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SPX Daily 
 先週の記事は全く無価値であった。もともとS&P 500は週足上ヒゲ陰線を2本連発しており、また先々週の記事でも「持ち合いを持ち合いを上にブレイクしてからレンジ内に戻ってきた形、当然次は下を試すという話になってしまう」としていたのに、下を試すにしても一旦はレンジにとどまるだろうと、週足上ヒゲ陰線の下でテクニカルに逆らって余計なことを考えたのは失敗であった。目安にしていた4600 -4750レンジには米国休みが明けてほとんど掠りもしなかった。今週後半には好転しやすいとしていたアノマリーもワークしなかった。結局、最初に騒ぎ立てていたQTのインパクトが全てを飲み込んだ形となり、最後までずっと恐れ続けなければなかった。QTのスケジュールも固まる前からやって来るとは思っていなかったものの、やはり引締めが来るぞということで金利によるバッファ(大袈裟に言えばパウエル・プット)が効かず、「2022年の調整局面は2021年のそれよりは厳しいものになるだろう」「そういう意味で2022年以降のリスク資産の押し目買いは非常に慎重に進めるべきだろう」が早速実現したことになる。金曜には上昇していた米金利が戻し始めたが、これは昨年「名目金利が低迷する局面があってもそれは金融環境が引締め的でないことを示唆するというよりは、単なるリスクオフを意味しやすいだろう」としていた通り、さすがにゴルディロックスには繋がらなかった。
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Tech charts
 1月に入ってからずっとナスダックがS&P 500より弱かった。金曜はNetflixの決算が滑って1日で25%近く下落した。ただでさえドローダウンに耐えているのに決算期を迎えて持ち株がそうなってはたまらないと、金曜も引けるまでセンチメントが悪かった。
Nasdaq down 1% every day
 ナスダックは週間を通して毎日1%以上下げた。休日で1日少ないとはいえこれは過去でも珍しく、2000年4月のドットコムバブル崩壊と2001年9月の9/11以来である。1月に入ってからナスダック100は既に12%下げており、このまま月が終われば2008年のリーマンショック以来の悪い月となる。
Correlation between global banks and 10 year yields
 先々週まではナスダックが弱くてもセクターローテーションで済めばよいという雰囲気であったが、米金利上昇が早期利上げ主導でカーブがフラットニング気味だったこともあり、金利上昇で恩恵を受けるはずのグローバル銀行株の10年金利との相関は急速にマイナス域に転落し、逃げ場がなくなった形となる。
Intraday 
NYSE uptick downtick
 イントラデーの値動きは火曜はずっと弱く、残りの3日間は「オープン後はリリーフラリーに向かうと思われたものの、NY引けにかけて売り込まれて安値引け」パターンが続いている。これは「巨額の引け発注で株ポジションを落としている参加者がいる」ということを示唆するが誰だろうか。それを「異質な値動きパターン」として途中で気付かなければならなかったわけだが、テクニカルには「連日上ヒゲ陰線が続いて弱かった」という表現となり何の不思議もない。木曜などはS&P 500とナスダックの双方が水曜の上ヒゲ手前まで反発した後に反落に転じており全くテクニカル通りである。
QQQ Volume
 そして値動きは一旦下に向かい始めるとオプションセラーやレバレッジETFなど様々な参加者を巻き込む。18日、19日、20日はイントラデーチャートを見ても特にその傾向が強かったが、期近ものがエクスパイアした後の21日ザラ場のイントラデーはどちらかというとダラダラとベアになっているだけで、特にガンマヘッジ的なものをトリガーしたように見えない。代わりに盛り上がったのはQQQの現物投げの出来高である。前回の記事でも19日近辺から週後半にかけてアノマリーが改善しやすい(従って週間を通してもそんなに下がらないと見ていた)としていたが、数日の誤差の間に居場所が記事何本分もワープしてしまったのでは世話がない。

VIX 
VIX Range 
 今回の調整の特徴としてVIXが上がりづらいのはずっと取り上げてきた。VIX的にはこれでようやく昨年の月次調整と同程度の調整になったということになる。年初早々から暴落しかしておらず、ナスダックが久々の数字をはじき出しているにもかかわらず、VIXはいまだに20台にとどまっており例年のレンジ対比でも特徴がない。
HYG
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 もう一羽のカナリアであるHYGも同様である。中期金利が上昇した分はさすがに売られたものの、何らかの財務劣化イベントのリスクを察知してスプレッドが大きくワイドニングしたわけではない。2020年3月以来となる1日1.3bnの資金引揚げにも耐えた。或いはVIXとクレジットスプレッドはお互いを見ているのか。

