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 中国のクレジットインパルス伸び率の急減速が至るところで話題になっている。ノルデアが取り上げたように、中国クレジットインパルスの前年比は急激に落ち込んでいる。クレジットインパルスの算出方法は今ひとつ再現しづらいが、一般的に官民双方への新規融資のGDP比とされている。中国の経済成長の資金源が債務調達に依存する以上、クレジットインパルスは成長の勢いを規定する。足元の世界景気回復のうちどれくらいが中国の景気回復に頼っているかは分からないが、少なくともリーマンショック後からコロナ前までの10年間にわたって中国クレジットインパルスはグローバルマクロの母であり続けたようにすら見える。ノルデアによるとクレジットインパルスはグローバル製造業PMIをもエマージング為替をもリードする。
macromarkets
 景況感に先行するのだから、米国の長期金利やS&P 500に先行するとする声もある。もっとも金利や株価指数は他の要因にも左右されるため、こちらは景況感ほど連動が鮮明ではない。

Total Social Finance
 このクレジットインパルスの崖はどこまで本物なのか。融資及びその他のシャドーバンクや陽が当たる資金調達を含めたものであり、概ねクレジット供給とシンクロすると思われる社会融資総額(TSF)のピークは、前年同期比では昨年11月、前月比(3ヶ月移動平均) では昨年5月に観測されている。月次で見ると昨年最も厳しかった時期から戻るタイミングに当たる3月にブーストしたものの、そのブーストは3ヶ月程度しか続かず、すぐに巡航速度に戻ってしまった。足元でも低調さが続いており、コロナ対策の一時的な小さな金融緩和が終わってしまい引締めモードが戻ってきたことを示唆する。とはいえ、前月比と前年比を並べてみると、前年比で滑落が加速しているように見えるのはベース効果による誇張ではないか。とすればクレジットインパルス前年比の滑落を他の指標と並べても必ずしも先行性を持つとは限らない。
Long term
 引締めモードに戻ってきたことは先月の記事でも取り上げているが、一方で融資の中身が悪くないことも取り上げた。この「質のよい」中長期貸出は3月になっても例年対比で伸び続けている。昨年3月のコブは中長期貸出にも見られており、今年分は2月から3月にかけて増えているにも関わらず、前年比にあたるコブとの距離を見ると圧縮されている。先ほどのTSFと合わせて眺めても、絶対値で急減速が見られるわけではない。
M1
 一方、これはクレジットインパルスのピークアウトを否定するものではない。貸してもらったにもかかわらず、企業の手元資金の代理変数であるM1の伸び率も春節ノイズの1月(ベース効果とM2との交換)を除くと昨年11月をピークに減少に転じている。春節ノイズ以外にM1には特にベース効果がなく、昨年中緩やかに伸び率が加速していたM1はやはり昨年秋をピークに緩やかな減速を示している。
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 残念ながら出典不明となってしまうが、中国の金融ストレス指数も2020年の緩和を経て再び引締め方向に向かっていることは間違いない。マクロ政策も刺激後退に向かっている。
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 こちらはモルスタ。ブロードクレジットが引き締まる局面に毎回名前を付けて整理しているが、こうして見ても引き締め局面の方が長い。

 まとめると、冒頭のような単純にチャートを重ね合わせたレポートのような極論は排除されるにせよ、中国のクレジット供給が徐々にコロナ前の引締めスタンスに戻りつつあることは間違いない。とすれば中国主導の景気回復のドライバーは昨年の間にピークを打っていた可能性が高く、それを米国主導にどれだけ綺麗にバトンタッチできるかは別問題だが、少なくとも中国需要を頼りに強気になっている関係者がいるならそれはバックミラー運転と思われる。一方、前例となる2018年頃のデレバレッジ騒ぎも大したリスクオフに繋がらなかったことを考えると、マクロクラッシュに繋がるほどの話でもないだろう。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。