
中国ADRと香港株は依然受難が続いている。何かの間違いでクラッシュしたのでV字回復する、という構図でないことは前回の記事で既に記した。V字回復がなくてバリュエーション・リセットの後の水準を出発点として考えざるを得ないので、たとえばCWEBで言うとその後二割も跳ねた場面があったのも立派な上昇であった。新しいスケール感に目を慣らさないといけない。さて、持ち分が蒸発した世界中の機関投資家はどう考えているだろうか。
中国株への関与が大きい「親中」投資家代表として挙げられるソフトバンクグループの考え方は決算発表会の孫正義社長のスピーチで分かりやすくまとまっている。「6月末を過ぎたあたりで、中国の問題が出てきました。DiDiが上場した直後や、フルトラックアライアンスも上場直後でしたね。その後、AlibabaもTencentもBaiduもMeituanも、中国のハイテク株は今受難のときであります。しかし、長い目で見ればですね、業績は伸び続けているわけですから、もう一度バランスを取り直して、株価も持ち直すと私は信じております」 「我々が中国政府の動きに反対しているとか、そういうことは全く考えてませんし、中国の将来性について疑念を抱いているかというと、それも全く違います。ただ、新たな規制、新たなルールが今はじまろうとしているばかりですから、もう少し様子が固まるまで、我々としては様子を見てみたいと。おそらく1年2年すれば、新たなルールのもと、新たな秩序がもう一度しっかり構築されると私は信じておりますので、その状況がはっきりしてくれば、中国での投資活動を活発に行うということは十分に可能性としてはありますが、ここしばらくは様子を見てみたいということです」まとめると長期的には前向きであるし、また下がった後にぶん投げたいとも言わないが、中国株への新規投資は少なくとも1年程度は凍結されそうということである。
世界最大の機関投資家であるBlackrockは中国資産をエマージングとは別の新しい枠にすべきであり、そして長期的なリターンを見込めるとして、投資家にベンチマーク(例えばMSCI All-World indexなら4.2%)の2~3倍の中国株エクスポージャーを取るように推奨している。今の下落は「一歩進んで半歩下がる」の半歩に当たるという(一歩進んで二歩下がっているのではないかという突っ込みもある)。しかしこれはあくまでも長期的な話であり、では今買い支えてくれるのかというともちろんそういう話ではなく、これまた当局の政策の影響で戦術的には慎重なスタンスを取っている。要するにソフトバンクGと概ね同じ話をしている。

エマージングと切り離すべきだという議論はそれとは別に合理的であり、今のMSCIエマージング指数で中台企業が過半数のウェイトを占める。MSCIエマージングに連動新興国投資信託を購入すると4割以上が中国企業になってしまうので、中国当局の愚行はエマージング指数全体にも迷惑をかける。現にMSCIエマージング除く中国のETFには資金が流入している。
現指導部への信頼感があまりにも崩れて長期的にも中国投資に対して後ろ向きになった場合はこれらの長期投資家も改めてぶん投げることになるだろう。7月に中国ADRを投げ終わったARKにとってはもはや他人事であるがもはや短期的とは区切らず、様々な意味で「中国当局は後退している」と指摘する。となると「引続きオープンマインド」と言いつつ、買い戻す予定があるように見えない。
この静かな「新規投資の凍結」はどうも世界中の機関投資家に共有されているようである。一方、米株など他の株式市場への資金流入は当然続くので、今後も中国株はどの水準を出発点として考えても資金流入の勢いでは負けるわけなのでそこから静かに米株に負けていく、という結論に辿り着くのは難しくない。資金流入が続く資産は、何もない間はじり高が続き、タイミングによっては振り落としが起こるもののすぐにV字回復してまたじり高が始まるサイクルを描きやすい。一方、資金流入が途絶え流出に転ずる資産のチャートはこれを上下逆さまにしたもの、安いのを見て発作的に買われることはあっても買いが途切れるとまたじり安に戻るという図になりやすいだろう。

ADRはともかく、中国本土株への海外フロー(Northbound)そのものは大掛かりな引揚げが観測されていない。これは海外の機関投資家が既存ポジションをぶん投げるところまでは追い込まれていないことを示唆する。グローバルで金余りが続く中、特段引揚げまでしなくても新規配分を凍結して米株などに振り向け続けるだけで中国ウェイトは縮小していく。むしろ中国本土からの香港株投資(Southbound)の引揚げの方が目立つ。

世界中の機関投資家が見てみぬふりをする中で、悪さをするのは価格だけを見て押し目買いを入れた短期投資家である。CWEBのレバレッジなし版であるKWEBは7月のバーゲンセールを見て大規模な資金流入が見られたが、見事に全員逃げ場もなく捕まっている。長期的な投資家は見てみぬふりを決め込むことができても、これらの押し目買い勢は千本ノックのように続く悪材料に耐えられず投げ始めている。資金流入がないので、出来高が薄い中で押し目買い勢の自重で相場は更に潰れていく形になる。7月に流入した資金が全部掃けるには気が遠くなるような日柄が必要そうであり、出来高が急増して新しい傷付いていない投資家がこのポジションを吸収しないと相場は反転しづらそうである。

