SPX daily
Bloomberg SPX weekly
 S&P 500は大幅に反発し、2001年以来の7週続落がようやく終わった形となる。週間の上げ幅は6.58%と3月の反発局面の上げを超えて2020年以来となった。背景としては米金利の低下、最後の大型決算ダウンサイドが残っていたNVDAの通過、そして先週の記事で取り上げたオプション・エクスパイアから月末リバランスにかけてのシーズナリティのサポートになったというところか。先々週の記事で「過剰にレバレッジさえかかっていなければ長期にわたって助からない水準ではない」、先週の記事では安値を更新してもアノマリー上ではサポートとして維持していた3800台は引続き安心感が強く、一方レジスタンスとして意識していた4100はあっさりブレイクされている。
HYG
 反転上昇のきっかけは全く分かりやすいものであった。先週の記事では「金利、クレジットどちら主導でもいいので、一歩先に下げ止まったLQDかHYGがラリーに転ずるかどうかがS&P 500のラリーを規定することになりそうである」としていたが、まさにHYGの大陽線による上抜けは火曜に見られており、一方S&P 500の大陽線は水曜から始まっている。この時点から流れが変わっており、HYGもシンクロしていることから先週のラリーの性質が16日の週と異なるものであることが分かるので、上げ幅も16日の週を超えるのは自明となった。
BofA Weekly equity fund flows 
 米国籍株式ファンドの週間フローは4月からずっと続いていた流出が反転した。もっとも2021年のように何週にもわたって安定して続くようなインフローになるかどうかは今から確認するしかなく、2022年に入ってからの特徴である、資金がどちらかというとタクティカルに入って来るパターンから逸脱したわけではない。
Barclays Retail Flows2
Barclays Retail Flows1
GS index ETF option volumes
 オフィス復帰やインフレによる支出増を背景とする、個人投資家の個別株を中心とするコールオプションへの興味喪失は一朝一夕では変わらない。ただ一応まだ「支出増のために投資を取り崩す」フェーズに入ったようには見えない。
Insider
 代わりにさすがに株価が大きく調整したのでインサイダートランザクション(経営者、役員などによる自社株売買の登録)はコロナショック以来の大きなネットバイに傾いている。もっともこれは自社株買いほどの明瞭な「買い」フローではなく、基本的に換金売りが多い中で株が下がると売りが減ることによってそうなっている。
BofA Corp buyback 
GS Buyback Blackout
 実弾の自社株買いはバンカメによると一応戻り始めている。これが前回のブラックアウト期間のちょうど3ヶ月後まで続くか。そのタイミングで再び地合いが悪くなるか、それともそのままニュースフローが減ってサマーラリーまで繋げてくれるか。
VIX 
GS VXX and CDX HY
S&P 500 Daily range 
GS VIX and Realized Vol
 VIXは5月の中の底値圏に来ているが、前2回25を付けたタイミングは指数のチャートではもはや分からないので、「指数の値動きの割りにはVIXが上がらない」構図はVIXに指数が付いてくる形で修正された。VIXの水準からリスクプレミアムが剥落したタイミングを探ろうと前回は「VIXが20台前半に来たら」を売り場の目安にしていたが、指数が一向に跳ねないままVIXが25まで下がったところが戻り天井となった。少し前のGSのチャートではリアライズドVolは2022年に入ってから20~22でウロウロしているように見え、それをVIXが下回った場合が売り場(2021年の低Volレジームへの回帰が実現しないと再び反落する)になった。前回の記事では「1日3%のような、低Volレジームに移行するほどでもないグッドニュースが伴う上げを執拗に叩いてきた本ブログの視点ではVIXの低迷も含めて健全化したという見方もできる」としており、その後押し目買いが債券対比で露骨に出遅れるほど元気がなくなったのが観測された後に相場は大きく反発した。そのままリアライズドVolの低迷が続けば、債券発のボラティリティも減りそうなのを鑑みるとVIXが25を下回っても許されそうに見え、VIX =20~22まで来たあたりが売り場となるか。
NAAIM
Barclays Investor Intelligence 
 3月末のラリーに次ぐ規模のラリーということで、NAAIMはさすがに底値圏から少しだけ回復している。水準としてはまだまだ低いのでもう少しロングを引っ張れそうな示唆となる。

 テクニカルには久々に週足下ヒゲ陽線となったため、非常に短い下ヒゲである3875がサポートとなる。それでは何も言っていないに等しいので今年の過去のベアマーケットラリーと比べてみると、大陽線や長い下ヒゲ陽線はいずれも中期的な底打ちサインにはならなかったが、代わりにその後2週間ほどは高値圏での推移が続いた。一方、週足上ヒゲ陰線は全て反落・続落サインとしてワークしてきた。今回はもう少し目線が長い参加者が多いUSIG/HYのラリーを伴うものなので少なくとも平均程度の寿命は期待できそうか。ポジショニングの新しいチャートが流れて来なかったので前回の記事に頼ることになるが、ラリー幅やリアライズドVol低下の持続が見られるか次第でシステマティック勢の買戻しも期待できそうである。上値余地としてはHYGが5月初旬の高値を大きく超えているのでS&P 500も同じタイミングで付けていた4300を超えないとは決め付けるべきではないが、4800, 4600ときた後のアップサイド・ダウンサイドのバランスを考えると4300近辺も売り場となりそうである。低Volレジームへの回帰はまだ見えていないので、4600からここに来るまでラリー後やラリー前に言い続けてきたパターンの繰り返しとなるが、過剰なレバレッジを掛けていた参加者にとっては現水準より上で推移している間はレバレッジ解消の機会となる。もし高値圏で決算期に入ったら決算リスクを取る価値がリスクと釣り合わなくなるので、「値頃より日柄」で6月後半のブラックアウト入りまでにどこまで上値で売れるかということだろうか。LQD/HYGが再び崩れて来ない限りショートは様子見である。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。