SPX Daily
 S&P 500は再び見慣れたような大幅急落となった。5月末のラリーを見て一部ではショートカバーで4300回復を狙う声が根強く、本ブログは最初こそは否定しなかったものの、先々週の週足上ヒゲ陰線を見て逃げ腰になったのは正解だった。週足上ヒゲ陰線のレジスタンス4175は先週ラリーした場面でも綺麗にワークし、「1月にQTダウントレンドが始まって以来、全ての週足上ヒゲ陰線には反落、続落が続いた。幸いこのヒゲは虫眼鏡で見ないとよく分からないレベルであり、これまでの週足ほど明瞭ではない。いずれにしろ4175はレジスタンスとなる。ブレイクしたところで4300近辺が売り場なのは衆目の一致するところなので追いかけるほどでもない」「過剰なレバレッジを掛けていた参加者にとっては現水準より上で推移している間はレバレッジ解消の機会となる」「4100台後半より上は全売却ほどではないにしろ、4300待ち用ポジションをコントロールできる範囲にとどめるべきに見える」「6月後半のブラックアウト入りまでにどこまで上値で売れるか」はいずれもいい線を突けたと思う。更に「何もなければ米金利のボラティリティは上がらないはずであるが、今週は空気を読まないECBが控えており、もし金利が一段と上昇した場合は脱出を考える必要があるだろう」についても、ECB前にポジションを落とすのが1日単位でも正解でありリズムを正しく警戒できたと思う。現実にはECBはやはり空気を読まず、ただそれに対する木曜のS&P 500の反応は(高値ボックスに慣れすぎていたこともあり)鈍く、木曜引けまで待ってようやく大きめな投げが出た形となる。金曜は米国CPIが予想よりも上振れしたことからFedの金融引締め加速が警戒され、債券と株式が同時に気持ちよくぶん投げられた。「(これまでなら追いかけてもぶん投げるべき場面だったが)少し買いやすくなる」としていた4000近辺はやはりぶん投げるべき場面に戻っており、触れたのは余計だった。

DB positioning  
DB positioning2
DB positioning survey

DB option position and volume  
 久々に流れてきたDB Positioningは引続き裁量投資家がニュートラル付近で一喜一憂を続けており、一方システマティック勢がショートを再拡大している。週半ばまでの狭いレンジのような展開が続けばリアライズドVolの低下でCTA/Vol Conのショートカバーを炙り出すことはできたかもしれないが、木曜からの大幅下落でそれが一気に遠ざかる。ロングポジションの方はリテール(小口)に限らず減り続けている。
JPM Retail order ETF and single stocks 
GS Equity fund flows
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 一方JPMのリテールフローレーダーでは、5月いっぱい個別株(ハイパーグロースか)の売りとETFへの振り替えが続いたが、5月終盤になると売りが枯れてETFの買いだけが残っている。このスコープに入っているポジションに限ってはすぐに持っていかれた形となるが、指数ものの投資信託に関しては確かにある程度のインフロートレンドとなっている。
NAAIM
 NAAIMは指数に逆らって跳ねており、再び押し目買いを正当化しなくなった。先週楽観に転換した参加者は含み損である。
SP500 earning yield and USIG 
 バリュエーションは下支えとなるか。本ブログが一貫して取り上げてきた債券対比の株式の割高さBloomberg記事にもなった。実績PERではなくフォワードPERだったら完璧だったのだが、いずれにしろ金利上昇を素直にプライシングしたUSIG(LQD)対比で株式のリスクプレミアムは金利上昇によって著しく過少まで圧縮されている。本ブログなどは米金利は現環境下では2.75 -3.0%のレンジから抜けづらいだろうとしていたのだが、サプライジングなCPI後の金利上抜けに指数が耐えられないのは自明であった。
LQD HYG
 ラリーを先導したLQD, HYGはラリー前の底値を割ってしまっており、5月安値を割っていないS&P 500は更に割高に見えてしまう。
VIX and MOVE 
VVIX
 金利の水準が上抜けした割りにはMOVEは今までのようには上がらず、同じようにVIXもこれだけの値動きにも関わらず30にも乗せていない。「そのままリアライズドVolの低迷が続けば、債券発のボラティリティも減りそうなのを鑑みるとVIXが25を下回っても許されそうに見え、VIX =20~22まで来たあたりが売り場となるか」としていたのだが、VIXが25を下回れたのは正しかったが22には届かず24で反発している。背景は色々詮索されているがVVIXがなぜか急速に低下したので、VIXが急に役に立たなくなっている。

 テクニカルには下向き圧力が強い場面が続く。週足の3875サポートは発掘されるものの少し古く頼りない。4175は当然まだワークしているが遠くなってしまった。注目は3800をブレイクするかどうかに集約されるだろうが、テクニカルには示唆がない。LQD/HYGによると心もとない。前回の反発入りはLQD/HYG主導で分かりやすかったが、今回はそこまで分かりやすい反転シグナルを見出せていない。
GS Jun Triple Witching
 シーズナリティ的には6/17のトリプル・ウィッチング底というこれまでのパターンに沿う可能性もあるものの、ちょうどその頃から自社株買いブラックアウト期間に入り始めるので、日柄はチャートと同じくらい悪い。FOMCも控えているが、5月CPIに対する高官コメントは見られず手探りのまま突入する形となる。今年のこれまでのFOMCは参加者がフルヘッジで突入するので無事に通過すると一旦は跳ねるものの当日引けは売り場となり、翌日寄付きから売り直されるパターンが続く。唯一ロングを正当化するのは一貫して続いているシステマティック勢のショートだが、これが畳まれ始めるには大幅な踏み上げか、リアライズドVolの低下が必要である。もし今週売りが枯れてリアライズドVolが低下しつつ安値更新を拒否すれば、或いは金利が低下に転ずれば来週以降は跳ねやすそうだが、淡々と下がり続けるケースも1日2%, 3%と上下し続けるケースも戻り売りが優勢になる。特にLQD/HYGの支援なく単日で大幅にラリーした場合は引けショートも許されそうである。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。