HSI
 今年散々だった中国関連株は年末に近付くにつれてダメ押しで更に下落している。11月の記事ではハンセン指数とH株指数についてはハンセンが25,000近辺で推移していたタイミングで「(リバースヘッドアンドショルダーのネックラインにあたる)26,500をブレイクできれば中長期的にも反転を期待できそうである。一方、3度目のチャレンジに失敗してネックラインの下で折り返してしまうリバースヘッドアンドショルダーの出来損ないは最も怖いチャートパターンの一つである」としていたが、実際に出来損ないになり、「最も怖いチャートパターンの一つ」が実現した形となる。
CWEB
KWEB CWEB
 注目度の高いCWEB /KWEBも「(KWEBで55の下では)良くてペナント継続というところである」としていたが、こちらもペナントを下に突き抜けている。年末を前に更にタックスセリングの売りに晒されたようである。Nasdaq Golden Dragon China Indexベースで見ると中国テックADRは年初来で約▲42%、2月のピークから約▲57%で引けそうである。年末はやや荒れ気味であり、12/29には安値更新と共に出来高が盛り上がり、12/30は更に出来高を増やしながら10%近くショートカバーでラリーした。

SSEC
FT AH Premium  
 オフショア中国株が全体的に醜悪なパフォーマンスを付ける中で、最も堅調さを見せたのはとかく無視されがちな上海株である。まさか本ブログが「皮肉なことに投資家が大損したら社会問題化できるという抑止力を持っている上海株の方が安心感があるように感じる」と書いたのが当たったわけではあるまいが、テックADRと違って政治的に正しい上海株は概ね中国当局のセルフ制裁に晒されることはなかった。エバ―グランデ(恒大)の経営危機の発覚から悪化にかけてさすがに上海株もマクロ的に売られたが下げ幅はたかが知れており、11月中を底とする日足リバースヘッドアンドショルダーを形成し「この件はこれで終わり」といわんばかりのサインが出ている。A -Hスプレッドは更にA株割高・H株割安方向にシフトした。

 さて2022年になって何が変わったか。素直に考えると2021年は輸出特需による成長ブーストを食い潰す形でアンチ成長な政策を打てたが、2022年はどう見ても火遊びで成長を食い潰す余裕がない。金融政策は完全に金融緩和方向に舵が切られた不動産税が挫折したこともあって民営不動産セクターへの引締めも緩和方向に舵が切られている。不動産セクターは当局の敵意が転換し、後処理や同業他社の危機対処における当局の無能さだけがリスクとして残る。しかしテックADRについてだけは「規制が厳しい状態がニューノーマルになる」としていた通り、今でもちらほらと引締めのニュースフローが流れており、逆ではない。さすがに海外上場自体については遡及的に否定されることはなく、米国上場廃止の圧力は米中両方発からどうも米国発のみになったらしい。しかし当局の引締めはテック企業のバリュエーションを縮めただけでなく、既に企業価値自体の劣化に繋がり始めている。現にNY上場廃止の準備に動き出したDIDIは規制対応で赤字を計上した社員のリストラを始めたテック企業も出ている。2021年は米国がQE継続、中国が全方位引締めという組合せだったがために中国オフショア株が米株に著しく劣後したが、2022年にはそれが逆転するため米中株のパフォーマンスも逆転する、と見るのは素直すぎるだろう。

 テクニカルには、ハンセンは年末を前に週足下ヒゲ陽線を連発して一旦は下げ止まりシグナルを出している。しかし日足のリバースヘッドアンドショルダー出来損ないを経て週足で巨大なヘッドアンドショルダーを形成しており、26,200はレジスタンスに転じている。サポートまでが近く、レジスタンスまでが遠いので、年が変わったということで逆張りの買いを試してもオッズは悪くなさそうであるが、他の指数と比べるとまだハードモードな賭けである。下値が割れたらその都度逃げる用意をしないといけない

 2022年の金融緩和の受益者はやはり一義的には上海株になりそうである。上海株が1人金融緩和バブルになったとして、その場合でも2014年年末~2015年の金融緩和相場のようにかなり経ってから香港株、オフショアADRがようやく付いてくる形になるのではないかオミクロン株がどこまで肉弾戦を広げることになるかまだ読めないので上海株に飛び込むのも無用なリスクを取る形にも見えるが、それでも上海株はハンセンと比べるとだいぶ下げづらそうなチャートに見える。3525あたりの200SMAは堅そうだ。
BABA shorts
 KWEB /CWEBは12月月末の出来高の盛り上がり具合を見ると、年内に処分し切ろうとする動きがかなり出たのではないかと思われる。その上で年内に週足下ヒゲ陽線を連発したため、1月に入ってのリバーサルを見込むというのはそんなにオッズの悪くない賭け方に見える。ショートカバーの燃料になったのは積み上がりつつあるショート建玉であるようだ。例えば2021年にちょうど半減し、もし2021年グローバルクソ株ランキングがあればトップを獲得できたに違いないアリババなどは全浮動玉の4%までショートが積まれている。一方で投機的なロングの多くが年内に処分された可能性が大きいことを考えると、次にダラダラと自重に引かれるまで需給の改善ウィンドウがあってもおかしくない。年末年始は税金と関係ない投資家にとってはわざわざ巻き込まれて損切りするタイミングではないだろう。

 もっとも反発狙いはあくまでもファンダメンタルズの裏付けがないことを自覚したタクティカルなものに限定されるべきである。似たような暴力的な上げは8月にも一度見られており、ちょうど今と全く同じタイミングで本ブログが記事を書いているので臨場感を取り戻すことができる。この時はやはり短期的な地合いは改善されておりCWEBで言うと更に20%程度反発したものの、9月になると息切れして自重で再び落ち始め、その後は再び鳴かず飛ばずの長いペナントを経て今は半値になっている。この時との違いはグッドニュースがないことと、12月から1月になったというシーズナリティくらいしかなく、であれば飛び乗るにしても再び自重で潰れ始めたら飛び降りる用意をする必要がありそうである。

 いずれにしろこのあたりは規制強化のヘッドラインと闘う鉄火場であり、わざわざここで狙わなくても他にもっと楽に稼げるマーケットはいくらでもあるというのが素直な感想である。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。