
先週のS&P 500は本ブログが警戒していた通り、下落の勢いが強い週となった。「週足は大きな上ヒゲ陰線となっており、数週間単位で過去最高値を取り戻せなさそうであることを示唆している。遠すぎてもはや意味がないが4740が週足レジスタンスとなる。下値余地はというと50SMAの4525あたりがまず目に付く。これまでは毎月19日近辺の月次調整でも50SMAまで行っていたのだから、VIXが一段と上に行ったにもかかわらず50SMAの遥か上で底打ち反転したらやや驚く」としていた通り、下値余地として注目していた4525近辺の50SMAには早速到達した。

値幅は4670 -4495と再び大きかったものの、すんなりと下げたわけではない。恐らく先立ってのコールオプション主導の買いに対してガンマを供給させられていたマーケットは不安定化しやすく、(オミクロン株の米国上陸などヘッドライン主導と言えなくもないものの)明らかにイントラデーでも一方向への走りやすさが目立った。それは日によって、またセクターによってはしつこい上げをも含んでおり、先週の記事でナスダックついて「月曜に一旦下がった後の反発(右肩)が再びの高値追いに繋がるものだったのか、ただの下げ初動からの自律反発だったのか、という問いがH&S完成で答えが出てしまい、15850が右肩レジスタンスとなる。15850を奪還できれば再び高値追いを再開しても問題ないと思われる。それまでは妙に近いこのレジスタンスを背にショートを張ってもバチが当たらないはずであるが、最近のテックのゴリゴリな買い上げを見せつけさせられ、更に年末アノマリーと世の中の過剰流動性を考えるとすんなり下がる図はあまり想像できない」としていた通りでもある。
「一方15850の直下では相当ロングのオッズが悪いことだけは明白であり、多少跳ねたところで急いで付いていく理由はあまりないし、下がったところで逆張りで押し目買いを入れるにしても15850までに限定されるリターンとリスクのバランスを考える必要がある。S&P 500のヘッドアンドショルダーは、もしそう表現できるとしても更に汚いが、4700がナスダックの15850と概ね同じ役割を果たす」としていたのはナスダックについては完璧であり、マーケットは3日間にわたって15850に限りなく近い水準を試しており、その都度綺麗に15850手前で反落して今に至っている。本ブログを参考にしていれば今サイクルの調整で逃げ遅れることは考えられなかった。S&P 500の方でも15850と同じ役割を果たすのが4700なのに対して週間高値が4670であったので、精度には少し欠けるものの概ね同じ形でワークしている。
値動きの背景としてはまず、先週金曜のアジア時間から始まったオミクロン株ネタが続いた。本ブログが「週末の間にオミクロン株が欧州全体に広がっているが、重症化しやすいか、既存ワクチンが効くかどうかについてはまだ見守る必要があるだろう」としていた通り、週明けからパニックが更に進行するというよりは一旦は言うほど怖いわけではなさそうという印象になったものだが、米国上陸で改めて売り崩されたのがニュースとなった。米国にはいずれ上陸するに決まっているのでこのヘッドラインは上手く利用された感が強く、その前からマーケットが脆弱だったと考える方が自然である。犯人は明らかに11/30のパウエル議長の議会証言であり、そこでは「足元はインフレは一時的なもの」との表現が撤回され、テーパリングの加速が議長の口から示唆された。週末の弱い雇用統計はFedに逃げ道を与えた形になるが、Fed関係者はそれでも12月FOMC前のブラックアウト期間を前にテーパリング加速の織り込みを押し込もうとしているように見え、ゴルディロックスというわけにはいかなかった。詳しくは別の記事で述べているが、2018年12月にこれまた米中が景気悪化でシンクロし始めるタイミングでパウエルFedが硬直的に金利引上げを続行した(ポリシーフェイル)のに市場が拒否反応を示した前例を彷彿とさせる展開である。その時はS&P 500が2割下落した。