バンカメが機関投資家を相手に行っているFMサーベイの8月分で、最も混雑したトレードの3番目(11%)に急に中国株ショートが躍り出ている。しかしこれは明らかにチャートを眺めた感想であり(過去も後追いで儲かってそうなトレードを混雑認定する傾向があった)、中国株ショート(≒潜在的なショートカバーニーズ)が溜まっているとは到底思えず、あくまでも押し目買い勢の自重で潰れているようにしか見えない。
なおソフトバンクGに関しては中国株の損失の穴埋めを売りやすい米株の売却で行っているようである。先月はDIDIの損失を埋めるためのウーバーのブロックオファーが話題を呼んでおり、更にドアダッシュも追加売りのブロックオファーが観測されている。保有株と比べれば小さいもののこの会社の負債も巨額にのぼっており、LTV(Loan to Value)を低く維持することを債権者にコミットさせられているため、保有株式価値が下がると現金を作って負債を削減していかないと債権者から怒られる。ソフトバンクGを通じて中国株の下落が米株に波及するルートも念頭に置いておく価値はありそうである。
世界最大の機関投資家であるBlackrockは中国資産をエマージングとは別の新しい枠にすべきであり、そして長期的なリターンを見込めるとして、投資家にベンチマーク(例えばMSCI All-World indexなら4.2%)の2~3倍の中国株エクスポージャーを取るように推奨している。今の下落は「一歩進んで半歩下がる」の半歩に当たるという(一歩進んで二歩下がっているのではないかという突っ込みもある)。しかしこれはあくまでも長期的な話であり、では今買い支えてくれるのかというともちろんそういう話ではなく、これまた当局の政策の影響で戦術的には慎重なスタンスを取っている。要するにソフトバンクGと概ね同じ話をしている。

エマージングと切り離すべきだという議論はそれとは別に合理的であり、今のMSCIエマージング指数で中台企業が過半数のウェイトを占める。MSCIエマージングに連動新興国投資信託を購入すると4割以上が中国企業になってしまうので、中国当局の愚行はエマージング指数全体にも迷惑をかける。現にMSCIエマージング除く中国のETFには資金が流入している。
現指導部への信頼感があまりにも崩れて長期的にも中国投資に対して後ろ向きになった場合はこれらの長期投資家も改めてぶん投げることになるだろう。7月に中国ADRを投げ終わったARKにとってはもはや他人事であるがもはや短期的とは区切らず、様々な意味で「中国当局は後退している」と指摘する。となると「引続きオープンマインド」と言いつつ、買い戻す予定があるように見えない。
この静かな「新規投資の凍結」はどうも世界中の機関投資家に共有されているようである。一方、米株など他の株式市場への資金流入は当然続くので、今後も中国株はどの水準を出発点として考えても資金流入の勢いでは負けるわけなのでそこから静かに米株に負けていく、という結論に辿り着くのは難しくない。資金流入が続く資産は、何もない間はじり高が続き、タイミングによっては振り落としが起こるもののすぐにV字回復してまたじり高が始まるサイクルを描きやすい。一方、資金流入が途絶え流出に転ずる資産のチャートはこれを上下逆さまにしたもの、安いのを見て発作的に買われることはあっても買いが途切れるとまたじり安に戻るという図になりやすいだろう。

ADRはともかく、中国本土株への海外フロー(Northbound)そのものは大掛かりな引揚げが観測されていない。これは海外の機関投資家が既存ポジションをぶん投げるところまでは追い込まれていないことを示唆する。グローバルで金余りが続く中、特段引揚げまでしなくても新規配分を凍結して米株などに振り向け続けるだけで中国ウェイトは縮小していく。むしろ中国本土からの香港株投資(Southbound)の引揚げの方が目立つ。

世界中の機関投資家が見てみぬふりをする中で、悪さをするのは価格だけを見て押し目買いを入れた短期投資家である。CWEBのレバレッジなし版であるKWEBは7月のバーゲンセールを見て大規模な資金流入が見られたが、見事に全員逃げ場もなく捕まっている。長期的な投資家は見てみぬふりを決め込むことができても、これらの押し目買い勢は千本ノックのように続く悪材料に耐えられず投げ始めている。資金流入がないので、出来高が薄い中で押し目買い勢の自重で相場は更に潰れていく形になる。7月に流入した資金が全部掃けるには気が遠くなるような日柄が必要そうであり、出来高が急増して新しい傷付いていない投資家がこのポジションを吸収しないと相場は反転しづらそうである。

バンカメが機関投資家を相手に行っているFMサーベイの8月分で、最も混雑したトレードの3番目(11%)に急に中国株ショートが躍り出ている。しかしこれは明らかにチャートを眺めた感想であり(過去も後追いで儲かってそうなトレードを混雑認定する傾向があった)、中国株ショート(≒潜在的なショートカバーニーズ)が溜まっているとは到底思えず、あくまでも押し目買い勢の自重で潰れているようにしか見えない。
なおソフトバンクGに関しては中国株の損失の穴埋めを売りやすい米株の売却で行っているようである。先月はDIDIの損失を埋めるためのウーバーのブロックオファーが話題を呼んでおり、更にドアダッシュも追加売りのブロックオファーが観測されている。保有株と比べれば小さいもののこの会社の負債も巨額にのぼっており、LTV(Loan to Value)を低く維持することを債権者にコミットさせられているため、保有株式価値が下がると現金を作って負債を削減していかないと債権者から怒られる。ソフトバンクGを通じて中国株の下落が米株に波及するルートも念頭に置いておく価値はありそうである。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。