



先週のS&P 500はついに上に放たれた。3月末から週が始まったがそれまでに取り沙汰されていた四半期末の株から債券へのリバランスは目立たなかった。先週の記事で「今週はリアル月末に当たり、まだフローが残っているかどうかに注目だが、せいぜい3850より上で押し目ができるかどうか、というあたりではないか」としていた通りである。月末のリバランス押しは1%にも満たなかった。
何かと警戒されていたバイデン政権の2兆ドルのインフラ投資計画も31日に発表され、金利は反応に疲れ、半導体補助金ネタを中心に指数が盛り上がるという理想的な反応となった。レバレッジをかけて巨大なロングショートポジションを組んでいたらしいファミリーオフィスのアルケゴスが破綻して野村、CSなどプライムブローカーにも相当な額の実損を与えたが、どうも米銀は概ね無傷でシステミックリスクには発展しなかったようであり、またロング側が不人気な中国株に偏っていたということもあり、界隈の広範囲なグロスエクスポージャー縮小の動きにもつながらなかった。後者についてはGMEショックの時と異なりVIXが全く警戒感を見せなかったところから当時との雰囲気の違いを読み取ることができただろう。

VIXは今まで半年以上にわたって下限になっていた20をついにがっつり割り込んだ。VIXのチャートでトレンドラインを引く行為は嘲笑されがちであるし、ラインを抜けたら走りやすいような類の指数でもないが、「水準」はそれなりに意味を持つ。ヒストリカルにも3月が終わって年次で見ても異常値が消えた形となる。そこまで測定期間が長い戦略がどれほどあるかにもよるが、新年度の始まりと共にリスクパリティの買いが一段と炙り出されても不思議がないVIXチャートとなっている。最近ポジショニングレポートが不作で最新のデータが確認できないが、システマティック勢のポジショニングはようやく長期平均近辺まで回帰していると考えられる。VIXが10近辺まで低下すれば平均水準から長期的な高値圏まで復帰する余地もある。一方、裁量投資家のポジショニングは既にパンパンであり、こちらはどこで縮小の衝動に駆られるかだけが問われることになるが、FMサーベイ的にはまだリオープンで盛り上がったままである。

アノマリー的には4月は株が上がりやすい。2019年までの20年のアノマリーは新年の記事で示されており、2020年のコロナショックが加わると3月がやや弱く見えてしまう。4月は2020年(の反発)入りでも2020年抜きでも非常にパフォーマンスがよい。これは米国の税還付金が2~4月に支払われること、グローバルでは配当が3~5月にやや集中しているのが背景らしい。なおアノマリー的には4月をすぎるとセルインメイに入ってしまう。企業決算への要求は地合い次第と思われる。

NAAIMは少なくとも指数が上抜けする直前の3/31まで全く強気ではなく、がっつり置いていかれた形となる。
テクニカルには先週の記事が記したように週足上ヒゲ陰線の効果が新しい下ヒゲ陽線にかき消されたところだったので上抜けはヒゲが示唆した通りの動きということになる。週足が先々週に続く2本目の下ヒゲ陽線となり、短い下ヒゲだが3940が新たなサポートとなる。具体的なレジスタンス水準こそ一定しなかったものの、2月以来何度も跳ね返された3950 -3980のレジスタンス帯を突き抜けて新高値に売りなしとなった。3940サポートすら生きている間に逆張りショートを張るのは危険である。
2月以来S&P 500より弱かったナスダックはまだ13000 -13600レンジから逸脱しておらず、「上昇トレンドへの復帰」はまだできていない。もっとも逆にネックライン~右肩の間でだいぶ日柄を使って往復したことで結果として、もし13600を上にブレイクできれば巨大なヘッドアンドショルダーを巨大なリバースヘッドアンドショルダーで返した形となり、逆右肩の12800が守られる限り最高値更新を何の疑問もなく見据えることになる。ただ、今この瞬間はあくでも13600レジスタンスの手前である。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。