
中国経済については消費が低調、インフラ整備や住宅着工も低調、そして輸出特需の剥落が時間の問題であり、その上で海外発のPPIインフレを輸入している中、珍しく明るい数字が出てきている。11月の公式PMIは非製造業は依然低調であるものの、製造業の反発が目立った。




中国の鉱工業利潤は一足先に反発している。



石炭の需給はすっかり正常化したようである。 沿岸部の石炭消費量(上図)は例年通り冬入りに伴いピックアップしているが、北京に近い秦皇島港の石炭在庫(中図)はだいぶ積まれている。消費も在庫も増えるのは当然増産を受けたものであるが、本ブログなどは増産の限界的なコストはさすがに平常時より高いだろうから夏の水準まで完全に戻ることはないのではないかと思っていたのだが、鄭州商品取引所の燃料炭先物価格(下図)は政府の強力な価格統制により夏の水準に近付きつつある。それだけ普段は過剰生産力削減で虐められ、非常時は安定供給義務を押し付けられ、その上で数年に一度の機会で儲けることも許されない炭鉱企業の境遇には同情を禁じ得ない。

公式製造業PMIは供給制約緩和で堅調だったものの、本ブログが一貫して主張してきたように、それでもインフレにならないくらい、国内需要も供給制約に負けない勢いで減速しているため、雰囲気がより下流に近い民営企業が多いとされる財新の方の製造業PMIは伸び悩んだままである。輸出の新規受注は公式PMIを見ても財新PMIを見ても海外での新型コロナのぶり返しに伴い、意外と息の長い輸出特需が盛り返しているようである。ゼロコロナ肉弾戦という選択は内需をゴリゴリに削っている一方、グローバル製造業サプライチェーンの中で中国のアドバンテージを維持するのに役立っている。このアドバンテージがある限り内需が息をしていなくても経済そのものは輸出主導で堅調であるし、多少の
それでも新規受注は弱めなので、本ブログが「企業からすると輸出が爆増しているので、あえて弱い国内需要に付き合わなくても輸出を頑張った方が儲かる」「もし海外特需がなかったなら、国内需要ごときのために生産するくらいならわざわざ値上げされた電力を使う価値もない」と散々国内需要をこき下ろしたように、国内の新規受注がそれだけ減速しているということである。国内需要が持ち直すには新年度に入って地方専項債発行に伴うインフラ投資の再開を待つ必要があり、一応この再開は確度の高い予定とは言える。
いずれにしろ、こうなれば本ブログが26年ぶりの高さの数字を見ても「ピークアウトが極めて近い」としていた中国PPI高騰も、今月分のPPI発表を待つまでもなくピークアウトが見えてくる。


感謝祭〜クリスマスの商戦向けの嵩張る荷物の発送も終わったシーズナリティもあるが、バルチック海運指数も上海〜ロサンゼルス間の貨物運賃も下落トレンドが顕著になっている。もちろん米国に着いてからは米国内の構造的な長距離トラック運転手不足が待っているが、少なくとも「中国のPPIインフレ」と「中国サプライチェーン発インフレ」に限っては今にも収束しそうということである。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。