先週の米株市場は引続き大荒れとなった。金利上昇を受けたグロースセクターのクラッシュは更に悪化したが、クラッシュは一部のセクターに限定され、指数で見ると可動域が3720 -3915と完璧に本ブログが先週指摘した3650 -3950のレンジをなぞった形となる。本ブログの指摘通り3650 -3950レンジを想定して相場を見ていたらストレスすらなかったことだろう。
Nasdaqと長期国債ETFの相関が急上昇していることからも分かるように、指数はほとんど完璧に金利を見ており、株は金利上昇を無視して上昇できるという声は完膚なきまで否定された。月曜は金利上昇が一巡した雰囲気が出ていたので株も上値を試したが、先週の記事で指摘した3930 -3950のレジスタンスの手前で再び反落した。ここで3930 -3950レジスタンスを認識してリスクを外せたどうかで先週の立ち回りはほぼ決まったと言ってよい。先週の記事で「上の方で前のめりになってポジションが重くなったりさえしていなければ3700台の押し目買いにはあまりリスクを感じない」としていた通り、3930 -3950の手前で上手くリスクを外していた場合の3700台は上から下まで現金つかみ取り大会に感じられたことだろう。どんなにファンダメンタルズについて考察を重ねても週足の一本のヒゲには勝てなかった形となる。
パウエル議長の講演で長期金利上昇への牽制が藁をもすがる気持ちで期待されていたが期待外れに終わり、それを受けて米金利が一段と上昇し、指数は下値を掘った。「リスクオフで再び低下するように戻った金利はリスク要因からスタビライザーに変わる」としていたがこちらは外れ、金利の荒れ相場は続いた。個人投資家に人気でバリュエーションが高くなっていたハイパーグロースにはショートでの売り崩しも入っていたようで、一時相当雰囲気が悪くなっていた。ただそれも指数の値幅が拡大されただけであり、指数が高かった時に「金利上昇は関係ない」などと片意地を張らずに外していればどうということはない。
先週の記事は「もし3月に入って下値を更新してくるようなら11月以来の初の複数営業日にわたる50SMA割れに加えて11月以来の上昇コリドーの下抜けとなり、テクニカルには買いが相当不利になってしまう」としていたが、その上であれこれ考えてもテクニカル以外にショートを張る理由がないと結論付けたにもかかわらず、まさに他にテクニカルを見てショートをカチ込んだ参加者がいたわけだ。
野村クオンツが推定するCTAの米株指数先物買いポジションのうち、最もコストが悪い分は一時コスト割れとなった。雪だるま式にロスカットを誘発すると期待するにはまだ他のポジションの居心地がよいが、一旦ポジションを縮小してから再拡大に動くまでにはやや日柄を要しそうだ。
VIXは引続き装填率の低いリスクパリティと同様に存在感がなかった。指数で保有しているシステマティック系投資家にとって耐えられないボラティリティが来たわけではなく、単に個人投資家のポジションが自重で潰れただけである。週末にかけてVIXは25以下まで低下し、ほぼ完全な正常化を示唆した。
NAAIMのアンケートによると機関投資家のセンチメントは大統領選直前以来まで冷え込んでいる。指数ベースでは大した値幅も出なかったが、過熱感は十分に払拭されたと言えそうだ。週末の間に米国の1.9兆ドルの経済対策が成立しており、ここまで値動きが重くなく、かつ一方でセンチメントが冷え込んだ状態で出尽くしとはならないのではないか。
テクニカルには依然3650 -3950継続を見込む。3650 -3690の間の過去の安値を結んだトレンドライン上で先週の下落は止まっている。このトレンドラインが再び割られるようなら日足は大きなヘッドアンドショルダーとなり調整が本格化する可能性が高いが、今のところそれを狙うほどの根拠は見当たらない。Nasdaq総合だけは綺麗な日足ヘッドアンドショルダーとなっており、ネックラインから13600手前にかけては金利上昇を舐めていて持っていかれた参加者の後始末が重しになるかもしれない。バブル再開はS&P 500についてはかねてから主張してきた3950ブレイク、Nasdaqについては13600ブレイクで判断される。とはいえ3950ブレイクで全く新規に付いていくとコストの悪さから値動きに神経質にならざるを得ないので、レンジ内では3650割れでも痛くない程度のポジションを維持してもバチは当たらないだろう。
「金利上昇だけが招く調整幅はリスクパリティの装填率から考えてせいぜいその半分の6%で3710まで」としていたが、結果的に調整幅は先週まででは3720までとほぼ完璧に実現した。もっとも肝心なリスクパリティは売却に動いていない可能性が高く、単に金利上昇で裸で泳いでいた参加者があぶり出されただけだったのでニアピンになったのは偶々である。矢面に立たされたARKがリスクパリティの代わりになるかというと、流動性が不足した当該セクターに対してはリスクになり得るものの、指数に対しては「保有していた流動性が高い大型銘柄を解約対応で売却」という染み出し効果がある程度でリスクパリティほど自己実現スパイラルを作り出す仕組みにはなっていないのではないか。「1ヶ月に一度のガス抜きはバブル過熱を防ぎつつ、炭酸水程度の上昇相場を継続させる健全な調整の範疇で済む可能性が高い」は維持する。
渦中のNasdaq ETF QQQの出来高について先週触れたのは蛇足となった。「出来高だけを見て盲目的に判断するのは危険である」と付け加えた通り、出来高の増加にはキリがなく、出来高が増えたから投げが一巡したと言って逆張りするのは危険である。そんな聖杯は存在しない。
とはいえ週次の出来高で見ると今回の調整は9月よりも激しく、コロナショックや2018年年末の貿易戦争ショック以来の極まり具合となっている。ここからが本番、という可能性はさすがに薄そうである。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。