中国では昨年に続いて旧正月という慣習がなくなりそうな勢いになっている。冬に入って中国北部でポツポツとコロナが発見されては都市ごとロックダウンが繰り返されており、そのまま旧正月の民族大移動が突入すると大変なことになるに決まっているので移動の自粛が呼びかけられている。旧正月の交通機関利用はコロナ前の76%減、昨年と比べても2割減が見込まれている。それでもそれなりの人間が移動することには違いないので、しばらく経って再び様々な都市でポツポツと感染が広がってロックダウンがボコボコ導入されるのだろうか。
中国のワクチン接種は人数で見るとけっこうなペース(2月初頭時点で米国の3500万人に続く3100万人が接種済)で進んでいるが、いかんせん人口が多いので割合で見るとまだまだ薄い。ワクチンの接種ペースは英米のような自前で開発した国が最も速く、次に欧州やカナダといった自前で作れなかったが買える国、更に貧しい国々が続く。中国は自前で開発した形となっているがペースはあくまでも二軍レベルである。旧正月前に5000万人に接種するという政府の計画は未達に終わった。
かつて餓死者を出しても中国より遥かに豊かな同盟国に食糧無償支援を続けていたのと同じように、中国が作成したワクチンの一部を政治的な理由で他の新興国に輸出しないといけない。推測される接種完了予定期間を見ると中国は平凡な一新興国まで落ちぶれている。これは、先進国が免疫獲得後の社会を構想している間も中国のコロナ対策は古典的な(ワクチンが普及していない昨年時点では先進的であったが)断続的なロックダウンを繰り返すことになりそうということを示唆する。
1月のPMIを見ても冬のロックダウン肉弾戦は既にサービス業にやや打撃を与えている。ただでさえ財布がばら撒きを受けた先進国と比べて心もとない上に、人が移動しなければ消費も減る。一方製造業は外需のおかげで好況であり、地方から工場にやってきた出稼ぎ労働者は割増賃金をもらって旧正月中も帰省せずに働いているようだ。どうせ帰省も地方政府から歓迎されない。
生産がブーストして消費がシュリンクする流れはCPIとPPIの温度差を見てもよく分かる。CPIの下落は豚肉生産が2019年の豚コレラから回復してきたことも要因となっているが、コアCPIも2009年以来で初めて前年比マイナスに転落している。肉弾戦が続く限りこの傾向は逆転し得ないだろう。
関連記事
中国の個人向け支援の少なさが可視化される国の個人消費は引続き弱い上に二極分化
中国がインフラ投資主導の刺激策に立ち戻る模様
ポストコロナに供給過多デフレに陥りつつある中国
中泰証券が中国失業率の闇を突っついてしまう
この記事は投資行動を推奨するものではありません。