SPX Daily 
 S&P 500は懸念材料が少なくない中で続伸した。週前半にはまだドキッとするような1%弱のイントラデーの下落があったが、後半になるとその心配もすっかりなくなってしまった。先週の記事では「FRA -OISが意外な早期回復を見せている。これは流動性懸念で売り込まれていた領域(4150 -4300ボックスあたり)には戻ってこないことを示唆するだろう」「少なくとも足元は上向きモメンタムの方が強そうであり、またそれはスタグフレーションまで議論した後では多少のヘッドラインでは反転しづらそうに見えるので、この前の下落の再現を狙ったショートは値頃感以外味方が少ない。ここからは押し目買い目線に転換することになる。アップサイドの目線を一旦ナスダックの14500と考えたとして、それまでにどこまで深い押し目を拾えるか」と素早く全力で方向転換を決めたのは合っていたが、大して深い押し目も来なかった。
Bloomberg SP500 after Fed First Hike
 3/16のFOMCはマッシブホーキッシュだったものの、それでも地合いに影響を与えなかった。利上げサイクル入り(初利上げ)後10日間リターンでは戦後最高となった先週の記事でも取り上げた「3日連続1%以上の上げ」はその後「6営中5営が1%以上の上げ」「8営中6営が1%以上の上げ」(戦後では1974/11と2020/11のみ)と記録を伸ばした。
SPX Heatmap
 しかもそれは「金利上昇を好感する金融株によってリードされた」わけでもない。
DB Eruity Futures Positioning
DB Net Bullish Open Option Strategies
DB positioning by category 
 DB Positioningはデリバティブばかりが流れてきたが、先物については先週までの統合ポジショニングとあまり構図が変わらない。オプションは一旦フラットまで綺麗になった後、大口トレーダーが先にブル転している。リテールと思われる小口のオプション取引は今年に入ってからあまり活発でなくなっており、足元のラリーも追いかけておらず、これは足元のラリーをすぐ止めにかかるような利食いが少なかったのと合致する。1月のQTクラッシュ以来、(「説明」しやすかった)売りでも買いでも機関投資家の方が存在感が大きい。
TDS CTA Position Tracker
 トロント・ドミニオンのナスダックCTAポジショニングはショートが踏まれている。CTAなどのシステマティック勢がショートなのは年初QT懸念で売り込まれた時以来ずっとそうであり、これらのポジションは勝っている間に逆張りでアンワインドするはずがない一方、リスクオフが去ってボラティリティが下がってきたり、大きくスクイーズされると踏まされやすく、それが今に当たるかどうか。ウクライナ紛争の長期化にしろマッシブホーキッシュなFOMC後のマッシブ金利上昇にしろ、マクロ的にはバッドニュースしかないにもかかわらず、ポジショニングを見るととても売れないという感想になり、本ブログも先週以来それに従い、戻りを叩くのを避けている
GS Implied and Realized Vol
GS Implied and Realized Vol2
 一方リアライズドボラティリティは大して下がっておらず、それに対してVIX、VXXなどのインプライドボラティリティが大きく潰れている。ここからはリアライズドボラティリティが下がって来る、すなわち今後ヘッドラインが減ってじわじわと上がる局面へのシフトするならシステマティック勢が一段と押し出される可能性が大きいものの、シフトしないならリスクプレミアムは既に剥落したという解釈になり、ショートカバーに乗って上値追いを進める旨みがあまりないということになる。指数の水準も決して悪くないので掛けすぎた自覚があるレバレッジはこのあたりで落としておき、日々の値動きが小さくなったと体感できるようになった後に掛け直すのが安全だろう。
NAAIM
 NAAIMはさすがに反発が始まったものの天井域まではまだ距離があり、一時期ほどロング有利を示唆しなくなったものの、これが天井域に戻って来るまでショートは引続きサクッと踏まれるリスクの方が大きい。

 ボラティリティのくだりと同様、テクニカルにも中期的な分水嶺に差し掛かっている。長らく分水嶺としていたナスダックの14500が近づいて来ている。この間のナスダックのアンダーパフォームもあり、ナスダックが14500を付ける場面が来るならばS&P 500は既に4600を超えている可能性が高く、従ってS&P 500の4600の方はあまり重視していない。一方サポートも急速に追いついてきており、先週序盤のイントラデーの押しは日足50SMAと週足50SMAが重なる水準で止められ、その結果作られた週足下ヒゲ陽線の下ヒゲと週足50SMAがまだ重なっている4425はサポートとなる。「4150 -4300ボックスには戻ってこない」ことも合わせて考えると4400台のロングはオッズがよいと思われる一方、もし再び4425を下にブレイクされたら調整の長引きを覚悟することになる。週足ベースでは下ヒゲが短い下ヒゲ陽線2連発に50SMAを踏み台にした上昇と、すっかり晴れ上がった構図になっているが、レジスタンスはナスダックの14500が代わりに作ることになる。分かりやすくナスダックにまとめると13680 -14500レンジを意識することになるか。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。