SPX
 先週のS&P 500は一転して4%近くの大幅な調整となってしまった。先週の記事では4130サポートを手掛かりに「下値は固まった」と判断していたのは間違いであり、4130は下に貫通されてしまった。その勢いで指数は4060まで走り、日足50SMAでようやく食い止められて反発した形となる。急落の背景としては諸説あるが、CitiがFacebookとAlphabetのレーティングを引き下げたのがナスダックの弱さに繋がり、その弱さが更にセクターローテーションの範疇で受け切れなくなり指数全体に伝播した形と思われる。更にセル・イン・メイのシーズナリティや5/17の税金支払いといった日柄にぶつかったのも弱さが増幅した背景として数えられるだろう。現に米国上場株がT+2決済である中、5/17の3営業日前に当たる5/12まで売られ続けたのは偶然ではないだろう。少なくとも偶然でないと考えた方が正解だった。
VIX
 12日に発表された米国CPIが予想を上回ったためインフレ懸念で株が売られたとの解説が多いが、モヤッとするのはインフレ懸念そのものが直ちに株式にとってネガティブであるわけではなく、ネガティブに捉えられるとすれば金融政策の変更に繋がり得るところくらいであるはずだが、肝心の長期金利は上昇したもののあくまでも3月以来のレンジ内の推移に始終している。恒常的な20割れから30手前までブローアップしたVIXの方がまだ主犯に近い面相をしている。
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 少なくとも足元ではS&P 500企業のプロフィットマージンは圧迫されていない。実質金利は3月の調整時と異なり低下が続く。インフレ懸念は突拍子すぎて何か本当の背景を隠すための陰謀にすら見える。

DB 
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 ポジショニングについて先々週の記事では「裁量投資家が既にISMを見て最大限までポジションを膨らませていたのが原因でブロックバスター決算の後は利食いに押された」と推測していたが、果たしてDBによると直近では裁量投資家のポジショニングは「最大限」から反落している。一方システマティック勢のポジショニングは急拡大から横ばいに転じただけであり、ブロックバスター決算後の伸び悩みの犯人が裁量勢であったことが明らかになっている。一方、システマティック勢のポジショニング絶対値はそこまで大きくなかったため、VIXが10台から20台後半まで上昇した局面で機械的な投げ売りを誘ったかというと、翌日には指数の反発が始まっておりVIXへのリアクションはあくまでもイントラデーに限られている。
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 一方株と長期国債がシンクロしながら下落したため分散効果が効きづらくなっており、リスクパリティの再出動は抑制される可能性がある。
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 今まであまり気にする必要がなかったショートエントリーも観測されているようである。ゲームストップ事件以来動きが少なかった「最もショートされている銘柄群」のパフォーマンスが足元で悪化が続いており、再びショートを入れやすい局面になってきたことを示唆している。またNasdaq Mini先物の大口ポジショニングもショートに傾いているようである。しかし個別セクターはともかく、指数についてはショートに崩される懸念よりも、むしろいずれショートカバーの燃料になるだけではないか。
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 個人が好きな赤字イノベーション銘柄とHFコミュニティで人気な銘柄群でそれぞれパフォーマンスの不調が続いている。アルケゴス事件以来じわじわとプライムブローカレッジの制限強化に伴うポジション縮小思惑が続いているのか。前者が5/17の税金支払いまで弱かったのは予想通りとして、ここからどうなるか。
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 NAAIMは足元の調整によりコロナショック以来の毎回の調整の底レベルまで低下しており、昨年9月や今年3月程度の調整であれば既に完了したという形となる。GSのセンチメントインジケーターもコロナショック以来の低さまで低下しており、史上最高値近辺で推移する指数の雰囲気とそぐわない。
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 EPSには問題がないので警戒すべきはバリュエーションの変動だけであり、長いベアトレンドが続くとは考えづらい。警戒すべきヘッドラインとしては新たなコロナ変異種が様々な国に上陸してフラッシュクラッシュを招くことだろうか。金利が3月以降のレンジを上に抜けても一波乱ありそうだが、抜けていない時から懸念すべきかと言われると微妙である。

 本ブログでは一貫してセル・イン・メイ、更に5月中旬の税金支払いに注目してきたにもかかわらず、ナスダックのポジション解消が続く中でも避難先の親インフレの金融などに資金が殺到したせいで指数はむしろ高値を更新したのにすっかり惑わされてしまい、アップサイドがないとしつつもベアビューを最後まで維持できなかったのは失敗であった。ナスダック主体で見るとやはりセル・イン・メイと税金支払いにだけ注目していればよかったし、「最高値更新はコミットしているが、過去最高値の水準に近付くにつれてオッズが悪くなる」と描いていた展開からまだ逸脱していない。

 テクニカルにはブログを更新する暇もなく下をやって跳ねてと、すっかり一相場が終わってしまった。確認された50SMAの4060はサポートとなる。ナスダックも元々のリバースヘッドアンドショルダーの右肩は12800サポートが健在である。一方週足では下ヒゲブレイクしたままの状態が続いており、多くの参加者が思っていたより相場が下がってしまったため戻り局面では戻り売りに押されやすくなりそうであり、少なくとも過去最高値付近では高値追いのオッズは悪くなりそう。とすれば広すぎて役に立たないが4060 -4230間でのレンジ推移が続くと見るべきか。結局、シーズナリティ通りになりそうということか。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。