまで一直線のロングランをやってから3140をブレイクして3140をブレイクしたのでさあ最高値更新というのもさすがに息切れしそう。ファンダメンタルズの好材料も出揃ったことから簡単な一方通行が終わるまで長くないだろう」としていたが流石にわずか一週間で押し戻されるとは思わなかった。「ポジショニングが再び悪化する時間帯までは押してもたかが知れていると思われる」も外れた。米国の一部の州で感染が再び拡大していることなどが材料になったようだ。なおその傾向は週末になっても続いている。
 
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 雇用統計のおかげもあって足元の経済指標はリスクオンを正当化する方に傾いている。従って足元は割高でも二番底や底割れの可能性は低下しつつある。一方、FOMCにより先週の記事で軽視していた金利の上振れによる株調整リスクは低下したが、そこで示された経済先行きへの慎重な見方は週後半の株安を正当化した。
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 さてポジショニング。月初の記事で「全員参加ショートからセンチメントが回復して一部の参加者がショートカバー中」としていたが、とりあえずシステマティック系の参加者に関してはDBが追認している。1枚目からシステマティック戦略全体、Volコントロール戦略、CTA戦略、そしてリスクパリティ戦略の順となっている。興味深いことにリスクパリティとCTAは(一部で期待されていたであろうにもかかわらず)断固として株の買い戻しには動かず、一方同じボラティリティを見ていてもリスクパリティより足が速いとされるVolコントロールは一足先にポジションを極小から積極的に復元している。
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 野村クオンツのCTAポジショニングは前回見かけた時はナスダックL vs他のSだったのが全指数水面上に浮上している。ここからロングを平均的な水準まで復元させたいかどうかはともかく、少なくとも喫緊に踏むべきショートはなくなったようである。
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 GSのセンチメントインジケーターもポジショニングが一気にロング域まで戻ってきたことを示唆している。前回の記事で「ワクチン騒ぎから上方脆弱性に気付いた時から始まったファンダメンタルズ重視勢の踏みはそろそろクライマックスに達したと思われる。ここから株ショートを張る説明はファンダメンタルズ的には難しくなっている」としていた通り、ショートの整理はだいぶ進んできたようだ。ここ数週間と違い機関投資家のポジショニングはもはや上値追いを正当化しない。
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 そして押し目があってもなくても株式市場に激しい資金流入が続いているのが個人投資家向けプラットフォームのRobinhoodである。図はS&P 500連動ETF「SPY」のRobinhoodユーザー保有額である。こちらが誰もが納得しなかった激しいラリーを主導して上の機関投資家達を踏み上げた力の正体であるが、チャプター11申請企業の株を買い上げたりしていてあまりスマートマネーとは言えない。しかし彼らの原資の一部は景気対策の給付金であり、いわゆる過剰流動性相場の様相を呈している。もちろん畢竟スマートマネーではないので最終的には彼らは損する可能性が高いし、過剰流動性相場の後には期待リターンの低い焼け野原となるので長期投資では決して巻き込まれてはならないが、かと言って下手に漫然とショートで立ち止まると無限に湧いてくる買いに押し流される危険性が残る。過剰流動性相場が反転するきっかけとしては、多くの参加者が他所で地雷を踏んで損失を出してアニマルスピリットを失うか、数ヶ月後に給付金が止まるのが現実的になってくるか、あたりだろうか。
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 先週金曜の株のラリーを黙殺したカナリア勢は、今週は特にVIXが主役となった。週明けから指数が堅調でもVIXは毎日上昇を続け、木曜にはついに30を突破して40まで吹き上がった。「過去にもしつこい上げはあったが、それらのケースはじり上げでありここまでの急騰ではないため、VIXも「上がって指数を再び崩す」ほどではないにしろ、10台に突入していくような低下は見せていない」にはヒントがあったようである。「ただテクニカルにショートはこれまで以上に危険にはなった」としていたが、結果的にはVIXを注意深く観察すればショートのリスクは低かった。VIXが40台から30割れまで低下したのを見てポジションを構築したvolコントロール戦略は再びポジションを落とさなければいけないだろうか。少なくとも木曜にVIXがぶち上がった後の金曜に関しては、たとえ日本市場などが押し目買いラリーに見舞われてもVIXが40近辺で推移したまま高値をグイグイ更新していくのはお腹を壊したままマラソンを走るようなものであったことは想像に難しくない。VIXが再び上がってしまったので警戒されていたリスクパリティの買い戻しも更に遠ざかっただろう。もっとも、金曜にはVIXそのものは30台に戻っている。
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 様々なポジショニングがブルベアについてバラバラになっているのもボラティリティの高止まりを正当化する。

 最後に足元で最も使えなかったテクニカル。「週足サポートは引続き2970」はすぐに役に立つと思っていなかったが、指数は2984で跳ね返っており見事にワークしたことになる。5月前半のショートを作りやすかった時期のレンジ上限が2950であったため、残っていたショートがあるとすれば2900後半にとりあえずショートカバーをしない理由はない。週足的には2970サポートは首の皮一枚で生き残っている。一方、雇用統計でギャップアップした水準はアイランドリバーサルとして取り残されてしまっており3200近辺は一気に重くなってしまう。アイランドを背にしたショートが再び入りやすくなり、窓にも届かないと考えたら足元で最もタイトなレンジは2970 -3140となるか。2970がもしブレイクされれば汚いヘッドアンドショルダーとなり3100がレジスタンスとなるが、下に放たれても5月にもみ合った跡がサポートとなるはずだ。例えば4月からのトレンドラインが伸びている2800近辺など。VIXの助けを借りて全てを下にぶち抜いたら流石にマーケットは再びロングに傾きやすくなっているはずなので下に加速しやすくなりそうだが、全てを無視して過剰流動性に押し流されて上がり続けた場合の方が付いて行き方が難しいので、下に抜けたら見捨てるつもりで軽い押し目買い回転スタンスを維持した方がストレスが少なそう。

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