GS FCI
 これはFCIも同様である。FCIを経ずに実質金利上昇が直接株式のバリュエーションに働きかけた形となる。
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 VIXは上がりづらなかったものの、金曜にプットオプションの出来高は歴史的な30mmを付けており、SPYプットだけで当日に満期を迎える1mmを含む6mmが買われたという。
Flows into Equity Funds by Month
MS estimated Retail PnL 
GS Retail Favorites
 1月は本来シーズナリティ的には個人などから株式ファンドへの資金流入が多い月であった。モルスタによると個人はまだ限界的には買い手であるが、エネルギー株のアウトパフォームなどの恩恵を受けて来なかったため指数対比でも損益が悪化しすぎてあまり体力がないとのことである。GSの個人が選好する銘柄群もボロボロである。
 DB positioning
 機関投資家については、久々にDBポジショニングが断片的に流れてきた。統合ポジショニングは昨年ほどは重くなく長期平均に近い。ダブル安でパフォーマンスが顔面着地したリスクパリティも大したことないだろう。CTAは猛烈にショートを入れている。この規模のCTAショートは過去あまり見られたことがなく、長続きしたこともない。従ってCTAの派手なショートカバーはいずれ見られると思われるが、トレンドフォローが勝っている間は勢いに乗って積み増すことはあっても畳みには来ないだろう。具体的には前日の上ヒゲも取れないような綺麗な下落トレンドが終わらないと話が始まらない。
NAAIM
AAII Sentiment
Hulbert HNNSI
 NAAIMは木曜時点で再び悲観に近付いた。AAIIもHNNSIもコロナショック以来の低さとなっており、センチメントは総悲観に近付きつつある。
SPX and Profitless Tech 
SARK
 赤字テックや割高成長株は、QTが話題になり始めてから確かに12月はナスダックに明確に劣後していたものの、1月に入ってからはナスダックも同じくらい弱く、従って殊更赤字テックだけを別途取り上げてディスったところで、ナスダックから逃げ遅れやすくなっただけである。ARKのインバースETFであるSARKは輝かしいリターンを挙げて資金を集めており、これはショートが構築されているのと等しい。
Nasdaq 14000
 テクニカルには、バンカメによるとナスダックの14000がキーだったそうだが金曜には貫通している。S&P 500の200SMAにあたる4430も同様であり、200SMAタッチはコロナショックで2020年6月以来18ヶ月ぶりとなる。200SMAの下で引けたことにより、8年間で最も長い記録である409日連続の200SMA上での推移が終わってしまった。日足は金曜分まで連日の上ヒゲ陰線であり、少なくともヒゲ手前での逆張りを正当化しない。週末には仮想通貨も続落しており、センチメントが悪化した状態で週明けを迎えることになる。

 しかしそれだけセンチメントは既に陰の極に近い。爆増したQQQとプットの出来高を経て、ここからの売り手はレバレッジをかけてきた参加者のポジション削減くらいしか思い付かず、それもレバレッジファンドの中で毎日自動的に削減されてきた。買い手は決算発表1ヶ月前から自社株買いブラックアウト期間に入っていた企業の、決算通過に伴う自社株買い再開が挙げられる。一度どれかの日足上ヒゲを奪還して上に値を飛ばせばCTAのショートカバーも期待できそうだ。1/25 -26のFOMCは引締めスケジュールの具体化が見込まれているが、こちらは既にかなり警戒されており、逆にハト化したFOMCでリスク資産が上がるのを待っているという声は皆無なので、オッズとしては反発狙いが有利に見えるものの、先にショートカバーが進行した場合はヘッドラインでやられる方がアホらしくなる。GAFAMの決算も同様、急に期待が盛り返さない限り、無事に通過できればよしとされそうである。であればよほどレバレッジを掛けすぎていなければ200SMA割れはロスカットしたりショートを入れる水準ではないように見え、むしろ反発狙いの方がオッズがよさそう。ただこのままでは日足が味方しないだけでなく、中期的にもチャートがすっかり弱くなっているので戻りに転じても上値余地は見えており、非常に遠くて重い4750の週足レジスタンスに加え、下に抜けてしまった上昇レンジ(本ブログの想定レンジでもあった)の底にあたる4600近辺も重そうであり、その手前が取りすぎたリスクの畳みどころとなる。わざわざ下で切るほどではないものの、一般論としてもQTの年に漫然とレバレッジを掛け続けるのは危険であり、また今回のクラッシュでそう思った参加者の方が多いはずだ。サポートは今のところない。どこかで日足下ヒゲ陽線を作ったり日足上ヒゲ陰線のヒゲを奪還できればそれまでの安値がサポートになるだろう。
Nasdaq 100 Forward PER
 大きく調整した割りにはバリュエーションはあまり割安化しておらず、ナスダック100のフォワードPERは下落を経て30超えから27まで調整しているが、これは2021年5月の底の水準に等しいだけである。引締めが始まり実質金利も現に動き始めた以上、フォワードPERが30超えを取り戻すのは難しいだろう。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。