ISM Manu
 世界経済がコロナショックから回復するにつれて米国の景況感も持ち直しており、直近のISM製造業は64.7と過去にない水準を付けている。コロナショックでは2020年4月分が41.5まで落ち込んでいた。ISMは前月比の景況感なので、一斉にリオープンするとなれば当然一様に先行き期待が高まる。

 ところで3年前の記事でも取り上げたように、ISMは60近辺で天井を打ちやすく、60以上を付けると数ヶ月後のうちに分水嶺である50を割れるかそれに近い水準まで回帰しやすい特徴がある。前月比なのでずっと過熱圏で推移するわけにはいかないのは当たり前だが、にしても急落が続きがちである。この理由は当時もよく分からなかったし、今もよく分からない。

ISM60
 S&P 500のリターンに落とし込んでも、GSの2017年のレポートによると60まではISMが高ければ高いほどその後数ヶ月のリターンはよくなり、一方60を超えると途端に3ヶ月でも6ヶ月でも平均してマイナスリターンが続いた。12ヶ月リターンまで伸ばすとようやく水面上に出るものの、それでも50台の時より遥かに弱い。GSの根拠は企業収益は経済成長に左右され、経済成長が加速するとその後に変調が続くことが多いということであった。
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 ノルデアも同じ点に注目している。1980年代以来の例では2003年12月のケースのみその後株が伸び続け、他はそれまでの株式上昇トレンドがISM =60をきっかけに屈曲してせいぜい横ばいの展開が3~4ヶ月続くことが多い。1987年9月に至っては翌月にブラックマンデーが来ている。この場合はブンデスバンクの引締めがきっかけとなっているが、或いはISM =60は金融引締め懸念に繋がることが多いのかもしれない。2018年8月のケースも同様であり、2018年12月の最後のFed利上げは株の急落を伴うものとなった。
ISM posiitioning
 株価だけでなく、アセットマネージャーとレバレッジファンドの株ポジショニングもISM製造業に概して連動してきたのも有名である。とすればISMが60を超える時間帯では既に全力ロングまで構築されていることが多いのだろうか。
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 米国の長期金利もISM製造業に連動することが多いとされるが、ことISMが60を超える場面では1994年以来金利はあまり上がりやすくない。

 ここまで議論を進めたところであえてひっくり返すと、これらはあくまでも通常の景気サイクルでの出来事である。コロナショックは景気サイクルにしては短すぎ、人為的に経済をロックダウンしてからリオープンしているわけであり、その急激な戻りの中でペースが一時的に過熱したとしても、それだけで景気サイクルが限界まで伸び切ったとは言えない。今回はあまりにもいつもと違う。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。