もちろん当時の2%台まで進んだ利上げと異なり、今回はたかがテーパリングの加速である。S&P 500とFed BSを並べる人達はテーパリング加速でFed BSが予定より1.6%小さいところで止まってもそれがS&P 500の10%や20%の調整に繋がるとは考えないだろう。当時は米中の景気悪化シンクロはアップルショックという形で具象化しているし、そこに至るまでにアップル株の低迷が目立ってきた。今回もアップルはiphone13の需要減衰を警告しているが株は棒上げしてきた値幅を少し失ったにすぎない。今回のクラッシュの特徴として、中身対比で割高まで買われていた銘柄群が集中的に売られただけであり、バリュエーションはともかく広範な利益懸念が話題になっているわけではない。個人のタックスセリングもこのタイミングでハイパーグロースで出たのかもしれない。2018年12月の真似事だけで2割下落を再現するのは難しいだろう。




久々にDBのポジショニング。指数の値動きこそ定期的な調整と同程度であるものの、足元の機関投資家のポジションカットの勢いは明らかにコロナショック以来で最大級のものであり、それはポジションが過去対比で復元はしたものの決して重くはないシステマティック勢主導ではなく、裁量勢の人力遠投がメインドライバーであったことが分かる。おかげで統合ポジショニングは大統領選以来初めて長期平均近辺まで回帰している。サイズで見るとラージキャップのポジションはほとんど畳まれておらず、機関投資家の売りが集中していたのが小型株であったことが伺える。これをみんな大好きなラージキャップがぶち売られるまでアク抜けしないと見るか、逃げ場があるので指数ベースではそこまで売られないと見るかは見解が分かれるだろうが、いずれにしろ下値余地を考える時、コロナショック後のシステマティック勢の売り不在という構造変化は案外大きいのではないかと思われ、2018年12月ような2割調整の再現の可能性が低いだけでなく、リスクパリティ主導で10%調整した2018年2月よりも今サイクル調整のマグニチュードは小さいではないかと思われる。裁量勢は安心を確認できたら再び買い戻すと思われるが、それまで大統領選以来初めての機関投資家のポジションの軽さが継続することになる。
機関投資家の売りが明らかに指数の大きな下げのきっかけになっていた中、指数の帰趨は機関投資家が投げ終わったかどうかに依存する。DB Positioningを信じるならば機関投資家ポジションは既に長期平均まで回帰している中で、更なる投げを豪快に入れて来る可能性はあまり高くないのではないか。


一方、NAAIMは一向に悲観域に入ってこないのは気になる。今回のクラッシュに際してもNAAIMは逆指標としてよくワークした。他のセンチメント指標もいい加減陰の極に来ているが、NAAIMだけはこれだけ高いと安心感がない。

最もターンオーバーが激しい銘柄群はブチ売られた。
VIXは30台載せから更に一時35近くまで上昇しており、これは2021年で2番目に高いピークとなっている。興味深いことに水曜と金曜とでVIXは30から35までブローアップしたのに、指数そのものは付いて来ておらず、水曜の安値を割っても走らずに引けにかけて戻している。これはシステマティック勢不在の中で4500近辺で裁量勢のVIXを無視したエイヤー買いが入ったものと解釈される。
テクニカルには下値目安としていた4525~50SMAに到達した。4500は守られた判定になるものの首の皮一枚で繋がった形にすぎず、下値が依然ショックに脆い態勢には見える。警戒すべきはハイグロで大きく傷付いたファンドが全面的な解約やリスク圧縮に動くことか。もっとも4700 -15850レジスタンスの手前でリスクを外していれば、このあたりでは目を瞑ってリエントリーしても、たとえもう一発下げが来たとしても大して怖くないように思える。今のところイントラデーの値動きが一方向なことが多い中で下値切下げ失敗などが見られたらフェーズが変わったと認識できるだろう。4700 -15850レジスタンスはもちろん健在であるがすっかり遠くなっており圧迫感がない。12/14 -15のFOMCがさすがにポリシーフェイルイベントにならないと仮定すると、その前後から年末に向けてアノマリー通りの堅調さに復帰する希望はまだ残るか。


