11月末に大型新人として華々しくデビューしたオミクロン株(B.1.1.529)はマーケット的にはさっぱり続報がない。本ブログは相変わらず非医学部卒が書いているの医学には立ち入らないが、どうも30何か所も変異しただけあって感染力が強く、ワクチンを2回接種した人でもブレイクスルー感染するらしい、一方少なくともワクチンを2回接種した人はあまり重症化しないことだけは分かっている。南アでもイギリスでも今までの新型コロナ流行が霞んで見えるくらい爆発的な伸び方が観測されている。
重症化、死亡のしづらさは最も早く発見された南アのデータで一目瞭然である。日経の全世界のチャートは更に分かりやすい。これまでの3回の波ではやや遅れて死亡数も上昇してきたが、今回は全くその雰囲気がない。そして南アでは早くもピークアウトが近付いている。
これは欧米諸国でも同様である。マーケット的には恐らく入院加療中の患者数が最も重要であり、自己責任で放置を決め込む方針の国でもこちらがパンクすればロックダウン等の強力な経済抑制策に出ざるを得ないが、現在では米国も欧州も入院者数は過去のピークと比べてだいぶ低く、であれば深刻な経済的な影響は航空業界などに限定される。インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究では、もちろんワクチンの効果(ワクチン接種者はいずれにしろ入院しづらいが、オミクロン株だけワクチン接種者もブレークスルーするため、分母にワクチン接種者が入ってくる)もあるが、オミクロン株の入院率はデルタ株対比で4割下がるとされている。一方で入院減を打ち消すほど感染者数が増えれば元の木阿弥になるが、いずれにしろ、何かの間違いで入院者数が2020年のピークを超えたらさすがに要警戒だと思われるが、それまでは国によって慎重だったり放置だったりと、国の
オミクロン株による他の種の置換は南アで最も進んでおり、次にインド、イギリスが続く。欧州大陸も11月から感染者が急増してきたがそちらの主犯はデルタ株だったようである。弱毒化したオミクロン株がワクチンのような働きをし、自然免疫への到達がむしろ早まるという楽観的な見方もあるが、今のところそのニュースを見たい人が多いから流れているもののあまり頼りにならない。そもそも弱毒化したという話も怪しく、ワクチン接種が進んだ結果人々の免疫が上がった結果も混ざっているという見方が根強い。極論、オミクロン株に何の特徴もなかったとしても「ワクチン接種進行+経済のリオープン」という組合せなら当然、重症化が減る一方で未接種者がリオープンした街を出歩いて移される可能性は上昇する。
現に、オミクロン株シェアがまだ低いフランスとドイツの11月以降のデルタ流行でも「広がり方は以前よりも速いものの死亡数は増えない」現象は観測されている。足元の死亡数の増えなさのうちのかなりの部分がワクチンのおかげであることは間違いない。
オミクロン株向けワクチンができるまで、mRNAワクチンがある国ではワクチンのブースター接種で対応することになっている。1、2ショット目すら気が進まなかった国々では当然ブースター接種も進まないだろうが、オミクロン株向けワクチンが間に合えば問題ない。日本も早春からブースターショットを導入することになりそうである。
オミクロン株の流行で窮地に立たされるのは再び非mRNAワクチン国である。重症化しなさがワクチンのおかげでもあるとすれば、非mRNAワクチン国からはオミクロン株はただの感染力が上がった株に見えるだろう。本ブログが肉弾戦と表現するゼロ・コロナ政策は、新興国政府による経済を軽視した、不必要に仰々しい方針と思われることが多いが、現にもし非mRNAワクチン国ではゼロコロナ政策を続けないと爆発的に感染が広がるであろうことは明白である。先進国がオセアニア諸国などを最後にゼロコロナから脱却できたのはmRNAワクチン接種が進む見通しを確認したためであり、趣味の転換ではない。北京大学はもし中国が米国と同程度のリオープンを実行した場合、毎日60万人の感染者が出たであろうと試算する。これは中国当局のゼロコロナ政策をよいしょするために出されたものだろうが、現に「mRNAワクチンが欠けた米国」を想像して人口比を掛けると納得できない数字ではない。つまり国力の格差を肉弾戦で何とかするしかないという以上でも以下でもない。中国製ワクチンがオミクロン株にほとんど効かないことも確定している。もしオミクロン株の感染力が本当に強いのであればその肉弾戦も時間を稼ぐことくらいしかできない。
従って夏に本ブログが描いた「mRNA系ワクチンを大々的に導入した国はさすがに安心感があるが、それ以外のワクチンしか入手できない国は多かれ少なかれ中国と同類の肉弾戦の続行を迫られる。接種率すら低かったら尚更である。リオープンプレイが許されるのはmRNA組に限られる」「多くの国で絶対多数のワクチン接種による集団免疫獲得を諦めて騙し騙しで経済再開を続けることになりそうだが、そうなるとゼロ・トレランスの国々との間の人の移動は長く遮断されそうであるし、諸事情でワクチンを打たなかった人々がリオープンした街を歩いて移される危険性はむしろ昨年よりも遥かに高くなっている」という線形の未来図はオミクロン株を経ても変わっていない。むしろオミクロン株を経て加速している。
中国はこれから冬季オリンピックも控えており、こちらは
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。