SPX DailySPX Weekly
 先週のS&P 500は急騰から急落と慌ただしい週間となった。週明けから先週に続いて毎日当たり前のように上昇が続いたが、週末に低下していたVIXは再び指数の上昇と共に上昇し始めた。そして先週気にしていた「人間に背景が分かっても機械には一緒に見えるのではないか」が実現したか、VIXがいよいよ30を超えたところで指数もクラッシュし、3600近辺から一時3350近辺まで調整した。ファンダメンタルズ的なバッドニュースはほとんど見つからず、せいぜい春以降の上昇を主導した個人投資家が集まるロビンフッドが当局から調査されたくらいであった。何週間かのやる気のなさの後に先週の記事では「いい加減バブルではあるが日柄的に調整がいずれやってくるにしてもそれまでの値幅は分からずショートは引続き難しい。とりあえず引続き下落したら軽い買いを入れて付いて行くしかないだろうか」としていたが、翌週に早速調整という恥ずかしい結果となった。調整幅については、すっかり離れてしまったので失念しかけていた3355のサポートで食い止められ、3400台を取り戻して週間を引けている。

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VIX
 先週の主役は明らかにVIXであった。S&P 500とVIXは普段ほぼ完全な逆相関であるが、足元で1ヶ月相関が久々にプラスになった。直近で最もプラス域に近かったのはやはりVIXショック直前の2017年年末の上げ相場であった。そして指数がクラッシュするとVIXは38まで上昇した。この水準はコロナショック後で見ると日常的な数字であるが、コロナショック前に当てはめると2018年年末に2割以上暴落した時の高値よりも高い。
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 ではVIXを見ている機械達がどういう状態かを転がっているDBのレポートで確認すると、リスクパリティ(左下)は流石に元々VIXが20を超えるとポジションをカットしていただけあって、VIXがニューノーマルに入ってしまった後のポジション復元は捗っていない。足元ではわずかな自棄っぱちのような復元も見られ、それが恐らく連日の引け間際の上昇の背景にもなっていたが、VIXが30を超えた今はどうするのか。一足早く過去のMAXポジションの8割あたりまで復元したVolコントロール(右下)の方はここから素直にぶん投げに来るか。これらの機械の値動きをまとめたシステマティック勢ポジション(右上青線)は概ねコロナショックのぶん投げの半戻しまできたというところか。VIXが2019年パラダイムの倍に近いので、非常に雑に考えて2019年の全力まで戻るというよりは半分程度のリスクしか取れなくなる、従ってここからは買い上げ再開というよりは掌返しに警戒する時間帯ではないか。もっともそのインパクトは既存ポジションの小ささから純粋なVIXショックである2018年2月の10%よりだいぶ小さいだろう。
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 一方、裁量投資家の方は(2019年後半だけは貿易戦争で悪化するISM製造業に対して貿易戦争の解決を楽観して先取りしていたが)概ねISM製造業を確認しながら株ポジションを積んできたように見える。足元でISM製造業が改善を続ければファンダメンタルズ裁量投資家が下値を支えそうだ。
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 実際、熱狂的に買われた例のバブル5銘柄を除いたS&P 495も年初来プラスまで浮上している。
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TNX
10 year Real
 債券市場を見ると、Fed BSは一時期の縮小を経て再び膨張に転じているので心配なさそう。米金利はジャクソンホールを無事通過して相場の主役から全く離れており、金利上昇で指数を崩される心配を嘲笑ってきた。むしろ先週は指数に先立ってリスクオフの金利低下に転じており指数の良い先行指標になった。しかし金曜の無駄に良い雇用統計にも影響される形で金利は一気に上昇に転じて株とダブル安となった。実質金利も再びジャクソンホール前の水準まで浮き上がって来ている。シーズナリティ的にもレイバーデー明けの9月は金利が更に上昇しやすく、ここからはVIXと共に金利が再び主役に戻ってくるケースにも今シーズンで初めて要警戒になる。

 テクニカルはすっかり忘れていた3355サポートが見事に機能した。先週の指数は上下にヒゲに伸ばしたが、僅差で上ヒゲが長く上ヒゲ陰線となった。3588はレジスタンスとなる。3355は依然サポートとして健在であるが、二度も試したのでもし再びブレイクされると日足ヘッドアンドショルダーとなり天井サインが出てしまう。下ヒゲは下げ初動での押し目買い意欲を示唆するが、相場上昇を引っ張って来たほぼ唯一の要因であるモメンタムが途切れた今、直ちに上値を更新するきっかけもなさそう。週末の指数反発に伴いVIXも30近辺まで下落してきたが、もし休み明けにもう一度VIX上昇と指数上昇の組み合わせが来たら3588を背に果敢に売りとショートをぶつけたいところである。一方で裁量投資家が下値で待ち構えていると考えると下は叩けない。
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 買いエントリーの方は素早い3588再突破が難しい前提でのアップサイドとダウンサイドの兼ね合いとなる。もしヘッドアンドショルダー完成に相成ったら最悪右肩ブレイクで再エントリーできると考えながら大統領選までの日柄を消化する形になるか。水準としては日足200SMAの3100近辺は流石に買い場になるだろう。

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