SPX Daily 
 先週はイベントフルで荒れに荒れた一週間となった。月曜からウクライナの地政学リスクも意識されて指数は激しく下値を掘り、その後自律反発して大きな日足下ヒゲ陽線を作った。FOMCは記者会見の雰囲気を中心にタカ派な結果となり、それまでイントラデーで堅調だった指数が記者会見中に暴落して上ヒゲを残した。MSFTの決算はいつも通り堅調であったが時間外で大幅に上下に往復したのを神経質に見守っていた参加者は多かったはずである。TSLAも問題なかったがそれでも高すぎるということで暴落した。金曜になると色んな参加者が元気がなくなっていたようで、AAPLも堅調で通過してもやはり最初は神経質な反応となった。ただ「好決算でも値動きが悪い」現象を深読みしても無駄だったようで、結局週末にかけて指数が爆上げしており、週間を通しては「主要企業の決算が堅調で指数も堅調だった」というまとめ方をあっさりされることになる。そしてクラッシュを経てしれっとテック優位に戻っている。AAPLの決算でサプライチェーンの話題もそろそろ旬をすぎそうな印象を受け、FOMC通過による金利上昇一服も合わせて金曜は久々にゴルディロックスの様相を呈した。
JPM Retail Flow intraday 
JPM Retail Flow across the week
 基本的に週間を通してイントラデーの値動きは荒く、また途中で大きく反転しがちであり上下の日足ヒゲが多発した。先々週の週末時点で「体力がなくなっていた」リテールは月曜午前中に気持ちよくぶん投げた。リテールフローは月曜午前に名だたる大型テックを投げ、SQQQを購入した。挙句の果てに引けにかけてノンリテールが全て回収して行き、日足は大きな下ヒゲ陽線となった。この日足をもって反転が決まったようなものだったが、翌日にはリテールが上を買い直したりして落ち着きがなかったのが週間を通しての不安定さの背景の一つだったと思われる。機関投資家がデレバレッジを迫られる動きは限定的だったと推定されている。
Bloomberg SPX Put Volume
 月曜はS&P 500指数プットの出来高も日次で2020年3月以来の大きさとなった。リテールの動きと合わせるとかなり月曜に感極まっていることになる。

 先週の記事では「(FOMCでは)オッズとしては反発狙いが有利に見えるものの、先にショートカバーが進行した場合はヘッドラインでやられる方がアホらしくなる」「GAFAMの決算も同様、急に期待が盛り返さない限り、無事に通過できればよしとされそうである」「どこかで日足下ヒゲ陽線を作ったり日足上ヒゲ陰線のヒゲを奪還できればそれまでの安値がサポートになるだろう」とディテールを相当描写できていたと思う。月曜の安値掘りについてもテクニカル的には上ヒゲ陰線連発を覆すシグナルが見られる前なので仕方ないものであった。本ブログが想像していたディテールに従うと月曜の下ヒゲ陽線形成をもって「それまでの安値」4220がサポートとなり週間の勝負が決まったことになる。そういう意味でFOMC後の下げ場面は押し目にすぎないところまで描写できていたし、週後半の神経質さにも付き合う必要はなかった。しかし下値の深さも週間の水準も想定よりも遥かに下だったのは間違いない。「200SMA割れはロスカットしたりショートを入れる水準ではない」としていたが、200SMAをブレイクして一度4.5%も下値を掘った後の200SMA真下での戻り売り圧力は週間を通して強く、週末の上げにおいても200SMAは奪還されていない。
VIX
SPX and HYG 
USIG
 カナリア2羽は完全に相場に乗り遅れた。答え合わせをすると指数が下がってもVIXが上がらないのは、まだセリング・クライマックスまで来ていなかった証左だったということになる。一向に崩れないクレジットも同様であり、先週後半になってようやくワイドニングが始まった。このワイドニングはまたどこかで検出されて株式の売りを誘発したかもしれない。これでようやく全てのメンツが出そろった形となり気持ち悪さは消えたが、「クレジットがワイドニングしていないから問題ない→クレジットがワイドニングするのは最終局面だから問題ない」の組合せだけは都合がよすぎるので、どちらかは間違っていたに違いないことをまず反省する必要がある。HYGが12月のS&P 500の上げを完全に無視していたのは周知の事実であるが、そのダイバージェンスをもって天井シグナルであったと今説かれても有難みがあまりない。
 DB Positioning 
 DBポジショニングは先週のものと比べるとシステマティック勢も統合ポジショニングも平均以下まで振り落とされている。個人もシステマティック勢も振り落とされたなら相場は既に焼け野原になっていると表現できそうであり、一層の下落の燃料は乏しい。
NAAIM
 NAAIMは先々週より更に悲観的になっており2021年5月以来の陰の極にある。FOMC後の週後半のグダグダ地合いでは月曜と比較して指数の水準はまだ上なのに、センチメントは恐らく無痛だった月曜よりも悲観的になっていたのではないか。それが二番底の特徴である。地政学リスクは気持ちよくポジションを遠投できるのでその後の需給は改善しやすくなりそうだが、果たして。
SPX forward PER 
Nasdaq Forward PER
 バリュエーション。調整と決算通過を経てS&P 500とNasdaq 100のフォワードPERは既にコロナ後の未曽有な高さから、ヒストリカルに見てそこそこ高い程度まで調整している。S&P 500は過去5年平均に近付いた(5年のうち2年はコロナ後であるが)。一方先週も述べたようにナスダックのフォワードPERがすぐに再び30を付けに来るとは想像しづらい。悪材料が切れて反発に転じても、以前の印象よりも値動きが精彩を欠くようになりそうに思え、2018/2のVIXショックが終わった後のやる気のない修復期間がイメージしやすい。
Fed FANG
 パブロフの犬が大好きな大型テックとFed BSを並べてみると、いくらQTが控えているのが自明だとしてもフライングしすぎである。

 テクニカルには月曜の大きな日足下ヒゲ陽線をもって日足ベースで下落トレンドは終了していたことになる。金曜は2本目の日足下ヒゲ陽線となり、週足でも大きな下ヒゲ陽線となる。これでチャート的には1/5からの急落局面は終了したと見なしやすくなり、4220はサポートとなる。従って4220より上で再び押した時は4220を背にした買い場になりそうである。4220まではやや遠いが、その手前までもう一度試しただけで耐えられなくなるようなポジショニングは現在のボラティリティにふさわしくない。レジスタンスはこちらもやや遠いが依然4600近辺となる。週足底打ちシナリオが崩れてしまうのは4220割れと、下ヒゲ陽線を再び週足上ヒゲ陰線で被せられた時である。安心できる上昇トレンドに復帰するにはイントラデーの大きなスイングが止まる必要があり、もし強引な大幅上昇が見られたら逆にリスクを外す機会になりそうである。
Estimated Rebalance
 あえてこの記事ではFOMCや金利の議論をあまりしなかったが、金利が安定して大型テック優位に戻ったら指数ももう少し息が長い反発が見られるかもしれない。残りの決算はチャートが首の皮一枚になっているAMZNに注目か。月末日は年金のリバランスが控えており、普段は株が上がった分を利食って債券を買うフローになりやすかったのが、今月は株式がボコボコだったので逆張りの株式追加が見られると言われているが、果たして。
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 一般的に株式への資金流入が集中しやすいとされていた1月だが、今月はこのままでは1月にしては記録的に悪いパフォーマンスに終わりそうである。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。