
S&P 500はメガテックの決算を控えて神経質な展開が続いた。実際の決算はまちまちであり、下値圏では慎重ながらもショートカバーも目立ったものの、実際に無事通過したところで上値追いは続かず、プレで指数が上がったところからは次の決算を警戒する形で売りが入りやすかった。金曜にはAMZNが大きく滑ったことでついに放心状態になり、S&P 500は2月安値に近づいた。先週嫌っていた高寄りからの一直線の機械的な売りが再び観測された。ナスダックは本ブログが取り上げていた14500に続いて12500の下限もワークしておらず、週間を通して割ったり戻したりを続けた後、金曜引けにがっつり割り込んでいる。週足ではS&P 500もナスダックもヒゲが短い上ヒゲ陰線となった。月末にも当たる金曜引け近辺では債券から株へのリバランスフローがあると見込まれていたようだが、恐らく土壇場での金利上昇でそれもなくなり、更に巨大なカラーの月末ロールも入ったようである。

今年に入ってから毎回の調整の平均期間は2.5日と1970年代以来の長さとなっており、下がった日の翌日も下がりやすくなった。2020年の1日下げた後の上がり方と対照的である。

今週は決算通過に伴うテック等の自社株買いが週明けから再開されるとされている。もっとも2022年に入ってから実弾の自社株買いはあまり盛り上がっていない。次にFOMCが控えておりQT予定の確定版が出て来ると思われるが、足許の引締め加速織込みを正当化するようなネタが出て来るかどうか。

弱さの背景は決算への警戒もさることながら、引続き金利上昇に対してS&P 500のバリュエーションが(同じ金利 +リスクプレミアムに分解されるLQDなどと比べて)あまりにも調整していなかったためと思われる。金曜には指数のフォワードPERが17.6まで下がり、ようやく再び2017年や2019年年末の高値を下回った。



DBによるとS&P 500銘柄のマージンは引続き高く、EPSも引続き堅調である。収益予想ビート率は引続き良いが、メガテックが悪影響を与えたこともあり平均ビート幅は低下してきた。

先週までのデータであるがガイダンスの弱さは続いており、2020年2月以来の期待対比の弱さとなっている。ミスした13銘柄は平均▲4.6%と厳しめの許されなさとなったが、Netflixを除くと▲1.9%であった。リスクプレミアムが付いていないのでダウンサイドに厳しいのは仕方ない。



30台まで上昇したVIXはGSによるとまたリアライズドボラティリティ対比で大きく高くなっており、またカーブで見るとインバートしており、VIXがいいところまで上昇していることが分かる。



オプションではリテールの動きの鎮静化に伴い個別銘柄のコール買いが明らかに盛り下がっている。VIXが高いのは指数に大きな影響を与える個別銘柄の決算が続いているから仕方ないように見えるものの、個別銘柄プットも盛り上がっているわけではなく、指数プットが盛り上がっただけである。指数コールも少し盛り上がっているがこれはやや筋が悪い。決算通過と共にVIXが剥落したら指数は押し上げられやすくなりそうである。


ポジショニング。珍しくJPMもリスクパリティ、バランスファンドのポジショニング推測が流れてきたが、どれもポジショニングが抑制されていることが分かる。これにより債券と株式のダブル安も一層のリスクパリティの大規模なぶん投げに繋がるリスクがあまり大きくないことを示唆する。

TDのCTAポジショニングはS&P 500先物はフラット、ナスダックはそこそこの売り越しが続く。これは潜在的にはカバー需要に変換し得るものの、今のところ下落トレンドが続いているため買戻しを急ぐ場面ではない。


NAAIMについては先週の記事で「これが再び底辺域まで下がって来て初めて今回の調整が終われるのはないか」としていたが、買いを正当化しない先週と比べてもさすがに大きく下がってきており、調整がいいところまで来ていることを示唆している。GSのセンチメントインジケーターは近年にないくらいベアになっている。
テクニカル。先週の記事では「仮に何かの拍子で自律反発して(週足)ヒゲの方が近くなると、これまでの値動きを見ても売れるようになりそうだ。買いは懲りずに再び上ヒゲ奪還を待つこととする」としていたが、自律反発の場面は見事に売り場になっており、テクニカルとNAAIMが強烈に効いた形となる。今週になるとテクニカルは依然ダウントレンド継続を示唆するものの、NAAIMは再び悲観に近付いたことから少しだけ買いやすくなる。ポジショニングは一貫して軽い。シーズナリティは月末フローでかき回された後であり、自社株買い再開が控えていることを考えると短期的な反転上昇を期待できそうに見える。S&P 500は4310、ナスダックは13010がそれぞれ週足レジスタンスとなる。「12500を再び下にブレイクしたら(中略)更に大きな週足ヘッドアンドショルダーが完成するためしばらくかなり持ちづらくなる」としており、実際ナスダックの週足チャートを見ると最悪であるが、シーズナリティとNAAIMは売り持ちの継続を否定する。先週に続き週足上ヒゲの手前は再びポジション整理の場となるが、ヒゲを奪還できた場合は再び3月後半のようなショートカバーを期待できそうな気もする。もっとも金利も下がって来ない限りバリュエーションは3月末の水準までの回復の難しさを示唆する。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。