もちろん当時の2%台まで進んだ利上げと異なり、今回はたかがテーパリングの加速である。S&P 500とFed BSを並べる人達はテーパリング加速でFed BSが予定より1.6%小さいところで止まってもそれがS&P 500の10%や20%の調整に繋がるとは考えないだろう。当時は米中の景気悪化シンクロはアップルショックという形で具象化しているし、そこに至るまでにアップル株の低迷が目立ってきた。今回もアップルはiphone13の需要減衰を警告しているが株は棒上げしてきた値幅を少し失ったにすぎない。今回のクラッシュの特徴として、中身対比で割高まで買われていた銘柄群が集中的に売られただけであり、バリュエーションはともかく広範な利益懸念が話題になっているわけではない。個人のタックスセリングもこのタイミングでハイパーグロースで出たのかもしれない。2018年12月の真似事だけで2割下落を再現するのは難しいだろう。




久々にDBのポジショニング。指数の値動きこそ定期的な調整と同程度であるものの、足元の機関投資家のポジションカットの勢いは明らかにコロナショック以来で最大級のものであり、それはポジションが過去対比で復元はしたものの決して重くはないシステマティック勢主導ではなく、裁量勢の人力遠投がメインドライバーであったことが分かる。おかげで統合ポジショニングは大統領選以来初めて長期平均近辺まで回帰している。サイズで見るとラージキャップのポジションはほとんど畳まれておらず、機関投資家の売りが集中していたのが小型株であったことが伺える。これをみんな大好きなラージキャップがぶち売られるまでアク抜けしないと見るか、逃げ場があるので指数ベースではそこまで売られないと見るかは見解が分かれるだろうが、いずれにしろ下値余地を考える時、コロナショック後のシステマティック勢の売り不在という構造変化は案外大きいのではないかと思われ、2018年12月ような2割調整の再現の可能性が低いだけでなく、リスクパリティ主導で10%調整した2018年2月よりも今サイクル調整のマグニチュードは小さいではないかと思われる。裁量勢は安心を確認できたら再び買い戻すと思われるが、それまで大統領選以来初めての機関投資家のポジションの軽さが継続することになる。
機関投資家の売りが明らかに指数の大きな下げのきっかけになっていた中、指数の帰趨は機関投資家が投げ終わったかどうかに依存する。DB Positioningを信じるならば機関投資家ポジションは既に長期平均まで回帰している中で、更なる投げを豪快に入れて来る可能性はあまり高くないのではないか。


一方、NAAIMは一向に悲観域に入ってこないのは気になる。今回のクラッシュに際してもNAAIMは逆指標としてよくワークした。他のセンチメント指標もいい加減陰の極に来ているが、NAAIMだけはこれだけ高いと安心感がない。

最もターンオーバーが激しい銘柄群はブチ売られた。

VIXは30台載せから更に一時35近くまで上昇しており、これは2021年で2番目に高いピークとなっている。興味深いことに水曜と金曜とでVIXは30から35までブローアップしたのに、指数そのものは付いて来ておらず、水曜の安値を割っても走らずに引けにかけて戻している。これはシステマティック勢不在の中で4500近辺で裁量勢のVIXを無視したエイヤー買いが入ったものと解釈される。
テクニカルには下値目安としていた4525~50SMAに到達した。4500は守られた判定になるものの首の皮一枚で繋がった形にすぎず、下値が依然ショックに脆い態勢には見える。警戒すべきはハイグロで大きく傷付いたファンドが全面的な解約やリスク圧縮に動くことか。もっとも4700 -15850レジスタンスの手前でリスクを外していれば、このあたりでは目を瞑ってリエントリーしても、たとえもう一発下げが来たとしても大して怖くないように思える。今のところイントラデーの値動きが一方向なことが多い中で下値切下げ失敗などが見られたらフェーズが変わったと認識できるだろう。4700 -15850レジスタンスはもちろん健在であるがすっかり遠くなっており圧迫感がない。12/14 -15のFOMCがさすがにポリシーフェイルイベントにならないと仮定すると、その前後から年末に向けてアノマリー通りの堅調さに復帰する希望はまだ残るか。
これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。
この記事は投資行動を推奨するものではありません。